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魔法のコントロール14
しおりを挟む「魔法…?!魔法を使ったわ!あの貧乏人が!」
「何でセルフィ様の魔法をあの貧乏人如きが避けれるのよ?!」
ざわざわと、先程までのセルフィへの歓声とは違う、不穏な空気が、生徒達だけで無く、教師も包む。
そっか。私、魔法を使えない劣等生なんだっけ。いきなり魔法使えたら、驚くのか。でも、今使える魔法はコップ一杯の水鉄砲だけなんだけどね。
「……君、いつの間に魔法使えるようになったの?」
「昨日です」
落とし穴に落ちたお陰で、前世の記憶を取り戻し、魔法の知識を得たお陰です。最悪、そこだけはオルメシアに感謝しても良い。
「昨日?なら何で、あんなにテストの点数が悪いわけ?」
「あの魔法陣とかの問題のことですか?私、あんなの覚えて無いです」
「それでどうやって魔法をーー」
現代魔法は、あの複雑そーな魔法陣を、わざわざ頭の中で思い浮かべて、魔法を使ってるんでしょ?大変だねー。
「そんな事より、早く魔法撃って来て下さい。パッパと練習したいんです」
「ーー」
おっと。プライドを傷付けちゃったかな。物凄い睨んで来ますねー。
「《炎魔法(レリオーロル)》」
「《水魔法(エリアラル)》」
炎の魔法に対して、ただ、水の魔法をかける。それの繰り返しだけど、やっぱり実践経験は違うね。1つしか水鉄砲出せなかったのに、今は5つ出せるようになった。
迫り来る炎の球5つ全部に、水鉄砲をぶつける。
(んー。でも、単調だな)
そろそろ物足りなくなって来た。
「セルフィ様」
「……さっきから何なの?何で今日馬鹿みたいに敬語使ってる訳?」
昨日貴方のファンであるオルメシア様に、散々絡まれて忠告されたからですが?何か?
「私はただの庶民ですので、弁えてみました」
「うざい。思ってもない礼節は不愉快なだけだから止めてくれない?」
「そう言われましても…」
またオルメシアにウザ絡みされるのは懲り懲りなんだよね。
「それよりセルフィ様。炎の魔法、意識して左右どちらにも飛ばす事は出来ませんか?」
「左右…?」
「はい。こうやって」
水魔法を唱え、セルフィに向かって、左右、前方、後方、頭上の全方向に、水鉄砲を発射する。
「!」
勢いも弱く、飛距離も短いので、左右前方後方からの水鉄砲は、セルフィに当たる事無く、地面に落ちた。が、頭上からの水は、セルフィの頬に当たった。
「セルフィ様の攻撃は単調です。前方からだけの魔法なんて、敵に避けてくれと言っているようなものですよ?」
1度魔法を見ただけで、読み切れてしまうような、単純明快な攻撃は、2度目からは、タイミングさえ分かれば、見なくても避けれてしまう。そもそも、球のスピードが遅い。戦闘の経験という前世の記憶がよみがえったとは言え、ヒナキの身体能力は高く無い。そんなヒナキですら、目で追えるし、避けれるレベル。
まぁ、記憶が蘇る前の私は、魔法ってだけで変に構えて、避けようともしなかったけど。
兎に角、私は、魔力向上は勿論、コントロールの練習もしたいんですよね。
攻撃魔法を使えない私は、どうやってもセルフィには勝てない。だから、魔力の向上とついでに、炎の球に水の魔法を当てる。という、コントロールの練習をしていた。なのに、いつまでも前方だけだと、練習にならない。全方向から来て貰わないと。
私がセルフィに向かって、魔法の指導なんてしたせいなのか、はたまた、全方向に向かって、魔法をコントロールして放つ。なんて行為をしたせいか、周りのざわめきがまた大きくなった。
「セルフィ様に向かって何て口の利き方をーー!セルフィ様に物申すなんて、100万年早いですわ!」
「おい、魔法って、自分の意思で色々な方向に打てるのかよ…」
「でも、所詮、あんなショボイ魔法しか使えないんじゃ、落ちこぼれである事には変わりねーよ!」
うん。どうやら両方でざわめいてるみたいだね。
セルフィには、優しく忠告してあげてるつもりなんだけどな。それに、まさか魔法のコントロールも出来ないなんて、そっちのが驚きだよ。ショボイよ。
「どうですか?出来そうですか?」
「……」
セルフィは、自分の頬に当たった水に驚いたように手で触れ、そのまま、濡れた手を見つめていた。
セルフィは性格歪んでて性悪な王子様だけど、馬鹿じゃない。きっと、私の水鉄砲が当たった意味に、気付けている。もし、当たったのが、威力の弱い水鉄砲の魔法で無ければ、倒れていたのは自分だった。と。
「……《炎魔法(レリオーロル)》」
「!」
セルフィは、直ぐに魔法を放つ事はせず、自分の周りに、炎の球を、留めてみせた。
「凄いね。要領が良い」
素直に驚く。
今さっき助言したばかりなのに、彼は直ぐに本質を理解し、魔法をコントロールしている。
「ーーっ」
その表情は、先程までとは違い、険しい。
魔法のコントロールもそうだけど、魔力の調整とか、細々なものの方が、意外と難しかったりするんだよね。ただぶっぱなす方が簡単。
「落ち着いて」
炎の球が安定せず、大きく揺れるのを見て、声をかける。
「イメージして。私の思う通りに動けと、魔法を支配するの」
「支配…」
「得意でしょ?王子様なんだから」
偉い人って、支配とかしそうって勝手なイメージ。現にセルフィも偉そうだし、間違っては無いよね。
「さっきから……言いたい放題言ってくれるね」
「!」
大きく揺れ動いていた炎の球の動きが止まった。そのまま、1つの炎の球が、私の前方に向かって来たと思えば、左方向に向きを変えた。
「《水魔法(エリアラル)》」
ジュッ。と、水が蒸発する音が聞こえる。
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