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第七部 革命編
シリアスクラッシャー・パック(上)
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「いえ、そういうわけでは。ご無礼をお許しください、閣下」
反論しても無意味なので頭を下げて場を収めると、ドミニオンは満更でもない笑みを刻んだのち鼻を鳴らす。
「ふん、まあいい。それよりも、お前たちに朗報を届けに来たぞ」
「朗報、でございますか」
「ああ。これまでお前たちが逃し続けていた賊のアジトを見つけ、根こそぎ捕縛することに成功した――私直属の優秀な部下たちがな」
「な……!」
騎士団でも最初の襲撃があってからというもの、多数の人員を割いて賊の捜索を行っていたが、一向に手掛かりが掴めなかった。だというのに、これまでそんな動き一つ見せていなかった軍部が急に大手柄を上げたなど、にわかには信じられない。
しかし、いくら目の上のたんこぶである騎士団をやり込めたいからといって、すぐばれる嘘をつくほど阿呆ではないはずだ。
何か裏があるに違いないと疑いつつも、それを隠して対応する。
「それは……確かに朗報でございますね。さすがは、英雄であらせられるエーゼル閣下の薫陶を直接賜った精鋭方です。さぞ陛下もお喜びでしょう」
「ああ、フレデリックは彼らの手並みにいたく感激し、これまで軍部を過小評価していたことを謝罪してくれた。喜ばしいことだ。反対に、お前たちにはひどく絶望したと言っていたがね。こんなに無能な連中を今までどうして信じていたのかと、己の愚かさを心底恥じている様子だった」
部下たちが失態を重ね続けた事実がある以上、何を言われてもハワードは反論できる立場にはないが、これまで命がけで賊を撃退し近衛の役目を果たしてきたのもまた事実。
あからさまに騎士を愚弄する発言に、はらわたが煮えくり返る思いだったが、それがフレデリック本人の言葉であろうとなかろうと、ここで下手に声を荒げれば騎士としての品位を貶めるだけだ。
見た目より脳筋ではないハワードはしっかり己を律し、「お恥ずかしい限りです、返す言葉もございません」と一歩も二歩も引いた姿勢を取る。
それを面白くなさそうに一瞥しつつも、ドミニオンは皮肉げに口角を上げた。
「謙虚さは騎士らしい美徳だが、それだけでは何も守れないぞ。武人にとって力こそが己を証明するすべてであり、力なき者が正義を振りかざしたところで誰もついてこない。肝に銘じておけ」
それだけ言い残すと、ドミニオンはわざとらしくバサリと音を立ててマントを翻し、美貌の取り巻きを引き連れ颯爽とした足取りで執務室を去っていった。
その意味ありげな台詞の意味の裏を探ろうとしたが……数分と経たないうちに現れた珍客のせいで、思考がブツリと途切れた。
「ねぇ、ハワード! いきなりで悪いけど、ちょっと脱いで!」
「ぶっ……!」
断りもノックもなく戸を開けて侵入してきたのは、スケッチブックと筆箱を小脇に抱えたパックだった。
キラキラとした瞳で爆弾発言を投下してくる第一王子に、ハワードは速攻でブチ切れた。
「何アホなこと言ってるんですか、パトリック殿下! 男同士でもセクハラは成立するんですよ!?」
「えー、セクハラじゃないよ。芸術だよ、芸術。今無性に筋肉が描きたいんだ。ムッキムキでバッキバキな筋肉の塊を。だからハワードに、ぜひともモデルになってほしいんだよねー?」
「じゃあ俺じゃなくてもいいでしょう! 鍛錬所に行けば上半身裸の男は山ほどいますから、そっちを勝手に観察して描いてください!」
「それじゃ困るんだよね。今俺が描きたいのは、大胸筋でも三角筋でも上腕二頭筋でも腹筋でも僧帽筋でもなくて、大腿四頭筋なんだよね」
