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オルメシア11

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「貴女と話していると、頭がおかしくなりそうですわ」
「奇遇ですね、私もです」

 身分の高い奴等って、一概に性格悪い奴等しかいないんだなって、この学校に来て思ったよ。前世はそーでも無かったのに。

「大体ね、貴女みたいな貧乏人が、セルフィ様とお話する事自体が、おこがましいんですのよ?!」
「セルフィ?」
「様を付けなさい!」

 王子だから敬語使えって?分かってはいるんだけど、あんな性悪王子に使う気も起きない。敬って欲しいんなら、少しくらい皆、性格改めて欲しい。

「明日から使う…と、思います」
「話すなと言ってるんです!」
「そんな事言われても、クラスメイトだし。大体、あっちから話し掛けてくる事だってあるんだからね」

 貴女もですけどね。貴女の方からちょっかいかけて来るから、話す事になるんです。こんな貧乏人なんて放って置いてくれたらいいのに…。

「このっっ。貴女なんて、落とし穴の中で閉じこもって入れば良かったんですわ」
「あれは酷かったよ。セルフィやアルが助けてくれなかったら、最悪、授業遅刻しそうだったんだから」
「様をつけろと言っているんです!てか、セルフィ様にも助けて頂いていたのですか?!」
「ーー明日からね」

 余計な事言ったな。確かこの人、特にセルフィの事に関して、何かと五月蝿いんだよね。様呼び、敬語、話し掛けるな、見るな、視線に入るなetc。
 こんな面倒臭い事に巻き込まれるなら、様くらい付けます。敬語も使いましょう。極力話しかけないようにもします。だからもう、私に関わらないで下さい。

 王族や貴族には、敬語を使うものーーーらしいけど、ここトライナイトでは、敬語を使わない事を、本来、推奨されている。
 冒険者は、冒険中に敬語を使ったりしてると、言葉が分かる魔物や盗賊達に、指揮系統がバレたりするから、どれだけ身分差があっても、公の場は別として、一律でタメ語にしている。
 学校では、校外学習という名の魔物退治や、修学旅行と銘打った7泊6日の冒険に出たりする。所謂、実施訓練があるから、その為にも、普段から、学校生活において、敬語は使わなくて良い。と、入学する時に説明があった。説明はあったけど、実際は、特に魔法クラスだけど、上下関係はヤバいくらいあるし、クラスメイトどころか、先生まで身分の高い生徒に敬語使ってる。
 オルメシアの取り巻き達も、彼女の家に逆らえない貴族の娘達や、気に入られようと媚びを売る者達ばかりで形成されてるから、皆彼女に対して敬語。
 私だけじゃない?ある意味、マトモに学校の方針守ってるの。

「そんなに調子に乗っていられるのも今の内ですわよ?わたくしのお父様にかかれば、貴女なんて一瞬で退学に出来るんですから」
「結局父親頼りなんですね」
「黙りなさい!お父様の権力も、立派なわたくしの力の1つです!」
「はぁ。そうですか」

 立派な父親の権力をお持ちのようでーーー
 私なんて貧乏人、本当に簡単に退学にさせられるのかな?それは困る。ホワイト企業就職の為に、退学なんて絶対嫌!不当な退学だって訴えたらいいのかな?どこにだろ?学校?ギルド?それとも、直接オルメシアの父親に自己談判?
 ーーーなんて身構えてたんだけど、今の所は、無事に学校に通えてる。
 何回か同じ台詞言われてるんだけど、1度もオルメシアの家からは何もお咎めなし。
 理由は分かんないけど、ホント良かった。

「退学になるのはとても困るので、大人しく帰ろうと思います。スミマセンデシタ」

 本格的に面倒臭くなってきた。早く帰りたい。
 私が普段、軽い嫌ざらせを受けてあげてるのも、満足させて、私が早く帰りたいだけだし。

「ちょっと!退学の話は嘘では無くてよ?!」
「嘘だなんて思ってないよ。退学になるのは困るって言ってるじゃない。要するに、明日からセルフィに話しかけなければいーんでしょ?」

 別にこっちだって好き好んで話してる訳じゃないし、セルフィも私の事嫌だろうし、丁度良いよね。
 正直、敬語は意識して使わないと、難しい。元から難しかったのに、サクラの記憶を取り戻してからは、もっと難しい。何故なら、敬語を使う環境にいなかったから。冒険者だったし。大魔法使いになってからは、どちらかと言えば私の方に皆、敬語使って来てたし。
 だから、話さないのが1番。
 私は大人しく授業を受けたいだけだし、ホント、空気みたいな扱いしてくれたら、それで良いから。

「では帰ります。オルメシアお嬢様も、よろしければ、今後、私に関わらないで過ごして頂ければ幸いです」
「なっ!まるでわたくし達の方が貴女にちょっかいをかけているような言い方をーーー!」

 実際ぐうの音も出ないほどその通りだよね。私が1度だってオルメシアにちょっかいかけた事あった?

 まだ何か文句言っていたけど、ペコリと一礼だけして、早足でその場を去った。逃げるが勝ち。
 特待生寮に入り、階段を駆け上がり、扉を開け、急いで鍵を閉める。

「マジでしつこかったな…」
 入学して一か月になるけど、ちょっかいが酷くなってきている気がする。落とし穴もそうだし、頭に降らせてくる水の量だって増えたし、机の中に入れる泥の量も増えたし、陰口では収まらず、ああやって目の前で罵られるようになったし…。


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