42 / 43
42話 告白
しおりを挟む*****
あれから、ダンスパーティは中止。
私の誘拐に加担した者達の処罰に向け、慌ただしく動き出した。
私は一切怪我を負っていないのですが、安静にと部屋に押しやられ、待機。かわりにヒバリ兄様が、トリワ国国王として、加害者へ罰を与えるために動いて下さいました。
ヒバリ兄様は、普段は、のほほんとしておりますが、実は切れ者で、冷徹な判断をされる方です。
今回ばかりは、キールも絶対に逃げられないでしょうし、公爵家の後ろ盾を失ったメアリーさんは、為す術も無いでしょう。
この事件は、へーナッツ国に大きな衝撃を生みました。
最も権力のあったルドルフ公爵家の失墜。マイカーン男爵家の爵位剥奪。そして、原因となった2人の子息と息女への罰ーーー。
「カナリア」
「ケイ」
城にある中庭。
気分転換にと、散歩をしていた私に、ケイが声を掛けた。
本当は、豊穣の祝祭が終われば、私はヒバリ兄様と一緒にトリワ国へ帰るはずだったのですが、落ち着くまでは。と、滞在を延期しています。
「各、貴族家の処分は決まりましたか?」
ケイの姿を見るのは久しぶりです。あれから彼は、忙しく、後処理に追われていましたからね。
「ああ。思ったより早く決まったよ。ヒバリ様が手伝って下さったのが大きいな。ヒバリ様は、俺よりも決断力があるし、そのーー」
「情け容赦ありませんでしょう?」
きっとヒバリ兄様の事ですから、この機会にと、ルドルフ公爵家の罪の追求と、その配下に至る貴族達にまで飛び火させた筈です。
腐った林檎の排除は徹底的にされる方ですから。
「責任をとり、マイカーン男爵家は爵位剥奪。ルドルフ公爵家は爵位を引き下げる降爵処分とし、キール、マイカーン息女、両名はそれぞれ、罰が与えられた」
「そうですか」
2人の罪は、とても重いものになったと聞いています。
キールは爵位剥奪の上、国外へ追放。メアリーさんは自害を命じられました。
「カナリアには、迷惑をかけてばかりいる。本当にすまない」
「いえ。彼等を失脚させる為に誘いに乗ったのは私ですし、お気になさらず」
結果、見事に失脚させる事が出来ました。
「……やっぱり、カナリアは強い女性だな」
「そうですか?」
自分ではそんな自覚が無いのですが……まぁ、メアリーさんのように、男性の前で、か弱いフリをした事はありませんね。
「ああ。そんなカナリアだからこそ、俺は、好きなんだ。俺と、結婚して欲しい」
「そうですーーーえ、ええ?!いきなりですの?!」
完っっ全に油断してましたわ!最近、周りが慌ただしかったですし、色々と事件もあって、すっかり忘れていました!
「唐突なのは認めるが、俺は、早く自分の気持ちを、カナリアに伝えたかった」
「ーーっーーぅー」
今、私の顔は、茹でダコみたいに真っ赤になっているでしょうね。
私の手を取り、手の甲に軽く、触れるキスをするケイ。そのまま、上目遣いで、こちらを見る、貴方のその視線に、クラクラしますわ。
「返事は?」
「……は…い…」
小さな小さな声で、返事をするのが精一杯。
こんな私の、どこが強い女なのでしょう?ケイからの告白に、ただ、YESと返事をするだけなのに、心臓がドキドキして、いつもの様に振る舞えなくなる。
貴方の前でだけ、おかしくなってしまう。
私の小さな返事を聞いたケイは、笑みを深め、ゆっくりと、私と距離を近めた。
頬に触れるケイの手が、とても暖かい。
経験は無いけれど、次にどうなるか、何となく、理解出来る。私は、瞼を閉じて、彼からの口付けを静かに受け入れたーーー。
*****
それから1年後ーーー。
王都、市街の中にある、串焼きが売っている商店の前にてーーー。
「んー美味しいですわ♡」
串焼き片手に、頬張る私、カナリア。
流石王都ですわ。どこで買っても、食べ物が美味しい!満足ですわ!
