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14話 キール視点
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「くそっ!くそっ!くそっ!!!」
ルドルフ公爵家の一室、自分の私室で、キールは、怒り任せに、部屋の物を床や壁に叩き付けていた。
「何で俺がこんな目にーー!あの根暗女っ!それに、ケイの奴も、調子に乗りやがってーー!!」
父さんも、キツく俺を怒鳴り付けて、本当に部屋に閉じ込めた!たかが伯爵令嬢に罰を与えようとしていただけなのに、何で俺が罰を与えられなきゃならない!?
今までは、こんな事は無かった。
ちょっと王族に気を付けていれば、俺に逆らう奴は他にいないし、下の奴等は、皆、俺の言いなりで、俺に気に入られようと媚びを売ってくる奴等ばっかりだったから、何の問題も無かったんだ!!
父さんだって、俺達より下の奴等は、皆、ただの奴隷だって!家来だって言ってたのに!!!
『何故カナリア様と仲の良い女を攻撃した?!カナリア様を敵に回すなと言っただろ?!王室にも完全に目を付けられてーーー!どうしてくれるんだ?!』
王室のパーティからつまみ出された後、帰ってきた父さんは、凄い剣幕で、俺を怒鳴り付けた。
『父さん…!だって、テナが根暗女と仲が良いなんて知らなかったんだーー!それに、あんな根暗女なんかに、今更、ペコペコ頭なんて下げられねーよ!』
『ふざけるな!!!』
バチンッッッ!と、思い切り頬を叩かれた。
父さんに叩かれたのは初めてで、思わず、思考が停止した。
『お前の性で、私の計画が丸潰れだ!部屋に閉じこもって、自分の行いを少しは反省していろ!!』
『!父さん!やだよ!1ヶ月も部屋の中なんて!俺、退屈で死んじまうよ!!』
『五月蝿い!!!』
もう、部屋に閉じ込められて、2週間は経った。その間、本当に俺は部屋から出られず、ただ、退屈な時間だけが過ぎる!
「くそっ!あの根暗女が現れてから、全部がおかしくなったんだ!あいつの所為でーー!!」
トントン。
怒りに身を任せていると、扉から、ノックする音が聞こえた。
「何だ!何か用か?!」
メイドなら、憂さ晴らしに虐めてやろう。そう思い、俺は大きな声で、返事をした。
「キール様ぁ?メアリーです」
「!メアリーか!」
声の主がメアリーと分かるやいなや、打って変わって、笑顔で声の主を出迎えた。
「キール様ぁ!会いたかったですぅ!」
ギュッと、キールの体にしがみつくメアリー。
「ああ。俺もだ、メアリー」
キールも、そのままメアリーの体を抱き締め返した。
「どうやって中に入ったんだ?」
「ふふ。執事長に頼み込んで、公爵様がいない時に中に入れて貰ったんです。キール様に、どうしてもお会いしたかったから♡キール様がいないと、メアリーはもう生きていけません♡」
上目遣いで、甘えるような猫なで声を出すメアリー。
男爵令嬢で身分は低いが、メアリーは、男を立てる事を知っている。俺に甘えて、褒めて、ベタ惚れしてる。
そうだ。俺は、公爵子息で、誰もが俺の顔色を伺い、俺に媚びを打ってくる!俺は、誰が見ても、魅力的な男なんだ!
あの根暗女も、俺の事が好きなのに、婚約破棄されたのを根に持って、あんな不躾な態度を取っているに違いない。
(父さんの評価を上げるには、あの根暗女を、俺の婚約者に戻すのが1番手っ取り早い…!)
「キール様ぁ?どうかしましたか?」
「……いや?会いに来てくれて嬉しいと思っただけさ」
「きゃっ♡メアリー嬉しい♡」
メアリーを手放す気は無い。こいつは何より可愛いし、手元に置いておいて、損は無い。
(あの根暗女を、仕方が無いから正妻にしてやって、メアリーを俺の愛人にする)
結婚さえしてしまえば、トリワ国の後ろ盾は得られたも同然。俺を好きなあの根暗女は、離婚は回避したいだろうし、そもそも、離婚なんて、見聞が悪いしな。
そうだ。あの根暗女が俺の物になれば、さっさと解決するんだ。
トリワ国の後ろ盾が得られれば、王室にも、気を使う必要が無くなる!ケイの野郎にも、デカい顔されなくて済む!!
父さんはきっと、俺がこれを理解してなかったから、俺を怒ったんだな。
納得したら、怒りがすっかり収まった。
「キール様ぁ、大好きです♡」
「ああ。俺もだよ、メアリー」
俺はメアリーの髪を撫でながら、甘い言葉を囁いた。
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