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蒼の館 17
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「呆れた。下品で何が悪いんだ。」
蒼は心底あきれ果てた様子で、海神を抱えていない方の手の平を上に向けると、肩をすくめて続きを口にする。
「品なんてものを気にしていられなくなるほど一途な光弘の想いに、君はもう少し敏感になるべきだろう。・・・疎いにもほどがある。君がこのまま変わらないというのなら、光弘少年は、極めて不幸だと言わざるを得ないね。」
蒼の言葉に煽られ、黒はすかさず極めて生意気な笑みを口元に浮かべて答える。
「はっ・・・。海神の本心に気づくまでに、君はどれだけ長い時間を要した?・・・遅疑逡巡の規範のような君に説教いただけるとは、まさに光栄の極みだ。・・・僕が疎い?極めて鈍い君に、何がわかる。」
「まだ分からないのか?君ってやつは本当に自分勝手な奴だ。・・・ボクが極めて鈍いんだとしたら、君は尋常じゃなく疎いということだね。君はいつだって、自分のことしか考えてないだろう。」
「僕が?」
「そうさ。・・・君は光弘を何よりも優先するくせに、あの子の不安はすっかり棚に上げて向き合おうとはしていない。本当にあの子が大切なら、君は君自身を、もっとずっと、大事にすべきなのに・・・・・・。」
蒼は心の中でひっそりと、「それは光弘にも言えることなんだけどね」と小さく舌を出した。
だが、そんな心の内はお首にも出さず、水面に広がった波紋がすんと消えゆく時のように、にわかに表情を改めると、真剣な様子で続きを口にする。
「君の優しさは・・・、あの子には辛すぎる。・・・傷だらけの君を抱えて、あの子が何を想っていたかくらい・・・ボクにだってわかる。」
「・・・・・・。」
「ボクだったら耐えられない。自分の知らないところで、何も分からないうちに、海神が独りで苦しんで傷ついているなんて。」
黒は表情をけわしくしたまま固まった・・・・・・。
光弘の目に辛すぎる情景を焼きつけさせ、心を乱すさらなる要因をつくった張本人は蒼なのだが、幸いそのことを黒が追及するつもりはなく、また蒼自身はすっかりそのことを忘れてしまっている。
なんとなく気まずいような沈黙が続き、海神が耐えきれず蒼の袖をくっと引いた。
蒼は「ごめんね。・・・ありがとう。」と優し気な声音で海神にささやくと、仕切り直すように大きく息を吐き出した。
「黒、悪かった。意地の悪い言い方をして。・・・少し、苛ついたんだ。君があまりにも自分のことを、粗末にばかりするから。」
蒼は心底あきれ果てた様子で、海神を抱えていない方の手の平を上に向けると、肩をすくめて続きを口にする。
「品なんてものを気にしていられなくなるほど一途な光弘の想いに、君はもう少し敏感になるべきだろう。・・・疎いにもほどがある。君がこのまま変わらないというのなら、光弘少年は、極めて不幸だと言わざるを得ないね。」
蒼の言葉に煽られ、黒はすかさず極めて生意気な笑みを口元に浮かべて答える。
「はっ・・・。海神の本心に気づくまでに、君はどれだけ長い時間を要した?・・・遅疑逡巡の規範のような君に説教いただけるとは、まさに光栄の極みだ。・・・僕が疎い?極めて鈍い君に、何がわかる。」
「まだ分からないのか?君ってやつは本当に自分勝手な奴だ。・・・ボクが極めて鈍いんだとしたら、君は尋常じゃなく疎いということだね。君はいつだって、自分のことしか考えてないだろう。」
「僕が?」
「そうさ。・・・君は光弘を何よりも優先するくせに、あの子の不安はすっかり棚に上げて向き合おうとはしていない。本当にあの子が大切なら、君は君自身を、もっとずっと、大事にすべきなのに・・・・・・。」
蒼は心の中でひっそりと、「それは光弘にも言えることなんだけどね」と小さく舌を出した。
だが、そんな心の内はお首にも出さず、水面に広がった波紋がすんと消えゆく時のように、にわかに表情を改めると、真剣な様子で続きを口にする。
「君の優しさは・・・、あの子には辛すぎる。・・・傷だらけの君を抱えて、あの子が何を想っていたかくらい・・・ボクにだってわかる。」
「・・・・・・。」
「ボクだったら耐えられない。自分の知らないところで、何も分からないうちに、海神が独りで苦しんで傷ついているなんて。」
黒は表情をけわしくしたまま固まった・・・・・・。
光弘の目に辛すぎる情景を焼きつけさせ、心を乱すさらなる要因をつくった張本人は蒼なのだが、幸いそのことを黒が追及するつもりはなく、また蒼自身はすっかりそのことを忘れてしまっている。
なんとなく気まずいような沈黙が続き、海神が耐えきれず蒼の袖をくっと引いた。
蒼は「ごめんね。・・・ありがとう。」と優し気な声音で海神にささやくと、仕切り直すように大きく息を吐き出した。
「黒、悪かった。意地の悪い言い方をして。・・・少し、苛ついたんだ。君があまりにも自分のことを、粗末にばかりするから。」
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