ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。

光子

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79話 ファンファンクラン子爵

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 ルーフェス公爵家は帝国で最も優れた武力を持ち、帝国内の多くの場所は、ルーフェス公爵家によって守られているーーーだから、私が無理矢理嫁がされるハズだったターコイズ男爵も、私との結婚をすぐに諦めた。地方の方が魔物の被害が多く、ルーフェス公爵家の力が必要不可欠だからだ。

「アルファイン侯爵家ーーラットの家に救助に行かせたが、そこでも無礼で横暴な態度が目立ったようで、俺から直接皇帝陛下に進言しーーー少しお灸を据えた」

 お灸ーーー皇帝陛下に直接進言出来るなんて、流石ルーフェス公爵様……何をしたのか気になりますが、今は詳しく聞くのは止めておきましょう。

「元から俺を敵視していたらしいが、それで余計に恨みを買った。まぁ、それは別にどうでもいいけどーー」

 どうでもいいんだ。

「ファンファンクラン子爵がこちらの介入を拒んだ所為で魔物退治が遅れ、魔物がファンファンクラン領外にまで出てきた」
「ええ?!」
「おかげで被害が拡大し、こちらは大忙しだ」

 それはそれはーーー本当に無能な領主ですね。どこにでもいるんですね、無能な領主。

「なので、君に貸していたラットをこちらに返して欲しい」
「勿論です」

 ラットはアルファイン侯爵令息として剣技に優れていますものね。こちらの仕事は落ち着いてきましたし、そちらの方が人命が懸かっているんですから大切です。彼もそっちの方が遺憾無く力を発揮出来るでしょうしね。

「あとーーーその影響で、クリプト領とマルクス領にも魔物が流れている」

「!」

「クリプト伯爵はすぐに救助要請を出し、上手く対応しているが、マルクス伯爵はーーー」

「聞くまでも無く分かります。まっっっったく対応していないのでしょうね」

 無能な元・お義父様。領主として領民を思いやる気持ちを持ち合わせておらず、たった一代でマルクス伯爵家を没落貴族にまで落ちぶれさせた無能。その息子であるカインも同様。私がカインと結婚していた時は、私が元・お義父様の仕事のフォローをしたり、カインに代わって領民達のお願いを叶えたりして持ち直していたけどーーー。

「マルクス伯爵は息子に恥をかかせた俺に頼りたくないらしく、領民達の不安な声を無視して、救助要請を出さずにいる」

 ーーーあいつ、マジでしばき倒したい。
 自分のプライドと意地の為に領民達の命を軽んじるなんて、最っっ低。

「そしてここからが最も面倒なことだが、そのマルクス伯爵とファンファンクラン子爵が手を組んだ」
「……頭が痛くなりそうです」

 嫌な組み合わせ。
 メトの話によると、ルーフェス公爵家に頼りたくないマルクル伯爵が、メトに一泡吹かせてやろうとしているファンファンクラン子爵と意気投合し、魔物退治を依頼したらしい。
 馬鹿なの?元・お義父様。そのファンファンクラン子爵の所為で、魔物が侵入してきて大変なことになってるんですけど?なのに何故、その元凶と手を組むんですか?
 きっと、何も考えてないんでしょうね……。

 無能な領主2人、このまま放置して、そっちで勝手にして欲しいところだけどーーー


「……メト。図々しいお願いではありますが……」

 私は椅子から立ちあがると、深々とメトに向かい頭を下げた。

「マルクス伯爵がいかに無礼でも、マルクス領民に罪はありません。どうか……助けが必要になったさいは、ルーフェス公爵様のお力をお貸し下さい」

 ハッキリ言って、マルクス領に良い思い出は無い。
 領民達はカイン達の言い分を信じ、私を悪く言っていたし、何より、私をハズレ嫁と蔑んだ元・義実家が統治する領地ーーー。
 だけど、ほんの三年だけど、その土地で過ごし、遠巻きながら、面倒を見た領民達が住まう場所。彼等はカイン達に騙されていただけーーーそして、当時の私も、それを良しとしていた。彼等に罪は無い。出来ることなら、可能な限り、救ってあげたい。

 ……私がカインと結婚し、彼等に手を貸さなければ、こうなる前に、マルクス伯爵は爵位を剥奪され、他の、もっとマトモな方が領主になっていたかもしれないんだからーー!


「……領民達からも随分、失礼な態度を取られていたと聞いたけど、君はお人好しだね」
「カイン達に騙されていただけですから」
「まぁいい。今は君への誤解も解け、君にしてきた態度を後悔してると義姉から聞いてる。君達に免じて、助けてあげるよ」

「ありがとうございます」

 とは言っても、向こうから救助の要請が無い限り、こちらから動く事が出来ないのがもどかしい……。

「まぁ、そろそろ本気で目障りだと思っていたから丁度良い。俺が直々に相手をしてあげるよ。早速明日、マルクス領に向かう」

「はい、ありがとうございまーーて、勝手に行くんですか?救助要請は出されていないんですよね?それなのに、勝手に他の領地に手を出せるんですか?」

 いくらルーフェス公爵家とは言え、まだそこまで被害が出ているワケでもないのに、他の領地の問題にズカズカ踏み込むなんて、そんな横暴なことが出来るの?

「別に出来なくは無いけど」

 出来るんだ……。

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