「ピンポイントすぎる! なんでよりによって、スボン脱がなきゃならない場所ですか!?」
反論しても無意味なので頭を下げて場を収めると、ドミニオンは満更でもない笑みを刻んだのち鼻を鳴らす。
「ふん、まあいい。それよりも、お前たちに朗報を届けに来たぞ」
「朗報、でございますか」
「ああ。これまでお前たちが逃し続けていた賊のアジトを見つけ、根こそぎ捕縛することに成功した――私直属の優秀な部下たちがな」
「な……!」
騎士団でも最初の襲撃があってからというもの、多数の人員を割いて賊の捜索を行っていたが、一向に手掛かりが掴めなかった。だというのに、これまでそんな動き一つ見せていなかった軍部が急に大手柄を上げたなど、にわかには信じられない。
しかし、いくら目の上のたんこぶである騎士団をやり込めたいからといって、すぐばれる嘘をつくほど阿呆ではないはずだ。
何か裏があるに違いないと疑いつつも、それを隠して対応する。
「それは……確かに朗報でございますね。さすがは、英雄であらせられるエーゼル閣下の薫陶を直接賜った精鋭方です。さぞ陛下もお喜びでしょう」
「ああ、フレデリックは彼らの手並みにいたく感激し、これまで軍部を過小評価していたことを謝罪してくれた。喜ばしいことだ。反対に、お前たちにはひどく絶望したと言っていたがね。こんなに無能な連中を今までどうして信じていたのかと、己の愚かさを心底恥じている様子だった」
部下たちが失態を重ね続けた事実がある以上、何を言われてもハワードは反論できる立場にはないが、これまで命がけで賊を撃退し近衛の役目を果たしてきたのもまた事実。
あからさまに騎士を愚弄する発言に、はらわたが煮えくり返る思いだったが、それがフレデリック本人の言葉であろうとなかろうと、ここで下手に声を荒げれば騎士としての品位を貶めるだけだ。
見た目より脳筋ではないハワードはしっかり己を律し、「お恥ずかしい限りです、返す言葉もございません」と一歩も二歩も引いた姿勢を取る。
それを面白くなさそうに一瞥しつつも、ドミニオンは皮肉げに口角を上げた。
「謙虚さは騎士らしい美徳だが、それだけでは何も守れないぞ。武人にとって力こそが己を証明するすべてであり、力なき者が正義を振りかざしたところで誰もついてこない。肝に銘じておけ」
それだけ言い残すと、ドミニオンはわざとらしくバサリと音を立ててマントを翻し、美貌の取り巻きを引き連れ颯爽とした足取りで執務室を去っていった。
その意味ありげな台詞の意味の裏を探ろうとしたが……数分と経たないうちに現れた珍客のせいで、思考がブツリと途切れた。
「ねぇ、ハワード! いきなりで悪いけど、ちょっと脱いで!」
「ぶっ……!」
断りもノックもなく戸を開けて侵入してきたのは、スケッチブックと筆箱を小脇に抱えたパックだった。
キラキラとした瞳で爆弾発言を投下してくる第一王子に、ハワードは速攻でブチ切れた。
「何アホなこと言ってるんですか、パトリック殿下! 男同士でもセクハラは成立するんですよ!?」
「えー、セクハラじゃないよ。芸術だよ、芸術。今無性に筋肉が描きたいんだ。ムッキムキでバッキバキな筋肉の塊を。だからハワードに、ぜひともモデルになってほしいんだよねー?」
「じゃあ俺じゃなくてもいいでしょう! 鍛錬所に行けば上半身裸の男は山ほどいますから、そっちを勝手に観察して描いてください!」
「それじゃ困るんだよね。今俺が描きたいのは、大胸筋でも三角筋でも上腕二頭筋でも腹筋でも僧帽筋でもなくて、大腿四頭筋なんだよね」
「ピンポイントすぎる! なんでよりによって、スボン脱がなきゃならない場所ですか!?」
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