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出会い 2※ ☆挿絵は海神です
しおりを挟むようやく唇を離すと、青年は甘い吐息と共に、涙を溢した。
『名をよこせ。』
ボクは鬼術を使い、青年に強く命じた。
ボクの瞳が鋭く紅く光る。
「海神・・・・。」
身体をピクリとはねさせ、海神と名乗った青年は悔しそうに目を伏せる。
その伏せた長いまつげが頬に落とす影すら美しく、ボクの目に映った。
どこかで聞いたことがあるような名前だな・・・・・。
そんな風に思いながら、自分の記憶の引き出しに手をかけようとしたその時。
何かが近づいてくる気配を感じ、ボクはその方向へ意識を向けた。
もしかしたら、海神の異変を感じた誰かが駆けつけようとしているのかもしれない。
さっきボクが投げ捨てた刀といい、身なりといい・・・・かなり上の身分の者なのだろうか・・・・。
なんにせよ、ここにこうしていては面倒なことになりそうだ。
ボクは海神を横抱きに抱え、共に地へ堕ちた。
今になって思い返せば、考えればすぐにわかる事だったんだ。
完全に妖気を消して現れたボクの気配に気づき、これほどの美しさを手にしているものが、ただの神妖であるはずがないってことは・・・・・。
*************************
冥府にあるボクの家は、上空に浮く巨大な岩の塊の中にある。
干渉されるのは面倒だ。
だからどの街からも離れたこの場所を、ボクはすごく気に入っていた。
2千年ほど前。
当時の冥府に君臨していた奴らが住んでいたんだけど、挨拶ついでに追い出した。
その時から、ここはボクの快適な住まいだ。
・・・・・神妖を冥府に連れてくれば、鬼界の邪気に触れ、その魂を穢してしまいかねない。
ボクは海神を連れ込むと、すぐに強力な結界を張った。
とりあえずこの中であれば海神が穢れ堕ちることはない。
ボクは空いている客間の一つへ入り、海神をそこに降ろした。
海神は警戒に満ちた瞳をボクに向けている。
「汚したのは謝るよ。案内させるから、風呂を使っていってくれ。」
「・・・・・・。」
ボクの声に身体と精神を甘く揺さぶられ、海神は身をよじって耐えながら、小さく顎を背けた。
海神の瞳は、自身を軽蔑しているのか暗く落ち込んでいたが、そこに宿る強く美しい光は消えていない。
「海神・・・・。」
耳元でいたずらに名前を囁けば、海神は身体を震わせこちらにかみつきそうな険しい視線を送ってくる。
「はははっ。好きだよ、その顔。ねぇ・・・・・ボクを誘っているの?」
ボクの声に腰が砕けそうになるのを必死で耐えながら、海神は力なく殴りかかってきた。
拳をスッとかわし、後ろに回り込んだボクは、海神を抱きしめると首筋から耳元へ・・・優しく食むように口づけを始めた。
「ぁっ・・・・」
艶めかしい鳴き声を聞かせる海神に、身体がたまらないほどに痺れ、甘く疼く。
ボクは強く目を閉じ海神を離した。
なんて声で鳴くんだ・・・・これじゃボクの方がもたないじゃないか。
ボクは指を鳴らし、従者の鬼を呼んだ。
海神を案内するよう指示し、部屋を出る。
甘いな・・・・・。
静かに扉を閉めながら、ボクは小さく息を吐き、余韻を楽しんだ。
**************************
入浴を終えた海神が部屋へ戻ったという知らせを受け、ボクはすぐに彼の元へ向かった。
こんなに心が躍るのは久しぶりだ。
部屋に入ると、湯上りで顔を上気させた海神が、相変わらず険しい瞳をボクにむけてくる。
青い衣を身にまとった姿は、匂い立つような色気に包まれていた。
「お前、私をどうするつもりだ。私は暇ではない。殺すつもりがないのなら、早く海へ帰せ。」
ボクをにらみつけてくる美しい顔に、嗜虐心がかきたてられる。
ボクは笑った。
「好きだなぁ。さっき言ったのに・・・・・。君、本当にボクを誘っているわけじゃないよね?」
ボクは片手で海神の首を絞めつけ持ち上げた。
そのままベッドの上に叩きつけるように押し倒し、衣をはだけさせて乱暴に呪印に口づける。
「っ・・・!やめろ!」
ボクは呪印に口づけたまま、海神の両手足を拘束した。
淡く青色に光る4つの枷が現れ、手足にはまり動きを奪う。
