25 / 43
25話 懲りない男達
しおりを挟む「蜂に襲われてる冒険者がいたので、一応、連れて帰って来たのですがーー」
「どうしてもっと早く言わないのですか?!」
私をからかうより前に言えたでしょう?!そして、何でそんなに落ち着いているのですか?!怪我人でしょう?!もっと焦って下さい!
「助けるかどうかをギリギリまで悩んだものでーー」
さっきから、一応、連れ帰って来た。や、ギリギリまで悩んだ。など、歯切れが悪い言い方ばかりですわね。
「以前、カナリア様に分不相応ながらも声をかけ、手を出そうとした不届きなチンピラ軍団でしたので、あのまま蜂の餌にされるのを見届けるか、毒にやられて苦しむのを見るかで悩んだのですが、以前、カナリア様にコイツ等の始末を止められたのを思い出したので、一応、連れてきました」
「うん。連れて帰って来てくれてありがとう。思い留まってくれて良かったわ」
マリアの背後から見える気配に本気を感じます…。怖いわ。
「で、その冒険者達はどちらに?」
「ここに」
マリアが指す方には、乱雑に積み上げられた男5人の人間タワー。蜂の毒にやられているのか、5人とも意識朦朧で、体も血まみれで、至る所から流れている血も、ホラーみたいに怖い。
マリアーーー!!!もう少し丁寧に並べてはあげれなかったの?!
思わず心の中で絶叫しましたけれど、連れ帰って来てくれただけマシだと思う事にしました。
「大丈夫ですか?」
とりあえず人間タワーから解放し、1人1人を地面に寝かせ、解毒する。
4人は重症で、まだ意識が戻りませんが、薬を打ったので、少しすれば目を覚ますでしょう。
「……何だ、この薬……すげー体が楽になった」
チンピラさんの1人は、毒の量が少なかったからか、最初から意識があり、解毒剤を打つと、すぐに体を起き上がらせた。
「毒を無効化する魔法の薬ですわ」
トリワ国直伝の解毒剤。
実在する全ての毒を無効化するのは無理ですが、これさえあれば、蜂の毒は怖くありません。前持って飲んでいれば、抗体も出来て、安心して蜂を倒す事が出来る優れ物。
毒さえ恐れなければ、ある程度戦える者にとって、そんなに脅威な魔物ではありません。ケイは蜂を脅威だと言っていましたが、この解毒剤さえあれば、彼の敵では無くなるでしょう。
(ケイにも念の為、先程解毒剤を打っておきましたし)
ケイは今、被害の確認と、念の為も兼ねて、蜂がいないかの確認をしに、護衛を連れ、広場から離れた。
「そんなすげー薬を、何でお前なんかが……」
「折角助かった命が惜しければ、お願いですから、私への態度を改めて欲しいですわ」
後ろからマリアが凄い形相で睨み付けているのが分かりませんか?次、何かあれば確実に始末する気でいますわ……怖い。
「あの女も、クソめちゃ強くて……俺等が5人がかりで苦戦してた蜂の群れを、一瞬で切り刻んでいって……」
言いながらガタガタ震えていますわ。その震えは、蜂(クゥリィ)に対する震えですか?それとも、マリアに対する震えですか?
「くそぉっ!お前に会ってから、散々だよ!優男にはコテンパンにやられるし、たかが女に助けられるしーー!何でだよ!ついてねぇ!!全部てめぇの所為だ!!!」
髪をガシガシと乱暴に掻き毟りながら、乱暴な声を出すチンピラさん。
……死にたいんですか?私の言った事、理解してます?命が惜しければ、黙れ。っと言った方が良かったでしょうか?
「では、今からでも死にますか?」
「ふざけんな!何で俺が死ななきゃならねーんだよっ!!」
死にたくて、わざと失礼な物言いを続けているのかと思いました。これで、『はい。死にまーす』なんて手を挙げようものなら、もうマリアを止めないでおこうと思いましたのに。
と、いうことは、この人、私の話を何も聞いていないのですね。
「先程から失礼な態度ですけれど、貴方は、私達に助けられたんだと、理解していますか?」
私達がいなければ、間違いなく、毒におかされ、魔物の餌になっていたでしょう。
「お前の所為だ。と、私を責める相手を助けるほど、私の心は優しくありませんの。特に、自分が強いと勘違いして、相手を見下すような底辺の男達なんて」
「底辺だと?!」
「事実ですわ。そうやって勘違いして、横柄な態度を続けていたら、いつかまた、こんな騒動に巻き込まれた時に、貴方達を助けてくれる人がいなくなりますわよ。私達はもう、絶対に、助けてあげませんから」
もう頼んでもマリアは絶対に助けないでしょうしね……今も、私が必死で目配せでマリアを食い止めているのですよ?
「お、お前等なんかの助けなんて、もう要らねーよ!俺達はな!こんな弱っちぃ国じゃなくて、もっと強いトリワ国に行って、頂点に立つんだ!」
寝言は寝て言え。
「こんなに強い俺達なら、トリワ国も喜んで受け入れるだろーよ!!」
止めてマリア!暗器を取り出さないで!!獲物を狙うような目で、チンピラ冒険者達を睨まないで下さいませ!!
「ゴォラァ!何だ貴様は?!カナリア様に向かってお前だと?!見ない顔だな!?まさか、問題ばかり起こし、追放された冒険者か?!」
「ヒッ!フォラン伯爵様っ!」
必死でマリアを食い止めていたら、マリアよりも先に、フォラン伯爵がやって来ましたわね。こいつ……フォラン伯爵には怯えるなんて、身分にも弱いのですね。
それはさておき、フォラン伯爵?人格変わっていません?大丈夫ですか?
「このお方をどなただと思っているんだ?!トリワ国の姫、カナリア様だぞ!!」
フォラン伯爵ーー!!!!止めて!目立ちたくないから正体を隠していたのに、そんなに思い切り、いきなり暴露します?!?!
1,231
お気に入りに追加
2,990
あなたにおすすめの小説
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です

〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……
藍川みいな
恋愛
「アナベル、俺と結婚して欲しい。」
大好きだったエルビン様に結婚を申し込まれ、私達は結婚しました。優しくて大好きなエルビン様と、幸せな日々を過ごしていたのですが……
ある日、お姉様とエルビン様が密会しているのを見てしまいました。
「アナベルと結婚したら、こうして君に会うことが出来ると思ったんだ。俺達は家族だから、怪しまれる心配なくこの邸に出入り出来るだろ?」
エルビン様はお姉様にそう言った後、愛してると囁いた。私は1度も、エルビン様に愛してると言われたことがありませんでした。
エルビン様は私ではなくお姉様を愛していたと知っても、私はエルビン様のことを愛していたのですが、ある事件がきっかけで、私の心はエルビン様から離れていく。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
かなり気分が悪い展開のお話が2話あるのですが、読まなくても本編の内容に影響ありません。(36話37話)
全44話で完結になります。

公爵閣下に嫁いだら、「お前を愛することはない。その代わり好きにしろ」と言われたので好き勝手にさせていただきます
柴野
恋愛
伯爵令嬢エメリィ・フォンストは、親に売られるようにして公爵閣下に嫁いだ。
社交界では悪女と名高かったものの、それは全て妹の仕業で実はいわゆるドアマットヒロインなエメリィ。これでようやく幸せになると思っていたのに、彼女は夫となる人に「お前を愛することはない。代わりに好きにしろ」と言われたので、言われた通り好き勝手にすることにした――。
※本編&後日談ともに完結済み。ハッピーエンドです。
※主人公がめちゃくちゃ腹黒になりますので要注意!
※小説家になろう、カクヨムにも重複投稿しています。
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!
婚約「解消」ではなく「破棄」ですか? いいでしょう、お受けしますよ?
ピコっぴ
恋愛
7歳の時から婚姻契約にある我が婚約者は、どんな努力をしても私に全く関心を見せなかった。
13歳の時、寄り添った夫婦になる事を諦めた。夜会のエスコートすらしてくれなくなったから。
16歳の現在、シャンパンゴールドの人形のような可愛らしい令嬢を伴って夜会に現れ、婚約破棄すると宣う婚約者。
そちらが歩み寄ろうともせず、無視を決め込んだ挙句に、王命での婚姻契約を一方的に「破棄」ですか?
ただ素直に「解消」すればいいものを⋯⋯
婚約者との関係を諦めていた私はともかく、まわりが怒り心頭、許してはくれないようです。
恋愛らしい恋愛小説が上手く書けず、試行錯誤中なのですが、一話あたり短めにしてあるので、サクッと読めるはず? デス🙇

初対面の婚約者に『ブス』と言われた令嬢です。
甘寧
恋愛
「お前は抱けるブスだな」
「はぁぁぁぁ!!??」
親の決めた婚約者と初めての顔合わせで第一声で言われた言葉。
そうですかそうですか、私は抱けるブスなんですね……
って!!こんな奴が婚約者なんて冗談じゃない!!
お父様!!こいつと結婚しろと言うならば私は家を出ます!!
え?結納金貰っちゃった?
それじゃあ、仕方ありません。あちらから婚約を破棄したいと言わせましょう。
※4時間ほどで書き上げたものなので、頭空っぽにして読んでください。

元婚約者に未練タラタラな旦那様、もういらないんだけど?
しゃーりん
恋愛
結婚して3年、今日も旦那様が離婚してほしいと言い、ロザリアは断る。
いつもそれで終わるのに、今日の旦那様は違いました。
どうやら元婚約者と再会したらしく、彼女と再婚したいらしいそうです。
そうなの?でもそれを義両親が認めてくれると思います?
旦那様が出て行ってくれるのであれば離婚しますよ?というお話です。

【完結】溺愛婚約者の裏の顔 ~そろそろ婚約破棄してくれませんか~
瀬里
恋愛
(なろうの異世界恋愛ジャンルで日刊7位頂きました)
ニナには、幼い頃からの婚約者がいる。
3歳年下のティーノ様だ。
本人に「お前が行き遅れになった頃に終わりだ」と宣言されるような、典型的な「婚約破棄前提の格差婚約」だ。
行き遅れになる前に何とか婚約破棄できないかと頑張ってはみるが、うまくいかず、最近ではもうそれもいいか、と半ばあきらめている。
なぜなら、現在16歳のティーノ様は、匂いたつような色香と初々しさとを併せ持つ、美青年へと成長してしまったのだ。おまけに人前では、誰もがうらやむような溺愛ぶりだ。それが偽物だったとしても、こんな風に夢を見させてもらえる体験なんて、そうそうできやしない。
もちろん人前でだけで、裏ではひどいものだけど。
そんな中、第三王女殿下が、ティーノ様をお気に召したらしいという噂が飛び込んできて、あきらめかけていた婚約破棄がかなうかもしれないと、ニナは行動を起こすことにするのだが――。
全7話の短編です 完結確約です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる