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42話 告白

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 *****

 あれから、ダンスパーティは中止。
 私の誘拐に加担した者達の処罰に向け、慌ただしく動き出した。
 私は一切怪我を負っていないのですが、安静にと部屋に押しやられ、待機。かわりにヒバリ兄様が、トリワ国国王として、加害者へ罰を与えるために動いて下さいました。
 ヒバリ兄様は、普段は、のほほんとしておりますが、実は切れ者で、冷徹な判断をされる方です。
 今回ばかりは、キールも絶対に逃げられないでしょうし、公爵家の後ろ盾を失ったメアリーさんは、為す術も無いでしょう。
 この事件は、へーナッツ国に大きな衝撃を生みました。
 最も権力のあったルドルフ公爵家の失墜。マイカーン男爵家の爵位剥奪。そして、原因となった2人の子息と息女への罰ーーー。


「カナリア」
「ケイ」

 城にある中庭。
 気分転換にと、散歩をしていた私に、ケイが声を掛けた。
 本当は、豊穣の祝祭が終われば、私はヒバリ兄様と一緒にトリワ国へ帰るはずだったのですが、落ち着くまでは。と、滞在を延期しています。

「各、貴族家の処分は決まりましたか?」

 ケイの姿を見るのは久しぶりです。あれから彼は、忙しく、後処理に追われていましたからね。

「ああ。思ったより早く決まったよ。ヒバリ様が手伝って下さったのが大きいな。ヒバリ様は、俺よりも決断力があるし、そのーー」
「情け容赦ありませんでしょう?」

 きっとヒバリ兄様の事ですから、この機会にと、ルドルフ公爵家の罪の追求と、その配下に至る貴族達にまで飛び火させた筈です。
 腐った林檎の排除は徹底的にされる方ですから。

「責任をとり、マイカーン男爵家は爵位剥奪。ルドルフ公爵家は爵位を引き下げる降爵処分とし、キール、マイカーン息女、両名はそれぞれ、罰が与えられた」

「そうですか」

 2人の罪は、とても重いものになったと聞いています。
 キールは爵位剥奪の上、国外へ追放。メアリーさんは自害を命じられました。

「カナリアには、迷惑をかけてばかりいる。本当にすまない」

「いえ。彼等を失脚させる為に誘いに乗ったのは私ですし、お気になさらず」

 結果、見事に失脚させる事が出来ました。

「……やっぱり、カナリアは強い女性だな」
「そうですか?」

 自分ではそんな自覚が無いのですが……まぁ、メアリーさんのように、男性の前で、か弱いフリをした事はありませんね。

「ああ。そんなカナリアだからこそ、俺は、好きなんだ。俺と、結婚して欲しい」

「そうですーーーえ、ええ?!いきなりですの?!」

 完っっ全に油断してましたわ!最近、周りが慌ただしかったですし、色々と事件もあって、すっかり忘れていました!


「唐突なのは認めるが、俺は、早く自分の気持ちを、カナリアに伝えたかった」

「ーーっーーぅー」

 今、私の顔は、茹でダコみたいに真っ赤になっているでしょうね。
 私の手を取り、手の甲に軽く、触れるキスをするケイ。そのまま、上目遣いで、こちらを見る、貴方のその視線に、クラクラしますわ。

「返事は?」

「……は…い…」

 小さな小さな声で、返事をするのが精一杯。
 こんな私の、どこが強い女なのでしょう?ケイからの告白に、ただ、YESと返事をするだけなのに、心臓がドキドキして、いつもの様に振る舞えなくなる。
 貴方の前でだけ、おかしくなってしまう。

 私の小さな返事を聞いたケイは、笑みを深め、ゆっくりと、私と距離を近めた。
 頬に触れるケイの手が、とても暖かい。
 経験は無いけれど、次にどうなるか、何となく、理解出来る。私は、瞼を閉じて、彼からの口付けを静かに受け入れたーーー。




 *****

 それから1年後ーーー。

 王都、市街の中にある、串焼きが売っている商店の前にてーーー。

「んー美味しいですわ♡」

 串焼き片手に、頬張る私、カナリア。
 流石王都ですわ。どこで買っても、食べ物が美味しい!満足ですわ!

 市民のようなラフな格好をして、いつもの様に王都の街並みに紛れ込んでいると、聞こえてくる私の噂話。


「いやぁーもうすぐカナリア様とケイ王子様の結婚式だなぁ!」
「無事にトリワ国と同盟も結べたし、魔物の被害も減ったし!」
「最近は各地でも重い税金を課せる領主が減ってるって話だし、良い事尽くしだ!それもこれも、ケイ王子様と、婚約者であるカナリア様が尽力しているお陰らしいぞ!」
「有難いよねぇー!まだお姿を拝見した事は無いから、結婚式が楽しみー!」


「カナリア様。お時間です」

 ついつい、噂話に聞き入っていたら、マリアが来て、声を掛けられました。
 もうそんな時間ですか。
 急いで、残りの串焼きを口に放り込み、停めていた馬車に乗り込む。

「全く、もうすぐ正式にこの国の皇太子妃になられると言うのに、またそんな格好で市街に繰り出して……トリワ国とは違うのですから、控えて下さい」

「あら、この国の王子妃としてお披露目されたら、もうこうやって自由に街を歩けなくなるのだから、今くらい、いいじゃない」

 ケイの告白を受け入れて、彼の婚約者になったあの日から、私はトリワ国には戻らず、ずっと彼の傍にいる。
 あれから1年、取り急ぎ、酷く腐敗した林檎ーーー貴族の皆様への粛清を行い、やっと一段落し、結婚式を上げる事になった。
 因みに、私が婚約者になってから、国の立て直しのスピードが倍以上に早まったらしいですわ。
 そして、今日は、私が発案した新鮮な林檎の育成に向けてのスタートの日。

「懐かしいですわね」

 馬車を走らせ、着いた場所を、私は見上げた。

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