「それ以上ボクを煽るな。・・・・・抱くぞ。」
その言葉に、海神は身を震わせ目を見開くと、首を横に振った。
動けずにいる海神を見下ろし、呪印から首筋に・・・・そして顔を背けている海神の唇に優しく口づけを落とす。
何も声にしていないのに、海神の息がなぜか甘やかに高く上がり始めた。
「ねぇ。ボク今、君に話しかけていなかったんだけど?」
ボクはそう言って苦笑しながら、衣ごしに興奮で高なっている彼の高まりに触れた。
海神は悔しそうに目をそらす。
ボクは海神の耳元へ話しかける。
「ごめん。そんな顔をさせたくて言ったわけじゃないんだ。君はそうして、ボクに思い切り抵抗していればいい。」
ボクが長く台詞を続けるほど、海神は眉間に皺をよせ、切なさを乗せた表情で瞳をうるませる。
海神のかすかな吐息は、すぐに切ないほどに甘く高く溶け始め、顎を上げ小さく身体をのけぞらせた。
「君、どうして突然切りかかってきたりしたんだ。ボク、君に何かしたのかなぁ。」
「っ・・・・私は・・・海の、守り神だ。お前のような・・・強大な穢れを・・・野放しになどできない。」
ボクの問う声に、切なく身をよじりながら、海神は吐息まじりに答えた。
ふーん・・・・・。
てことはやっぱり、黄色の奴が絡んでるってわけじゃないのか。
ボクは海神の隣に横になり、肘をついて彼の美しい顔を見つめた。
そのまま海神の上に覆いかぶさるように身体を起こすと、いたずらな子供のように胸を弾ませながら、彼を組み敷いた。
「君、ボクのこと知らないで襲ってきたんだ。・・・ちゃんとした名前はないけど、自己紹介ならできる。こんな目にあわされてるんだ。知りたいだろう?ボクのこと・・・・・・。」
「・・・・・っ。」
言葉とともに激流となって流れ込んでくる甘美な痺れに、海神は熱を逃がすように甘い声と吐息を必死で吐き出しながら、涙をあふれさせた。
ボクは彼の白く滑らかな頬にながれる、絹糸のような髪をかき上げ耳にかけると、耳元へ口を寄せる。
「ボクは双凶の妖鬼。・・・・・蒼だ。」
海神が驚愕の表情をみせ、目を見開いた。
ボクはその薄く開いた口に唇を重ね、激しく中を蹂躙した。
強引な舌の動きと真逆に、手のひらと指で優しく、首筋を・・・呪印を愛撫する。
そのまま滑らかな動きで手を腰の辺りまで降ろし、ボクは海神から唇を離した。
辛そうだな・・・・・・。
限界を超えて堪えている海神は、ほとんど自我を手放しかけていた。
そんな乱れた顔にさえも、美しさを感じる。
「・・・・。もう・・・・・。」
「静かに・・・・・。聞いて。今からする事は、質問に答えてくれた君への、ボクからのご褒美だ。そのことを覚えておいて。」
「っ・・・・!」
ボクの口から流れ続ける言葉から刺激され、ついにこらえきれなくなった海神が、切ない喘ぎ声を上げた。
ボクは高く鳴くその声を妨げないよう、呪印を刻んだ首筋に強く吸い付いた。
腰に置いていた手を、堅くいきり立った海神の高鳴りへと伸ばす。
服をはだけ、むき出しになった熱の塊を、ボクは優しく強く愛撫し始めた。
「っ!・・・もう・・・・やめっ。」
『堪えるな、海神。』
ボクの瞳が鋭く紅く光る。
鬼術を使い、ボクは無理矢理に海神の心のたがを外した。
拘束していた手足の枷を外すと同時に、海神がきつく身体に抱きつき、背中に爪を立ててくる。
ボクの手の中で、海神の熱が更に硬さを増し脈動する。
彼の腰の揺れが大きくなるのに合わせて、ボクもその律動的な動きを徐々に早く激しくしていった。
ボクの手の内に、より深く自身を沈めようと、無意識に身を捩らせている海神が、たまらなく愛おしい。
先端の敏感な部分を何度もこすりあげ、海神の身体から力が抜け落ちそうになったところを一気にしごきあげてやると、海神はつま先をピンとはりつめさせ、ボクの手の内で熱を放った。
かすれるような高い喘ぎ声を響かせ何度も身体を震わせながら、海神はボクにしがみついてくる。
くそっ・・・・たまらない。
ボクは胸にこみあげてくる途方もない愛おしさに戸惑いを覚えながら、海神の頭をきつく胸に抱いた。
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