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34話 新しい同盟の条件

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 マリアに説教されて挨拶をし直していますが、もう遅いでしょうね。

「精一杯おもてなしさせて頂きます」
「ありがとう。へーナッツ国の国王にもご挨拶に伺うよ。案内してくれる?」
「かしこまりました」

 丁寧に頭を下げて対応するケイ。こんな兄に敬意を示させて、本当に申し訳無いですわ…。

「カナリア、マリア。後で部屋に行くねー」

「絶対に着替えてから挨拶に行って下さいね!」

 ぶんぶんと大きく手を振りながら、小さくなっていくヒバリ兄様。まるで嵐のようですわ。

「後でもう1回お仕置きが必要でしょうか」
「……マリアがいるから、合流する前にお祭りに行ったのかもしれませんわね」

 お祭りに行くな。とは言いませんけど(私もよく街にお忍びで行きますから)、せめて城に来る際には、正装で来て頂きたかったですわ。
 ヒバリ兄様らしいですけど。


 今から、ヒバリ兄様と、へーナッツ国の国王ーーケイのお父様とケイとで、同盟についての対話をするのでしょう。お兄様がなんと判断をされるのか、私にも、ハッキリとは分からない。

 でも、ケイを気に入っているし、お祭りも充分楽しんだみたいですし……後は、腐敗した貴族の問題ですわね。
 それが1番大きな問題。

 貴族を丸ごと全て取り替える訳にはいきませんし、再教育が1番良いのでしょうけど……一つ一つの領地に赴くのは大変だし、時間がかかるでしょう。

(良い教育者を揃えるのも大変ですしね)

「カナリア様、お部屋でヒバリ様をお待ちしましょう」

「ええ、そうね」

 ここで考え事をしていても仕方ありません。
 私とマリアは、ヒバリ兄様と一緒に来た従者達と久しぶりの会話をしながら、部屋に戻った。


「カナリア」
「ヒバリ兄様」

 数時間後、約束通り、ヒバリ兄様は部屋に訪れた。

「カナリアからも手紙で報告は受けていたけど、ケイ達からも話は聞いたよ。色々と大変だったね。頑張ってくれてありがとう」

「お褒めの言葉ありがとうございます」

「まぁカナリアなら大丈夫ー!って思ってたから、あんまり心配してなかったんだけどねー!あはは!って、マリア!止めて!止めて!首締めないで!」

「……マリア、止めて頂戴」

 雇い主だろうと容赦無く行きましたわね、マリア。
 でも、一瞬、マリアを止めないで、このまま締め上げてもらおうかしら。と思いましたわ。大丈夫でしたけど、中々に面倒な方々の相手をして疲れたんですからね!

「それで、ヒバリ兄様。同盟はどうされるのですか?」

 私がへーナッツ国へ送られたのは、同盟を結ぶかを見極めるため。そして私は、問題点は上げたが、同盟には賛成の意を示した。
 後は、ヒバリ兄様次第なのだけどーーー

「んー?保留☆」

「保留…ですか?」

「うん。条件を出したから、それ次第」

「どんな条件を出したのですか?」

「秘密♡」

 ーーーーは?この人、何を言っているのでしょう?私をこんなに巻き込んでおいて、最後は秘密になさる気ですか?

「マリア」
「はい。すぐに締め上げます」

「え?!待って!ちょっと待ってよ!」

 私の呼び掛けにすぐに反応し、再度、ヒバリ兄様の首を締め上げようとするマリアに、ヒバリ兄様は涙目で逃げた。

「違うよ!僕はちゃんとカナリアに言おうとしたよ?!でも、ケイ君が、カナリアには言わないでって言うから!」

「!ケイ…が?」

 どうしてですの?どうして、私が知ってはいけないの?私は、信用されていないのーー?

「でもやっぱり言っちゃおうかな?ケイ君、カナリアに結婚を申し出るんだって」

「…………へ?」

 結婚?結婚って言いました?今??

「ヒバリ様ーー言ってはいけないと言われていたのでは?」

「苦しい!苦しい!いや、だって、僕の可愛い妹が悲しい顔してるから!!」

「それでも、言っていい事と悪い事があるでしょう?折角、ケイ様が自分から言うとおっしゃったのに、それを台無しにするなんて、空気の読めない病気ですか?」

「そこまで?!」

 容赦無くヒバリ兄様の首を締め上げるマリア。

 結婚……結婚?私が、ケイと?国同士の結びつきのために婚姻を結ぶのはよくありますが、へーナッツ国と?

「だってカナリア。送ってくる手紙の端々に、ケイが好きなんだなーって文書があったから、兄として、恋を応援したいな!って思って♡だから、同盟の条件に、カナリアとの結婚を伝えたんだよね!でも、ケイ君には、カナリアの意思を無視出来ないから、自分から伝えて、OKを貰えたなら、結婚しますって言われちゃってさー」

 ケイに口止めされているはずなのに、ペラペラ話す私のお兄様……。兄として恋を応援するのに、結婚を取り付ける?飛躍し過ぎじゃありません?!そもそも、ケイの意思はどうしました?!

「それに、カナリアがこの国にいた方が、早く腐った貴族達追い出せると思わない?僕の妹は優秀だからさぁー」

「同盟を持ち出したら、ケイは断れないじゃありませんか!酷いですヒバリ兄様!」

 私を好きで無くても、同盟のために、彼なら婚約を結ぶかもしれない!

「あ、それは大丈夫!何故ならーーふがっ」

「もういい加減黙りましょうかヒバリ様。お疲れでしょうし、部屋までご案内します」

 マリアに口を塞がれ、引きずられるように部屋から出ていくヒバリ兄様。

「結っっ婚…!」

 頭が混乱する。ついこの間、自覚したばかりなのに、急展開過ぎて追い付きませんわ!婚約……結婚!?ケイとーーー

(でも、駄目です!ケイの意思を無視して、結婚なんて出来ません!ヒバリ兄様に、結婚をしなくても同盟を結ぶよう進言をしなくてはーー!)


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