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蒼の館 8
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肩から胸に流した長くつややかな黒髪を、手持無沙汰にいじっていた黒は、小さな埃の欠片でも引っかかっていたのだろうか、毛先にふっと短く息を吹きかけてから、再び口を開いた。
「そんなことよりも、海神・・・・・・。君のことで言っておきたいことがある。」
「海神のことで?」
唐突に吐き出された黒の言葉に、蒼は表情を険しくし、聞き返した。
「そう。僕は過去に一度、海神の記憶を封じたことがあるんだ。白妙が宵闇を手にかけた時に・・・・・・。名づけを行えばおのずと蒼には知れてしまうだろうから、今のうちに伝えておくことにする。」
「・・・君、やっぱり海神の記憶を消していたのか。」
落ち着いた声で言う蒼に、わずかな驚きを見せつつ黒は問いかける。
「気づいていたの?」
「ああ。海神は・・・幼いころから白妙の傍に常にいた。それなのに、黒・・・君に関する記憶がほとんどのこっていないんだ。あまりにも不自然過ぎるだろう。それ以外にも腑に落ちないことはいくつもあったしね。海神は賢く力もあり強力だ。自由に出来る者は少ない。海神の記憶をいじれるやつなんて、君くらいのものだろう?」
「なるほどね。確かに、悪くない考えではある・・・・・・。だが、僕が封じた海神の記憶は少ない。・・・覚えておいて。」
黒の意味深な言葉に、わずかに目を細めた蒼だったが、彼がこれ以上話す気がないのをみると、続きを口にした。
「君さっき、海神を憎むことができなかったって言ってたよね。もしかして本当は、海神を殺してしまうつもりだったのか。」
黒は目を細め、海神をちらりとかすめるように見ると、目を伏せた。
「そうだね。僕は海神のように性格が良くはない。心だって狭いんだ。逆恨みでしかないとわかっているけど、それでも恨まずにはいられなかった・・・本音を言えば今だって、心の底から嫌うことができたらと願っているくらいなんだ。」
黒の言葉に、海神がひっそりと肩を落とした。
蒼はそっと彼の頭を胸に抱き寄せ、包み込んだ。
「ごめんね。でも、海神さえ現れなければ、龍粋があっさりやられることはなかっただろうし、龍粋がもしも生きていたのならば、宵闇を救う術が、他に何か見つかったかもしれないんだ。神妖の長も・・・あんなことにはならずにすんだのかも・・・っ」
傷が酷くいたんだのだろう。
黒が小さく息をのんだ。
思わず手を差し伸べようと身体を傾けかけた海神を、蒼は強く引き寄せ離さなかった。
驚いたように自分を見上げる海神に、蒼は小さく首を横に振った。
黒と海神の背負う複雑な過去の因縁に、蒼の胸は、酷く痛み、これ以上黒に触れさせることをためらったのだ。
黒は自嘲気味に笑うと、暗く言った。
「そんなことよりも、海神・・・・・・。君のことで言っておきたいことがある。」
「海神のことで?」
唐突に吐き出された黒の言葉に、蒼は表情を険しくし、聞き返した。
「そう。僕は過去に一度、海神の記憶を封じたことがあるんだ。白妙が宵闇を手にかけた時に・・・・・・。名づけを行えばおのずと蒼には知れてしまうだろうから、今のうちに伝えておくことにする。」
「・・・君、やっぱり海神の記憶を消していたのか。」
落ち着いた声で言う蒼に、わずかな驚きを見せつつ黒は問いかける。
「気づいていたの?」
「ああ。海神は・・・幼いころから白妙の傍に常にいた。それなのに、黒・・・君に関する記憶がほとんどのこっていないんだ。あまりにも不自然過ぎるだろう。それ以外にも腑に落ちないことはいくつもあったしね。海神は賢く力もあり強力だ。自由に出来る者は少ない。海神の記憶をいじれるやつなんて、君くらいのものだろう?」
「なるほどね。確かに、悪くない考えではある・・・・・・。だが、僕が封じた海神の記憶は少ない。・・・覚えておいて。」
黒の意味深な言葉に、わずかに目を細めた蒼だったが、彼がこれ以上話す気がないのをみると、続きを口にした。
「君さっき、海神を憎むことができなかったって言ってたよね。もしかして本当は、海神を殺してしまうつもりだったのか。」
黒は目を細め、海神をちらりとかすめるように見ると、目を伏せた。
「そうだね。僕は海神のように性格が良くはない。心だって狭いんだ。逆恨みでしかないとわかっているけど、それでも恨まずにはいられなかった・・・本音を言えば今だって、心の底から嫌うことができたらと願っているくらいなんだ。」
黒の言葉に、海神がひっそりと肩を落とした。
蒼はそっと彼の頭を胸に抱き寄せ、包み込んだ。
「ごめんね。でも、海神さえ現れなければ、龍粋があっさりやられることはなかっただろうし、龍粋がもしも生きていたのならば、宵闇を救う術が、他に何か見つかったかもしれないんだ。神妖の長も・・・あんなことにはならずにすんだのかも・・・っ」
傷が酷くいたんだのだろう。
黒が小さく息をのんだ。
思わず手を差し伸べようと身体を傾けかけた海神を、蒼は強く引き寄せ離さなかった。
驚いたように自分を見上げる海神に、蒼は小さく首を横に振った。
黒と海神の背負う複雑な過去の因縁に、蒼の胸は、酷く痛み、これ以上黒に触れさせることをためらったのだ。
黒は自嘲気味に笑うと、暗く言った。
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