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ご苦労様、三毛 3
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蒼があえて弱弱しい結界を張っていることに、三毛は疑問を感じた。
だが、すぐに頭の中でその答えを導きだした。
三毛の小さな表情の変化からそのことを正しく読み取った蒼は、くすりと小さく笑い、口を開く。
「本当はもっと強烈な結界を張ってやってもいいんだけどね。これ以上強い結界を張れば妖気の流れを完全に遮ってしまう。黒にはよくないだろ。だからこれは・・・」
言いながら蒼は光弘の首筋に手をかけ、襟元に指を滑らせる。
先ほど光弘に預けた首飾りを胸元から引き出し、蒼はそっと手のひらに乗せた。
「光弘と癒に影響を与えない程度に、邪気をはらってやってるだけの護符なんだ。・・・・・・おぉ怖っ。癒、君は本当に短気なやつだな。お願いだから、噛みついたりしないで。それから、殺気をボクにぶつけるのもやめろ」
光弘に触れた蒼の指を食いちぎりそうな目で睨みつけている癒に、蒼は呆れて言った。
「ちょっと待って」
海神の後ろに隠れ、怯えた様子を演じている蒼に、光弘が慌てた様子で声をかける。
「この首飾りは、黒の傷に良くないものなんですか」
ゆっくりと海神の前に歩み出ながら、蒼は肩をすくめる。
「悪くはない。だけど、良いものでもない」
「それはどういう?」
「光弘。黒は妖鬼だ。人が療養する時に清らかな空気を好むように、妖鬼だってあたりまえに邪気を好む。その首飾りは邪気を払うものだ。・・・ボクの言いたいこと、わかるかな?」
束の間哀しそうに目を伏せていた光弘が、ふいに首飾りを外そうとした。
だが、初めからそうなることを確信していたのだろう。
光弘の手が紐に触れようとする寸前、海神が片手で包み込むようにしてその動きを止めしまった。
「いけない。言ったはずだ。君として生きられなくなる。黒を想うのならば、すべきことではない」
「でも!」
そう言って海神の手を振り払おうとした光弘の細い指先から見る間に力が抜け落ちていく。
冷淡な表情をたたえた海神だったが、その瞳は透き通るような哀しみに染まりきっていたのだ。
「言っておくが、黒の傷を気にしてここにくるのをやめる・・・なんて、そんなつまらない真似はするなよ。病は気から。こいつにとっての一番の痛み止めは、光弘。間違いなく、君だけなんだから。」
だが、すぐに頭の中でその答えを導きだした。
三毛の小さな表情の変化からそのことを正しく読み取った蒼は、くすりと小さく笑い、口を開く。
「本当はもっと強烈な結界を張ってやってもいいんだけどね。これ以上強い結界を張れば妖気の流れを完全に遮ってしまう。黒にはよくないだろ。だからこれは・・・」
言いながら蒼は光弘の首筋に手をかけ、襟元に指を滑らせる。
先ほど光弘に預けた首飾りを胸元から引き出し、蒼はそっと手のひらに乗せた。
「光弘と癒に影響を与えない程度に、邪気をはらってやってるだけの護符なんだ。・・・・・・おぉ怖っ。癒、君は本当に短気なやつだな。お願いだから、噛みついたりしないで。それから、殺気をボクにぶつけるのもやめろ」
光弘に触れた蒼の指を食いちぎりそうな目で睨みつけている癒に、蒼は呆れて言った。
「ちょっと待って」
海神の後ろに隠れ、怯えた様子を演じている蒼に、光弘が慌てた様子で声をかける。
「この首飾りは、黒の傷に良くないものなんですか」
ゆっくりと海神の前に歩み出ながら、蒼は肩をすくめる。
「悪くはない。だけど、良いものでもない」
「それはどういう?」
「光弘。黒は妖鬼だ。人が療養する時に清らかな空気を好むように、妖鬼だってあたりまえに邪気を好む。その首飾りは邪気を払うものだ。・・・ボクの言いたいこと、わかるかな?」
束の間哀しそうに目を伏せていた光弘が、ふいに首飾りを外そうとした。
だが、初めからそうなることを確信していたのだろう。
光弘の手が紐に触れようとする寸前、海神が片手で包み込むようにしてその動きを止めしまった。
「いけない。言ったはずだ。君として生きられなくなる。黒を想うのならば、すべきことではない」
「でも!」
そう言って海神の手を振り払おうとした光弘の細い指先から見る間に力が抜け落ちていく。
冷淡な表情をたたえた海神だったが、その瞳は透き通るような哀しみに染まりきっていたのだ。
「言っておくが、黒の傷を気にしてここにくるのをやめる・・・なんて、そんなつまらない真似はするなよ。病は気から。こいつにとっての一番の痛み止めは、光弘。間違いなく、君だけなんだから。」
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