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楓乃子 3

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 「姉さんっ!」
 「馬鹿な・・・・っ。」

 宵闇は慌てて槍に突き刺さった楓乃子を見るが、楓乃子に変わった様子は見られない。
 宵闇はしばし怪訝な顔をして槍の先を見つめていたが、ハッとした表情で、視線を移し宙を苦々しく睨みつけた。

 「ゆい・・・・・!」

 光弘が驚いてそちらを見つめると、闇を破る様にバチバチと紫の雷光が煌めき、浮き上がる様に癒が姿を現した。

 「貴様・・・・。いつからそこに潜んでいた。」
 「君が余計な話をし始めてからだ。」
 「癒・・・・?」

 光弘は、目を見開いて癒を見つめた。

 「姉さん・・・・なのか?」
 「みーくん。」

 その呼び方ひとつで、光弘は癒が楓乃子であることを理解した。
 かなりの驚きはあったが、不思議とショックは受けなかった。
 光弘は、この事実をすんなりと受け入れ喜んでいる自分がいることに気づき、なによりもそのことに驚いていた。

 2人のやりとりを見つめていた宵闇が、眉間に皺をよせ、厳しい表情でこちらを見つめている。

 「まさか・・・・癒。お前は、この女の転生したものなのか。」

 「そうだよ。君にはかなり世話になった。みーくんが生まれた直後・・・・。君に狙われていると知ったあの時、私は自分の考えの浅さを心の底から悔やんだよ。ヨモツヘグイの呪いを得ても、君に適うわけのないことは理解できていたからね。・・・そろそろ、終わりにしないか・・・・・。これ以上、何も傷つけさせたくはないんだ。」

 「どういう意味だ・・・・・。」

 「言葉通りの意味さ。とりあえず、私の預けていたそれを返してもらおう。みーくんに見られた以上、君に預けてはおけない。・・・・こうして私が彼のそばにいる今、それは不要なものだ。」

 癒はそう言うと、槍に刺さった楓乃子へと目を向けた。
 癒の瞳が紅く煌めいた瞬間、楓乃子の姿は一瞬で光の塵となり、癒の身体に吸い込まれた。

 光弘がその様子を呆然と見つめていると、癒は静かに光弘の元へ舞い降り、何か言いかけたようだったが、不意に視線を横にずらし、その一点をじっと見つめた。

 「・・・・来る。」
 「・・・・来る?」

 光弘が問いかけると、癒は小さくうなずいた。

 「みーくん。彼らは、君のために想像以上にがんばってくれていたんだよ。本来であれば、宵闇が攻撃を仕掛けたタイミングでしかたどり着けないはずなんだが、自力でこの世界を切り開いて乗りこむつもりみたいだ。」

 癒が話している間にも、光弘の目の前の闇に光の筋が入り、徐々に傷口を広げていく。

 「癒。お前、俺に術だけかけさせて、一人で勝手に行くんじゃねーよ。俺たちも連れてけよな。」
 「勝、こんな時くらい集中しろ。危険だ。」
 「・・・・光弘。」

 人が一人通れるほどの高さに切り開かれたそこから現れたのは、真也、勝、都古の三人だった。
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