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毛むぐり 2

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 「へぇー。真也しんや・・・きみ、結構やるじゃないか。」

 ふいに聞こえた声に首をかしげると、あお海神わだつみの頭をなでながら、美しく微笑んでいた。

 「海神わだつみ。君は師としても最高じゃないか・・・・・・。また、惚れ直しちゃったよ。」

 大人しく頭を撫でるがままにされていた海神は、ピクリと眉間を震わせた。
 蒼はその様子をたまらなく嬉しそうに見つめている。
 今にも抱き着きそうだ・・・・・・。

 「・・・・・・真也しんや。君は潜在的な力が大きいようだな。昨日今日力を覚えたばかりの人の子が放ったとは思えない範囲の広さだった。それと・・・」

 あおは、面白そうに俺の目を覗き込んでくる。
 黒曜の澄んだ瞳に、ボクの姿が反射しているのが見えた。

 「君、なぜ闇色を隠すような真似をする。どうしてわざわざ緑を乗せて放ったんだ?海神わだつみから得意な色でいいと、言われたのに。」

 蒼の言葉に、俺は身体を固くした・・・・・・。

 自分でもわからないんだ。
 けれど確かに、俺は闇色の力を使うことをなんとなく避けている・・・・・・。
 それなのに、不思議と使い慣れた感じのするその力を、他の色の力を使う時の支柱にどうしてもおいてしまうのだ。

 「まあいい・・・。とにかく、君の力はかなり強力だ。恐らく、こういう使い方なら、今の君でも可能だろう。」

 あおは瞬く間に、妖鬼へと正体を現した。
 白銀の髪が透き通る様に陽光にきらめく様は、息をのむほど美しい。
 海色の瞳を鋭くしたあおは、何気ない様子をくずすこともなく、強烈な妖気を鋭く放った。

 ゾクリと身体の芯を恐怖で殴りつけるような衝撃が、彼を中心に輪を広げるように駆け抜けていく。
 そこにいた小さな生き物たちは身体の動きを縛られ、ぽとぽとと地へ転がっていった。
 勝と光弘と都古が、険しい表情でこちらを振り返っている。

 「わかるか?ボクが今放ったのは邪気だが、君がさっきの波紋に強い妖力を乗せることができるなら、気の弱いものならば今のように意識を失わせることが可能だ。あぁ。・・・やるなら、あまり強く気をこめる過ぎるなよ。彼らの精神を砕きたくはないだろう?」

 あおが一つ指を鳴らすと、意識を失っていた生き物たちは、一斉に起き上がり、激しく動揺しながら再び身を隠していった。

 「今回は、これを使ってしまっては修練にならないからね。君は、力の使い方を知らなすぎる。まずはそこを覚えなきゃ。・・・一匹でいい。毛むぐりを素手で掴んで捕えてみろ。」

 「ありがとう。・・・やってみる。」

 俺は二人に礼を伝え、一つ深くうなずくと先ほどと同じように弱い気を放った。

 すぐ足元に、毛むぐりの気配を感じ手をのばす。
 すると驚いたことに向こうから俺の腕にチョコンと飛び乗ってきた。
 そっと指を伸ばして、毛むぐりにふれた俺は、驚いた。
 触っている感覚はあるのに、うまくつかむことができないのだ。

 俺の腕の上でするりとつややかな身体をしならせた毛けむぐりは、そのままあおの手首の奴と同じように、俺の腕に巻き付いてしまった。

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