169 / 324
再び 現在・・・・・
しおりを挟む
俺と勝と都古が光弘を背中に隠すと、楓乃子がそれをかばう様に宵闇と俺たちの間に立った。
「前から気になっていた。・・・・君はなぜ、みーくんに・・・無色の術に、そんなにこだわる。・・・・・君の目的はなんだ。」
楓乃子の問いかけに、宵闇は瞳の奥をわずかに揺らしたように見えた。
が、すぐに鋭い眼光を取り戻し、挑むような目で楓乃子を睨む。
「・・・・・・・闇、だ。俺は、闇だけの世界を望んでいる・・・・。」
「・・・・・なぜ。」
「俺には・・・」
何か口にしかけた宵闇だったが、舌打ちをして楓乃子を睨んだ。
「貴様は、あいつによく似ているな。お前のおかげで、余計な客が増えてしまったようだ。」
宵闇の視線の先を辿り振り返ると、そこには海神と蒼の姿があった。
「・・・・貴様っ。」
海神の姿を目にした途端、宵闇が凶悪な殺気をむき出しにし、黒い霧の塊を手のひらから撃った。
蒼が落ち着いた様子で海神をかばい前に出ると、腕を一振りし霧を祓う。
「おい。殺されたいのか。なぜ海神を襲う。」
「・・・・・。」
宵闇はギリリと音がするほど強く歯噛みし、なおも殺気立った目で海神を睨みつけていた。
「・・・待っているのか。白妙を。」
「貴様が・・・・その名を、口にするな!」
哀しみを湛えた瞳で苦し気につぶやいた海神の言葉に、宵闇はいら立ちを隠さない。
再び手のひらから禍々しい闇の塊を、海神に向かって容赦なく放った。
蒼は眉間に皺を寄せたまま、冷静に全ての攻撃を祓っていたが、海神の悲壮の表情に何かを感じているようで、攻撃に転じることはなかった。
赤黒い稲妻を伴って放たれる攻撃は雷光のように鋭く宙を裂き、2人を襲い続けている。
「今のうちに、身体に戻れ。」
宵闇の意識が完全に海神に向いているのを確認した楓乃子が、俺に耳打ちしてきた。
「君が斬ってくれたお陰で、この領域に穴が空いた。今なら簡単に出られるはずだ。・・・それに、ここは危ない。」
俺たちは視線を交わし、互いにうなずいた。
楓乃子の言う通り、俺もここはとても危険な気配を感じていた。
何か嫌な者に見つめられているような、ゾワリとしたぬめついた感覚が絡みついて離れないのだ。
「姉さんは?」
不安で表情を歪めながら、光弘は楓乃子に問いかけた。
楓乃子は嬉しそうに微笑むと、光弘の頭にそっと手を置いた。
「大丈夫。私は強いんだ・・・・・。ここが収まったらすぐにみーくんの元へ戻るから。・・・安心して。」
だが、光弘は楓乃子の手をつかみ、首を横に振った。
「俺が気づかないと思ってるのか?・・・・癒は酷く弱ってた。・・・・それに、俺はもう二度と、姉さんを置き去りにしない。」
楓乃子は目を見開いた。
「みーくん。宵闇は余計な事を言っていたけれど、私は最期まで心のままに生きることができたんだ。言霊を使って君と運命を入れ替えたのは、私の意思だよ。・・・・君は何も、気にする必要はないんだ。」
光弘は再び大きく頭を横に振ったが、楓乃子は有無を言わせない表情でそれを制した。
「いい子だから言う事を聞いて。もう二度と、失いたくないんだ。・・・・・それに、黒が酷く弱っている。今彼を守れるのは、みーくんだけだ。」
楓乃子は光弘の額に、自分の額を重ねた。
「私もすぐに戻るから。お願い・・・・彼の傍に、いてあげて。」
楓乃子の言葉に、光弘は力なく目を伏せた。
「前から気になっていた。・・・・君はなぜ、みーくんに・・・無色の術に、そんなにこだわる。・・・・・君の目的はなんだ。」
楓乃子の問いかけに、宵闇は瞳の奥をわずかに揺らしたように見えた。
が、すぐに鋭い眼光を取り戻し、挑むような目で楓乃子を睨む。
「・・・・・・・闇、だ。俺は、闇だけの世界を望んでいる・・・・。」
「・・・・・なぜ。」
「俺には・・・」
何か口にしかけた宵闇だったが、舌打ちをして楓乃子を睨んだ。
「貴様は、あいつによく似ているな。お前のおかげで、余計な客が増えてしまったようだ。」
宵闇の視線の先を辿り振り返ると、そこには海神と蒼の姿があった。
「・・・・貴様っ。」
海神の姿を目にした途端、宵闇が凶悪な殺気をむき出しにし、黒い霧の塊を手のひらから撃った。
蒼が落ち着いた様子で海神をかばい前に出ると、腕を一振りし霧を祓う。
「おい。殺されたいのか。なぜ海神を襲う。」
「・・・・・。」
宵闇はギリリと音がするほど強く歯噛みし、なおも殺気立った目で海神を睨みつけていた。
「・・・待っているのか。白妙を。」
「貴様が・・・・その名を、口にするな!」
哀しみを湛えた瞳で苦し気につぶやいた海神の言葉に、宵闇はいら立ちを隠さない。
再び手のひらから禍々しい闇の塊を、海神に向かって容赦なく放った。
蒼は眉間に皺を寄せたまま、冷静に全ての攻撃を祓っていたが、海神の悲壮の表情に何かを感じているようで、攻撃に転じることはなかった。
赤黒い稲妻を伴って放たれる攻撃は雷光のように鋭く宙を裂き、2人を襲い続けている。
「今のうちに、身体に戻れ。」
宵闇の意識が完全に海神に向いているのを確認した楓乃子が、俺に耳打ちしてきた。
「君が斬ってくれたお陰で、この領域に穴が空いた。今なら簡単に出られるはずだ。・・・それに、ここは危ない。」
俺たちは視線を交わし、互いにうなずいた。
楓乃子の言う通り、俺もここはとても危険な気配を感じていた。
何か嫌な者に見つめられているような、ゾワリとしたぬめついた感覚が絡みついて離れないのだ。
「姉さんは?」
不安で表情を歪めながら、光弘は楓乃子に問いかけた。
楓乃子は嬉しそうに微笑むと、光弘の頭にそっと手を置いた。
「大丈夫。私は強いんだ・・・・・。ここが収まったらすぐにみーくんの元へ戻るから。・・・安心して。」
だが、光弘は楓乃子の手をつかみ、首を横に振った。
「俺が気づかないと思ってるのか?・・・・癒は酷く弱ってた。・・・・それに、俺はもう二度と、姉さんを置き去りにしない。」
楓乃子は目を見開いた。
「みーくん。宵闇は余計な事を言っていたけれど、私は最期まで心のままに生きることができたんだ。言霊を使って君と運命を入れ替えたのは、私の意思だよ。・・・・君は何も、気にする必要はないんだ。」
光弘は再び大きく頭を横に振ったが、楓乃子は有無を言わせない表情でそれを制した。
「いい子だから言う事を聞いて。もう二度と、失いたくないんだ。・・・・・それに、黒が酷く弱っている。今彼を守れるのは、みーくんだけだ。」
楓乃子は光弘の額に、自分の額を重ねた。
「私もすぐに戻るから。お願い・・・・彼の傍に、いてあげて。」
楓乃子の言葉に、光弘は力なく目を伏せた。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる