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22話 メアリー視点
しおりを挟む私は、世界で1番可愛いの。
「ムカつくムカつくムカつく!」
王都に用意された私の為の家。
その一室にあるベットルームで、私は枕を思いっ切り壁に放り投げた。
「何なのよぉ…!何で私が、こんな目にあわなくちゃいけないのよ!折角、全部が上手くいってたのにーー!あの根暗女のせいでーー!!」
貴族として産まれたのは良いけど、寄りにもよって、貴族で1番底辺のマイカーン男爵令嬢として、私、メアリーは産まれた。平民じゃないだけマシだけど、マイカーン家は、男爵貴族の中でも、貧乏な貴族だった。最低で、最悪。
でも、神様はそんな私に、世界で1番可愛い容姿をくれた。
私はたかが男爵令嬢なのに、この可愛さで、私よりも身分の高い男達が、次から次へと、私のご機嫌を伺うように、声をかけてくるの。
賢い私は、そんな男達が欲しがる言葉を、かけてあげる。そしたら、皆、気分が良くなって、もっと私のお願いを聞いてくれるようになるから。
貴族が一同に集まる学園。
私の狙いは、勿論、貴族の中で最高の権力者である、ルドルフ公爵ご子息、キール様だった。
キール様には婚約者がいるって聞いたけど、そんなの関係無いよね?だって私は可愛いもの。可愛い私を選ぶのは当然。ほら、キール様は私を選んでくれたでしょう?
たかが子爵令嬢。影も暗くて、女として、男を上手に手玉に取ることも出来ない。勿論、私より容姿だって可愛く無い。
そんか女に、私に負けるはず無いもの。
それなのにーーー
「あんな女が、トリワ国の姫ーー?!ムカつく!女として、私より負けているくせにーー!!」
どうして生まれが良いだけで、私が負けなくちゃいけないの?私は可愛いし、ちゃんと男の人が私の言う事を聞くように、こんなに頑張ってるのに!!
「よりにもよって、ケイ王子様に手を出すなんてー!」
ケイ王子様は、私が、最・終・的・に・選・ぶ・は・ず・だ・っ・た・、婚約者だったのに!
きっと、トリワの姫という権力を使って、ケイ王子様を無理矢理従わせてるんだ!じゃないと、私にあんな冷たい態度取るわけがないもん!
「キール様を足掛かりに、ケイ王子様に近付く予定だったのに…!あの女のせいで、全部が狂ったのよ!」
たかが男爵令嬢の私が、国の王子様に会うのは、とても難しい。
王室主催のパーティも、呼ばれるのは伯爵以上からだし、卒業式で会えるといっても、遠い場所から、ほんの少しの時間だけ……。私達は、まるで、ロミオとジュリエットみたいに、惹かれあっているのに、障害が多くて、結ばれない恋人なの。
「キール様の婚約者になれば、ケイ王子様に会う機会も増えるはずだったのに」
会って結ばれてしまえば、また、今回のように、キール様と婚約破棄して、ケイ王子様と新しく婚約し直せば良い。
完璧な計画だった。
なのに、私とキール様の婚約自体が、認められなくなってしまった!あの根暗女の性で!
「私は今、針のむしろだし…!もぉっ!」
今まで私の言いなりだった貴族の男達も、何人かは私の傍を離れてしまったし、私を見る目が、皆冷たいし…。もぉ、最悪!
「メアリー様」
「何よ!私に話しかけないで!」
私に用意されたメイドの1人が、怯えながら、声をかけてくる。
「あの、そのっ。キール様からお手紙が届いておりまして……」
「!キール様から?!早く貸しなさないよ!このノロマ!」
メイドの手から、乱暴に手紙を奪う。
キールからの、いつもの金の箔押しの付いた豪華な手紙の封を、急いで開ける。
「……キール様ぁ♡」
手紙には、変わらない私への愛の言葉が並んでいて、婚約は結べなかったが、私への愛は変わらない。いずれ、婚約しよう。と書かれていた。
その証拠に、君の為に用意したその家や使用人達は、これからもずっと、君の物だ。とも。
「ふふ。そうよね。私、可愛いものね」
怒りで少し狼狽えちゃったけど、キール様のお陰で、目が覚めたの!そう!私は、世界で1番可愛い!男の人に好かれるように、努力もしてる!
「きっとこれは、神様からの試練なのね」
世界で1番可愛い私に与えられた、試練!この試練を乗り越えた先に、きっと幸せが待っているのね!
さしずめ、カナリアは、私の幸せを妨害する、悪女。悪者は、私が退治しなくちゃ!
「学園の虐めだって、私の所為にされちゃったし…」
あれは、きちんと私を虐めなかったカナリアが悪いのよ。ちゃんと私を虐めてくれれば、私は、可哀想で、それでも健気に頑張って立ち向かう、勇気のある女を演出出来たのに。
私は悪くない。
でも、私のせいにされちゃった。
「あ、そうだ」
貴族の中では、証拠もハッキリと出されたし、私・の・無・実・は証明出来ないかもしれないけど、庶民なら、私の無実を信じるかもしれない。
だってあいつ等には、真実を確かめる術なんてないものね。
正直、庶民相手にどう思われようと気にしないんだけど、カナリアの評価を下げるのは、大切よね。
それに、未来の王妃になったら、多少は庶民の好感度も必要かもしれないし。きっと私の可愛さがあれば、庶民の人気も爆上がりだろうけどー♡
うんうん。だいぶ気分も持ち直して、元気でたー♡
今から、私の魅力にメロメロになってる男達を使って、卒業式の真実を流すようにおねだりしよーっと。
私、メアリーは、野蛮な怪物国の怪物姫に虐められ、更には、無実の罪をも被せられた、可哀想な女の子。
うんうん。これが真実。私は何も悪くないもん。
だって私は、世界で1番可愛いんだから。
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