ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。

光子

文字の大きさ
上 下
36 / 54
連載

95話 新婚旅行④

しおりを挟む
 

「私…も…そ、そのっ……メトが、好き……に、なって……いました!私、メトが好きです…!」

 なんとか声を絞り出して告白する。
 よし、言えた!凄いギリギリだけど、私の気持ちは、ちゃんと伝えました。
 これ以上は恥ずかしくて視線を合わせられなくて、目を背ける。


 私は、今日はこれで満足だった。

 自分の気持ちを、ちゃんとメトに伝えられたし、お互いの気持ちが通じ合った。それだけで、満足。
 メトだって、今日は私を取って食うつもりは無いって言ってた。
 言ってたのにーーー




「嘘つき!」

 ーー次の日、私はベッドの上、布団に包まりながら、メトに向かって怒鳴った。

「五月蝿い。終わったことでいちいち目くじらを立てるな」

 ベッドから降りたメトは、服を着ながら、私に向かって冷たく言い放った。

 翌朝ーーーと言っても、昼過ぎーーー。
 私にとっては、初めて、こんなに遅い起床。それもこれも、全部、メトの所為!

「何もしないって言ったのに!」

「あのねぇ、あの状態で何もしないなんてあると思う?手を出すに決まってるでしょ。夫婦なんだし、別に問題無い」

「うっ…」

 そう言われると何も言い返せない……!
 でも、私、まだ覚悟決まって無かったのにー!そのまま流されて、最後までしてしまった!

「君の覚悟を待っていたら、あと、半年くらいかかる」
「そんっっっーーな、ことはーー」

 無い。とは……言いきれないのが自分でも怖い。

「大体、君だって昨日はあんなにーー」
「止めて!分かりました!もういいですから!」

 昨日の情事の内容なんて話されでもしたら、恥ずかし過ぎて本当に死んでしまう!本当に止めて!!

「そう言えば、あの馬鹿夫婦の結婚式、もう終わった頃だね」

「え?あーーそう、ですね」

 確か招待状には、今日の午前中って記されていたから、もう、終わってるんだ……あの二人の結婚式なのに、全く、気にならなかった……てか、気にする余裕が無かった……。

 メトは私の隣に座り、手を取ると、その手の甲に口付けた。

「これで君は俺のモノだね」
「ーーーっ!」

 こいつーー!!私がいっぱいいっぱいなのを分かってて、楽しんでしてる!!

「……メトは意地悪ですね」
「そんな男を旦那に選んだのは君だけどね」

 言ったら言い返される。メトに口喧嘩で勝てそうもありません。

「甘い言葉だけを言って欲しい?ああ、ルエルは口先だけの男が好きなんだっけ?」

 意地悪そうに尋ねるメト。

 口先だけーーそうね、カインは、元・旦那は、口では愛してると言葉を吐くけど、実際は私を愛してなんかいなかった。
 どれだけ仕事や家事をして、体を壊しかけても、『大丈夫?』と心配する言葉はかけてくれるけど、助けてはくれなかった。
 どれだけ元・お義母様やお義父様に暴言を吐かれても、『ルエルの為を思って言ってくれてるんだよ、大丈夫。直ぐに仲良くなれるよ』と前向きな言葉を吐くけど、義両親との仲を取り持ってはくれなかった。
 エレノアと再婚すると私に告げた時も、『ルエルを愛してる』と愛の言葉を吐いたけど、私を捨てて、他の男の元に嫁がせようとした。

「……メトがそんな男なら、好きになっていません。ダメ男との恋愛は、もう懲り懲りですから」

 私がそう言うと、メトは『学習したね』とだけ言って、笑った。

「で?今日はどこに行きたい?折角だから、ルエルの好きな場所に連れて行ってあげるよ」
「……お腹空きました」
「クラウドが美味しい海の幸が食べれる店の予約を取ってくれてるらしいよ」
「……クラウド様……気を配り過ぎじゃないですか……でも、海の幸はいいですね、美味しそうです」
「じゃあ、そこに行こう」

 ベッドから降りると、私は慌てて身支度を整えた。


 愛する人と一夜を過ごして、ゆっくりと昼過ぎに起きて、遅めの昼食を頂き、手を繋いでデートする……考えてみれば、私はカインと、こんな風にデートしたことも無かった。
 家族に大切にされた記憶は無い。元・義実家で大切にされた覚えも無い。元・旦那にーーーカインに、大切にされた思い出も無い。


「メト、私……今、とても幸せです」

 これが幸せなんだと、実感する。

 カインと結婚していた時、私は、カインと一緒にいることが、カインの為に生きることが幸せだと思っていた。私は、あんなろくでもない家にいることが幸せだと、本気で思っていた。例えどれだけ搾取されても、罵られても、汚名をかぶせられてもーーー。

「良かったね」

 メトと結婚して、私の全てが変わった。
 私を大切に思ってくれる人が出来た。私の幸せを喜んでくれる人が出来た。私を幸せにしてくれる人が出来た。


 契約結婚から始まった幸せだけどーーー私はこれからもこの幸せをーーー今度こそは、大切にしていく。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

ここは私の邸です。そろそろ出て行ってくれます?

藍川みいな
恋愛
「マリッサ、すまないが婚約は破棄させてもらう。俺は、運命の人を見つけたんだ!」 9年間婚約していた、デリオル様に婚約を破棄されました。運命の人とは、私の義妹のロクサーヌのようです。 そもそもデリオル様に好意を持っていないので、婚約破棄はかまいませんが、あなたには莫大な慰謝料を請求させていただきますし、借金の全額返済もしていただきます。それに、あなたが選んだロクサーヌは、令嬢ではありません。 幼い頃に両親を亡くした私は、8歳で侯爵になった。この国では、爵位を継いだ者には18歳まで後見人が必要で、ロクサーヌの父で私の叔父ドナルドが後見人として侯爵代理になった。 叔父は私を冷遇し、自分が侯爵のように振る舞って来ましたが、もうすぐ私は18歳。全てを返していただきます! 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

側妃のお仕事は終了です。

火野村志紀
恋愛
侯爵令嬢アニュエラは、王太子サディアスの正妃となった……はずだった。 だが、サディアスはミリアという令嬢を正妃にすると言い出し、アニュエラは側妃の地位を押し付けられた。 それでも構わないと思っていたのだ。サディアスが「側妃は所詮お飾りだ」と言い出すまでは。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームを元にした人気のライトノベルの世界でした。  しかも、定番の悪役令嬢。 いえ、別にざまあされるヒロインにはなりたくないですし、婚約者のいる相手にすり寄るビッチなヒロインにもなりたくないです。  ですから婚約者の王子様。 私はいつでも婚約破棄を受け入れますので、どうぞヒロインのところに行って下さい。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。