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魔力切れ
しおりを挟むおお…。セルフィに学校の方針を守る気持ちなんてあったんだ。意外。てか、日頃のセルフィに対する態度って何?めっちゃ普通なつもりなんだけど……こっちの方が心外だな。
「お言葉ですが、私は、いちいちちょっかいをかけてくる性しょうわーーー王子様に対して、自己防衛で言い返しているだけです」
「今、また性悪王子って言いかけたね」
「痛たたたたた!止めて!髪引っ張らないでよ!」
引っ張られていた髪を取り返し、涙目で頭皮をチェックする。うぅ。女の子の髪を引っ張るなんて、やっぱりこいつ最低だ!
「分かったわよ!失礼な態度とらないよーに、元から話しかけなきゃいーんでしょ!」
「そうだね。出来れば視界にも入らないようにお願いするよ」
「はぁ?!」
無茶言うなよ!同じクラスなのに、視界に入らないとか無理に決まってるでしょ!学校辞めろって言ってんの?!誰があんたの為なんかに辞めるか!!
ムカつく気持ちを何とか抑え、駆け寄って来た保険の先生が、怪我の様子を確かめ、回復魔法をかけてくれるのを受け入れた。
「……しょ、勝者はセルフィ様です!とても素晴らしい戦いでした!」
私とセルフィの戦いに、口を開きながらポカンと呆気に取られていたマイヤ先生が、ハッ!と正気に戻り、声を上げ、拍手をして、セルフィを賞賛した。
次いで、同じ様な反応だった生徒達も、遅れて拍手を送り、セルフィを賞賛する。それに対して、セルフィは無表情なまま一礼だけ返すと、戦闘のフィールドから去った。
私は、元から打撲くらいで対した怪我でも無かったので、直ぐに先生の回復魔法で完治。今回で保険の先生の実力も分かったけど、あれは駄目だ。そんなに優れてないな。出来てーーー2時間くらいかけて骨折治せるか?ってとこじゃない?そんなに時間かけてたら、戦闘の場では死んじゃうよ。
完治はしたけど、魔力切れで体はフラフラ。
何とか戦いのフィールドから、這いつくばりながらも出て、次の対戦を見学する為、他の生徒達からは距離を置いて座る。勿論、私に拍手は無い。
どうやら、他の生徒達には、私のこの魔力切れのフラフラが、セルフィの魔法でズタボロにやられたんだと解釈されている様で、『やっぱり対した事有りませんわね』とか、『まぐれだろ』とか、『俺なら一瞬で倒せるぜ!』とか。言いたい放題言ってくれる。別にいーけど。
疲労感はヤバいけど、やっぱり、実戦経験に勝るものは無いや。魔力の最大値も上がったし、魔法のコントロールも問題無し。
久しぶりの戦闘だったけど、うん。いけるかな。
他の生徒達の戦いを見学して思うのは、私の相手がセルフィでホント良かったー!って事。
ショボイ。ショボ過ぎる。雑魚じゃん。
まるでお遊戯会でも見ているような、弱々しいつむじ風の戦いに、水の掛け合いに、着火だけする炎の戦い。よくこれで先生も戦闘訓練しようって思えたな。私とセルフィの戦いを見終わった後だからからか、自分達の力量不足を思い知って意気消沈してるし。
ただ、全ての名声はセルフィに集まってるけど。誰も私の力だとは思って無いな。まぁ、実際、凄い魔法?を使ってたのはセルフィだけどさ。どーせ、私はコップ一杯の水鉄砲くらいの魔法しか今は出せませんよーだ。
「ふわぁ」
お遊戯会を見てたら、何だか凄い眠くなって来た。早くお昼休みにならないかなー。昨日から何も食べてないから、お腹空いたー!
1番最初に対戦カードに選ばれてしまったので、後は、皆の対戦が終わるのを待つしか無い。
私はただ、お昼ご飯を楽しみに、退屈な授業が終わるのを待った。
*****
「はぁ…。疲れた」
学校が終わり、特待生寮に戻るや否や、ベットにダイブする。
魔力切れは思いの外しんどい。魔法使いにとっては致命傷とも言える。何の役にも立たなくなるからね。
しんどくて疲れてるのに、オルメシアお嬢様は、『セルフィ様に楯突くだなんて、身の程知らずですわ!』なんて、授業内容を否定するような発言して来て、結局ちょっかいかけられるし……楯突きたくて楯突いてるんじゃないのよ。戦闘の訓練だってゆーから、授業の一環として戦っただけなのよ!
……まぁもう、しんど過ぎて、反論する気力も無くて、水浴びやらゴミ投げられるのとか全部甘んじて受け入れたけど。
まぁ、ホントに凄い疲れたけど、今日ので、実技の訓練は何とかなると確信出来た。
「問題は座学だよね…」
今日も、魔力切れで呆然のする頭で何とか午後の授業を聞いたけど、全く意味分かんなかった。1ミリも理解出来る気がしない。
最後にまた小テストあったけど、最後の応用問題、実践での魔物に有効な魔法しか分からなかった。書かなかったけど。正確には、書けなかった。力尽きかけてて、文字すら書けなかった。
歩いてここまで帰って来れたのが奇跡。
「駄目だ……もう寝よう」
昨日に続いて、自宅での自主勉強をサボったのは初めて。いつも何だかんだ、分からないなりに教科書を開いていたんだけど。
ああ。それに、私は特待生枠だから、ちゃんと通常の勉強もしないと……ああ。やる事がいっぱい……。
前世は冒険漬けの毎日だったけど、今世は勉強付けだ。命の危険は無いし、毎日ベットで寝れるし、平和なんだろうけど……。
「うぅ…ちょっと冒険者の生活が懐かしいよぉ」
気の合う仲間達と共に、世界を平和にする為に戦い、自分達で調理し、食卓を囲み食事をして、満開の星空の下で眠りについた。
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