市民のようなラフな格好をして、いつもの様に王都の街並みに紛れ込んでいると、聞こえてくる私の噂話。
「いやぁーもうすぐカナリア様とケイ王子様の結婚式だなぁ!」
「無事にトリワ国と同盟も結べたし、魔物の被害も減ったし!」
「最近は各地でも重い税金を課せる領主が減ってるって話だし、良い事尽くしだ!それもこれも、ケイ王子様と、婚約者であるカナリア様が尽力しているお陰らしいぞ!」
「有難いよねぇー!まだお姿を拝見した事は無いから、結婚式が楽しみー!」
「カナリア様。お時間です」
ついつい、噂話に聞き入っていたら、マリアが来て、声を掛けられました。
もうそんな時間ですか。
急いで、残りの串焼きを口に放り込み、停めていた馬車に乗り込む。
「全く、もうすぐ正式にこの国の皇太子妃になられると言うのに、またそんな格好で市街に繰り出して……トリワ国とは違うのですから、控えて下さい」
「あら、この国の王子妃としてお披露目されたら、もうこうやって自由に街を歩けなくなるのだから、今くらい、いいじゃない」
ケイの告白を受け入れて、彼の婚約者になったあの日から、私はトリワ国には戻らず、ずっと彼の傍にいる。
あれから1年、取り急ぎ、酷く腐敗した林檎ーーー貴族の皆様への粛清を行い、やっと一段落し、結婚式を上げる事になった。
因みに、私が婚約者になってから、国の立て直しのスピードが倍以上に早まったらしいですわ。
そして、今日は、私が発案した新鮮な林檎の育成に向けてのスタートの日。
「懐かしいですわね」
馬車を走らせ、着いた場所を、私は見上げた。
874
お気に入りに追加
2,994
あなたにおすすめの小説
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
旦那様、離婚しましょう
榎夜
恋愛
私と旦那は、いわゆる『白い結婚』というやつだ。
手を繋いだどころか、夜を共にしたこともありません。
ですが、とある時に浮気相手が懐妊した、との報告がありました。
なので邪魔者は消えさせてもらいますね
*『旦那様、離婚しましょう~私は冒険者になるのでお構いなく!~』と登場人物は同じ
本当はこんな感じにしたかったのに主が詰め込みすぎて......
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?
望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。
ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。
転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを――
そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。
その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。
――そして、セイフィーラは見てしまった。
目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を――
※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。
※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)
【完結】旦那様は、妻の私よりも平民の愛人を大事にしたいようです
よどら文鳥
恋愛
貴族のことを全く理解していない旦那様は、愛人を紹介してきました。
どうやら愛人を第二夫人に招き入れたいそうです。
ですが、この国では一夫多妻制があるとはいえ、それは十分に養っていける環境下にある上、貴族同士でしか認められません。
旦那様は貴族とはいえ現状無職ですし、愛人は平民のようです。
現状を整理すると、旦那様と愛人は不倫行為をしているというわけです。
貴族の人間が不倫行為などすれば、この国での処罰は極刑の可能性もあります。
それすら理解せずに堂々と……。
仕方がありません。
旦那様の気持ちはすでに愛人の方に夢中ですし、その願い叶えられるように私も協力致しましょう。
ただし、平和的に叶えられるかは別です。
政略結婚なので、周りのことも考えると離婚は簡単にできません。ならばこれくらいの抵抗は……させていただきますよ?
ですが、周囲からの協力がありまして、離婚に持っていくこともできそうですね。
折角ですので離婚する前に、愛人と旦那様が私たちの作戦に追い詰められているところもじっくりとこの目で見ておこうかと思います。
白い結婚がいたたまれないので離縁を申し出たのですが……。
蓮実 アラタ
恋愛
その日、ティアラは夫に告げた。
「旦那様、私と離縁してくださいませんか?」
王命により政略結婚をしたティアラとオルドフ。
形だけの夫婦となった二人は互いに交わることはなかった。
お飾りの妻でいることに疲れてしまったティアラは、この関係を終わらせることを決意し、夫に離縁を申し出た。
しかしオルドフは、それを絶対に了承しないと言い出して……。
純情拗らせ夫と比較的クール妻のすれ違い純愛物語……のはず。
※小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる