ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。

光子

文字の大きさ
上 下
30 / 54
連載

89話 無能な皆さん、さようなら

しおりを挟む
 

 自分は人格者で、皆から愛されていると信じて疑っていない。だから、自分を差し置いて、ヴェルデとサンスが私達を選んだ事が信じられない。

「マルクス伯爵令息ーーカイン。君が、彼等を自ら捨てたハズだけど?」

「ル、ルーフェス様……でもそれは、彼等があの時はまだ、役に立つ人間だとは知らなかったからですーー知っていたら、傍に置いていました!彼等は、僕の!マルクス領の民です!彼等を僕に返して下さい!僕には、彼等が必要なんです!」

 役に立たない人間をいとも簡単に切り捨てる貴方が嫌い。自分の役に立つようになったからって、手の平を返して呼び戻そうとする貴方が、心底嫌い。

「誤解しないで欲しいけど、あのまま君の所にいても、二人は君の言う、役立たずのままだったよ」

「僕の所にいたら、役立たずの……まま?そんなワケ無いじゃないですか!だって、彼等はこんなに強くなったんですよ?!僕の元にいても、きっとーー」

「君みたいな無能な主のもとにいて、成長出来ると思う?」
「無…能?僕が?」

「君は二人の才能を見抜けず、育てることも出来なかった。君はただの無能な主だ。アレらをあそこまで育て上げたのは、俺だよーー絶対に返さない。アレらは、もう俺のモノだ」

「そんーーな、僕はーー」

 ハッキリと言うメトの言葉に、何も言い返せず、戸惑いからか、視線が泳ぐカイン。

 その後ろで、歓喜の声を上げて喜んでいるヴェルデとサンス。
 親愛するメトに必要とされて良かったですね……アレ呼びとかされてますけど、貴方達が気にならないなら、もうそれでいいですよね……。


 カインも、元・お義父様、ファンファンクラン様も、自分が出来る男だと勘違いして、暴走する男達の、なんて無能なこと……さっさと自らの無能さを思い知り、引退されるのがよろしいかと思いますよ。

「ああ、そうだ、マルクス伯爵。貴方が口先だけ心配していたマルクス領民だが、ファンファンクラン子爵の依頼により、既に避難している。この街以外の魔物も、全て退治済みだ」

 クラウド様のお父様は、自身の子爵の爵位を息子に譲ると宣言し、ファンファンクラン子爵夫人との離婚を了承した。これで、新たなファンファンクラン子爵は、クラウド様になる。

「なーーんだと?!じゃあ、最初からこうなるつもりで計画していたんですかーー?!」

「どうかな?正直、お前達が死んでいたなら死んでいたで構わなかったし、最後まで身の程を弁えず傍若無人な態度を貫いて貰っても構わなかったし、どう転んでも良かったよ」

 死んでいても、助けなくても、要求を呑もうと、謝罪しようと、メトにはどうでも良かった。最終的にこちらの望む方向に持って行くだけの力を、メトは持ってる。ただ、ルーフェス公爵家に逆らったとして、お灸を据えただけ。地獄を見せただけーーー。


 自分達の命はどうでも良かったとハッキリ言われ、元・お義父様は、メトの冷酷さを目の当たりにし、震え上がった。

「今回のマルクス伯爵と元・ファンファンクラン子爵の行動は、俺から皇帝陛下にこと細かく報告しておく」

「はーーはい。かしこまり、ました」

 すっかり毒牙を抜かれた元・お義父様の従順なこと。きっと皇帝陛下は、悪戯に自身の領土を脅かしたマルクス伯爵に、重い罪を与えるでしょう。元・ファンファンクラン子爵のように、爵位を取り上げられないよう、精々祈りを捧げることですね。






「なんてことだ……ワシの家が……」

 ルーフェス公爵家が去り、残されたマルクス伯爵家は、呆然と、瓦礫と化したマルクス伯爵邸前に佇んでいた。

「……ガレギアンに別宅があるから、そこに行くしかないわ……」

 同じく、牙を抜かれたマルクス伯爵夫人は、小さな声で夫に伝えた。

「ガレギアンってーーすっごい田舎の町じゃないですか!そんな所に行くなんて嫌です!」

 魔物がいなくなり、いつもの調子を取り戻してきたエレノアは、マルクス領内でも田舎に分類されるガレギアンに行くのを嫌がった。

「五月蠅い!そこしか行く場所が無いのだから仕方無いだろう!嫌なら、クリプト伯爵邸にでも帰っていろ!」
「なっーー」
「父様!少し落ち着いて!」

 興奮し、エレノアを怒鳴るマルクス伯爵を、カインが宥めた。

「そうですよ、あなた!エレノアさんはクリプト伯爵様の大切な娘さんで、私達の孫を産んでくれた方なんだから!」

 マルクス伯爵夫人も、カインに続いて夫を宥めた。

「--っ!そうかーーそうだな。すまなかったエレノア」
「いえ……別に……」
「ねぇエレノア。今から行くガレギアンの家は、新しい家が見つかるまでの仮住まいだと思ってよ。今度の家はどんな素敵な家になるか、想像するだけで楽しくないかい?」

「カイン様……うん!そうね!その通りだわ!」

 カインの言葉に機嫌を良くしたエレノアは、ギュッとカインの首に腕を回し、抱き着いた。

「今度は螺旋階段があって、光が差し込む大きな窓があるお家がいいなぁ。あ、あと!夫婦のお部屋とは別に、私専用のお部屋も欲しいー!衣装部屋も、前より大きい部屋がいいなぁ」
「とても素敵だね。そうしよう!全て、エレノアの望む通りにしようよ」

 新居について、和気あいあいと夢を膨らませる2人。


(エレノアはルエルと違い、クリプト伯爵家に大切にされてる娘だから、マルクス伯爵家に援助をしてくれるはずだ。そのお金で、新しく家を買おう)


(マルクス伯爵家はお金持ちだもの!カイン様におねだりすれば、私の要望を全部叶えた家を用意してくれるはずだわ!)



 ーーーお互いが、お互いのお金を期待しているとは知らずにーーー

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

ここは私の邸です。そろそろ出て行ってくれます?

藍川みいな
恋愛
「マリッサ、すまないが婚約は破棄させてもらう。俺は、運命の人を見つけたんだ!」 9年間婚約していた、デリオル様に婚約を破棄されました。運命の人とは、私の義妹のロクサーヌのようです。 そもそもデリオル様に好意を持っていないので、婚約破棄はかまいませんが、あなたには莫大な慰謝料を請求させていただきますし、借金の全額返済もしていただきます。それに、あなたが選んだロクサーヌは、令嬢ではありません。 幼い頃に両親を亡くした私は、8歳で侯爵になった。この国では、爵位を継いだ者には18歳まで後見人が必要で、ロクサーヌの父で私の叔父ドナルドが後見人として侯爵代理になった。 叔父は私を冷遇し、自分が侯爵のように振る舞って来ましたが、もうすぐ私は18歳。全てを返していただきます! 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

側妃のお仕事は終了です。

火野村志紀
恋愛
侯爵令嬢アニュエラは、王太子サディアスの正妃となった……はずだった。 だが、サディアスはミリアという令嬢を正妃にすると言い出し、アニュエラは側妃の地位を押し付けられた。 それでも構わないと思っていたのだ。サディアスが「側妃は所詮お飾りだ」と言い出すまでは。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームを元にした人気のライトノベルの世界でした。  しかも、定番の悪役令嬢。 いえ、別にざまあされるヒロインにはなりたくないですし、婚約者のいる相手にすり寄るビッチなヒロインにもなりたくないです。  ですから婚約者の王子様。 私はいつでも婚約破棄を受け入れますので、どうぞヒロインのところに行って下さい。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。