双凶の妖鬼 蒼 ~再逢~

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【箸休め:番外編】龍粋 4

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 「きみは不器用な子だな。」

 「そう?あまり言われたことの無い言葉だけど。水妖の頭目であったあなたがいうのなら、そうなのかも。」

 「残念だけど。・・・ボクにそんな力は残されていないよ。」

 龍粋りゅうすいは力なく笑うと、ようやくくろの質問に答えることにした。

 「そうだね。もうボクには力も何もない。心残りであったあの可愛い海神わだつみも、とても幸せそうだ。」

 あれほど無防備に心を華やがせている海神わだつみを、龍粋りゅうすいは見たことがない。
 あおの妖鬼と海神わだつみの結びつきはこれ以上ないほど深いものなのだろう。

 嬉しさと寂しさという相反する感情が、たまらないほど龍粋りゅうすいの胸に迫る。

 少しの間をあけ、龍粋りゅうすいは続きを話しだした。

 「こうして、再び神妖界に光が満ちるまで、ここに想いを残していることができたのだ。このまま愛する者たちの生きる神妖界の大気になるというのは、悪くない考えだろう?」

 「・・・ねぇ。それはあなたの、本心?」

 穏やかな黒の問いかけに、龍粋りゅうすいは一つ深いため息をつき、諦めたように笑った。

 「本当は、転生を試みたんだ。だが駄目だった。私のこの穴だらけの魂では、もはや一つの命になることは出来ないのだよ。」

 その言葉を聞き、くろは形の良い目を細める。

 「・・・2つだけ、確認してもいい。」

 黒の声は先ほどより一段低く、重く沈んでいた。
 龍粋りゅうすいは落ち着いた様子で明るく答える。

 「どうぞ。」

 「一つ目は、あなたの精神と記憶のことだ。仮に転生できたとしても、今のあなたの残りだけでは、それがぎりぎりだ。記憶や心を残しておくことまではできない。」

 「ああ。理解している。」

 「二つ目。転生できるとしたら、神妖以外でも?」

 「大丈夫。ボクにそういったこだわりはないよ。」

 これは龍粋りゅうすいの本音であり、そういったこだわりは一切ない。
 命を輪廻の流れに乗せ、ただ素直にもう一度生きなおしてみたかったのだ。

 くろはわずかに顔を逸らし、暗く目をふせると沈み切った声で言葉を紡ぐ。

 「・・・妖鬼でも?」

 「……光栄だよ。とても。」

 以前と寸分変わらぬ柔らかな声でゆったりと答えた龍粋りゅうすいに、黒は目を見開いた。
 瞳の奥が戸惑い、揺らめいている。

 龍粋りゅうすいを死の底へと叩き落したのは、紛れもなく妖鬼の群れである。
 それを龍粋りゅうすいが憎悪していないわけはないと、くろは考えていたのだ。

 苦い笑みを浮かべ、黒は酷く大切そうに手の内の龍粋りゅうすいを包み込んだ。

 「それなら少しだけれど、あなたの力になることが出来そうだ。」

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