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11話 ルーフェス公爵家へ

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 3年間ここで過ごして手にしたのは、必要最低限の仕事に着ていく服と、化粧品だけ。後は、何も無い。
 カインからも、贈り物の1つも貰った事が無い。

「そうか。なら、今度俺が、君に指輪をプレゼントするよ。誰よりも豪華な指輪を贈ろう」
「……とても嬉しいです、メト」

 それは良い考え。その指輪を付けた私を見る度に、きっとエレノアは顔を歪めるでしょうね。

「では、元、義家族の皆様。今までお世話になりました。今日から赤の他人です。次にお会いする時がありましたら、今までみたいな馴れ馴れしい態度は止めて下さいね」

「ーーーっ!」
「ル、ルエル…っ!」

 何故か自分が裏切られたみたいな、傷付いた顔を浮かべるカインあなたが嫌い。
 元・お義母様、お義父様の引き攣った顔も見れたし、今日は満足。まだまだ足りないけど。もっともっと、不幸にしてあげるから、楽しみにしていてね。




「ふぅ」

 元・義実家との決別も終え、馬車の中に戻ると、張り詰めていた糸が切れたのか、自然と息が漏れた。

「中々に愉快で屑な義実家だったね」
「お付き合い頂きありがとうございます」

 これで、私は無事に望まぬ縁談から脱出出来たし、義実家と決別も済んだ。

「構わない。さっきも伝えたが、復讐に俺が必要なら遠慮なく使えば良い。俺ほど魅力的で強力なカードはそうない。有り難く使え」

「その通りですけど……自分で言っちゃうんですね」

「事実だからな」

 実際、メトのおかげでこんなにスムーズに物事が進んだ。彼が契約結婚を了承してくれなかったらと思うと……悲惨な未来しか見えなくて、身震いする。

「メト、私の為に怒って下さって、本当にありがとうございます」

 純粋に嬉しかった。どちらの家でも、私の味方をしてくれる人はいなかったから。

「……君の為だけじゃない」
「え?」
「もうすぐ公爵家に着くぞ」

 意味深な事を言われたけど、詳しく話したくはなさそう。
 話したくないのなら、無理に聞き出そうとは思わない……また、話したくなったら、向こうから話して下さるかな。




 ルーフェス公爵邸ーーー。

 帝国で1番の大富豪。その名に恥じない、立派な家を、馬車の中から見上げる。

 ……勢いで契約結婚を結んだけど、私、こんな立派な家の夫人になるのね……。
 前回は、没落寸前の貧乏な家に嫁いだから、使用人も誰1人いなかったけど、ここには当たり前だけど沢山の使用人がいる。

「さっき知らせを送っておいたから、俺が結婚する相手を連れて帰って来るのは知られているはずだ」

 ……それは、今頃屋敷は大パニックでしょうね……。今まで沢山の縁談を断り続けてきたメトが、急に結婚相手を連れて帰って来るんだから。それも訳ありの伯爵令嬢。

 実家や元・義実家とは規模が違う、広くて手入れの行き届いた綺麗な庭を抜けた先にある大きなエントランスに着くと、馬車は止まった。

 ガチャっと、馬車の扉が開かれ、メトにエスコートされ、外に出る。


「おー!メト、マジで結婚相手連れて来たじゃん!」
「ーーー」

 だ、誰この人?
 馬車を降りると、凄くフランクにメトに話し掛ける人物が、まじまじと物珍しそうに、私を見た。

 この服……執事?執事が何故、主人であるメトにそんなに馴れ馴れしく話し掛けてるの??

「ラット、止めろ」

 ラットと呼ばれる男の人の視線から庇うように、私の間に立つメト。

「えー!マジかよ?マジでメト好きな女出来たの?!今日は赤飯だなぁー!早速、料理長に注文してくっか!」
「待て無能」

 無能って……結構な言われようですね。でも、感じ的に執事っぽく無い!少なくとも、私はこんな明るくて陽気な執事見た事無い!

「なんだよ」

 否定もせず、すんなりと無能を受け入れましたね。もしや、言われ慣れてます?

「余計な事をするな。第一、人目がある所では言葉遣いに気を付けろと言っているだろう」
「メトのお嫁さんならセーフじゃねーの?」
「……はぁ、もういい」
  
 頭を抱えながら溜め息を吐くメト。
 でも、メトも本気で怒ってないみたい……?なんか、凄く仲良く見える。かも…?

「ルエル。だっけ?」

「!あ、はい。ルエル=クリプトと申します。本日より、メト様の妻としてお世話になります。どうぞ、よろしくお願い致します」

「んー!いいね!感じOK!合格!ルエル良い子だねー!流石メト!性格ねじ曲がってるけど人を見る目だけは良いぜ!」

 今の一瞬での会話で合格?!
 ひょ、評価が高かったのは嬉しいけど、ど、どう答えれば良いのか分からない……!

「ラット、いい加減にしないと査定に響かせるぞ」

「それは勘弁!っと、俺ーーいや、私も自己紹介させて頂きます。私の名前は《ラット=アルファイン》。メト様の執事です。以後、お見知りおきを」

「ラット=アルファイン……アルファインって……あの有名な侯爵家のアルファイン様ですか?!」

 アルファイン侯爵。
 皇帝陛下より主に重要な国境防壁を任されていて、代々、ルーフェス公爵家に仕えている貴族の1つ。

「そーそー!そのアルファイン!その五男で、メトとは幼馴染!そして、今はメトの執事!」

 さ、流石ルーフェス公爵家……屈指の貴族のご子息が執事にいらっしゃるなんて……!

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