ブサ猫令嬢物語 大阪のオバチャン(ウチ)が悪役令嬢やって? なんでやねん!

神無月りく

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第六部 ざまぁ編

プレゼントの真意③

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「ジゼル様、こちらの箱にお手紙が入っていました」

 普段なら物だけが来るのに、今日に限ってはメッセージ付きだったようだ。
 これまでとは異なる志向にますます首をひねりつつ、受け取った手紙の封を開けて中を確認すると……お決まりの時候の挨拶から始まり、秋の終わりに送った刺繍入りハンカチについてのお礼が述べられたのち、今回の贈り物について触れられていた。

 ――近日王宮にて開かれる春の舞踏会に、わたくしも参加します。

 ぶしつけなお願いで恐縮ですが、再びわたくしと踊っていただけるなら、この度贈りました衣裳一式をお召しになってご参加ください。
 反対に、もしもこれ以上わたくしとの関係を続けたくないのであれば、ご自身でご用意された衣装でお越しください。潔く身を引きます。

 ……突然このような形で究極の選択を迫る無礼を、どうぞお許しください。
 本当はもっとゆっくりあなたとの距離を縮めたかったのですが、こちらの事情で早急に伴侶を選ばねばならない状況になり、このままでは親の決めた女性と婚姻を結ぶことになりそうなのです。

 こう書くと不本意な結婚から逃げるため、あなたを利用しようとする賢しい男のようですが、わたくしは本気であなたと結婚したいと考えておりますし、あなた以外の女性と結ばれるつもりも毛頭ありません。
 しかし残念なことに、わたくしは家の束縛からは逃れられない身で、衆目の前であなたとの関係を公表することでしか、親の決定を覆す術を思いつきませんでした。

 色のいいお返事を期待していますが、決して無理強いするつもりはなく、あなたの下したご決断を尊重します――

「えええ……マジか……」

 最後まで読み終え、ジゼルは途方に暮れて天井を仰いだ。
 このドレスを着ていけば、十中八九ハーミットの伴侶確定コースである。プレゼントのやり取りはしていたとはいえ、素顔での交流がない状態で一足飛びに結婚とか、恋愛経験皆無の彼女には理解が追いつかない。

 かといって書かれたお願いを無視すれば、ハーミットは親の都合で他の令嬢と結婚し、宣言通り二度と関わることはないだろう。ジゼルからすれば正体不明のままだから、今後社交界で会ってもきっと気づかない。
 仮に時効だからと素性を教えてもらったとしても、こちらから接触するのは無作法だ。自分から振ったくせに、どの面下げて会えるというのか。

 そう思うと、これっきりというのは寂しいというか、そんなことで終わらせるのはもったいないというか、彼を逃せば求婚してくれる男性はいないという、悲しい現実と直面することになる。
 ハーミットとの関係を暴露することで悪目立ちするのは必至だが、アーメンガートは意中の相手と結ばれているし、陰でハーレムを狙っているのだとしても、今作には隠しキャラはいなかったはずだから妬まれることはないはず。

 ひとつひとつ不安要素を潰していきながらも、結局当日まで悩みまくっていたジゼルだった。

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