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第二部
マリアンナの助言
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彼女たちのくだらないようで微笑ましいやり取りを眺めつつ、出されたお菓子を堪能する。
マリアンナが手ずから用意しただろうそれらは、どれも美味しかった。甘すぎず、くどすぎず、いくらでも食べてしまえそうだった。
そのせいか、ディルクは話そっちのけで子供みたいな顔でお菓子を頬張り、マリアンナに呆れられていた。
「こ、これがドラゴンなの……?」
「あはは……」
主であるオフィーリアは笑うしかない。
「ふん、こんなドラゴンを使い魔にしなくて正解ね。意地汚い男は趣味じゃないの」
「なんだと――ぐむっ」
反論しようとした口を塞ぐつもりはなかったが、生クリームがついたままでは格好悪いので、有無を言わさず横からナプキンで拭き取った。
「あはは、あんたたち仲がいいんだね。夫婦みたいじゃないか」
カラカラと笑いながら爆弾発言を投下するエイミーに、オフィーリアは真っ赤になって縮こまる。それに追い打ちをかけるように、マリアンナが口を開いた。
「そういえば。あなた、そこのドラゴンに求婚されてたらしいじゃない?」
「おやおや! 美男美女でお似合いじゃないか!」
「そ、そう思うか?」
外堀から埋められていく感覚に、ただただ赤い顔のまま押し黙るしかなかった。
異性として意識する機会も増えたし、彼が女性の熱視線を受けていれば嫉妬もするし、今抱いている好感が恋愛感情であることも自覚している。いつまでも魔女と使い魔という関係に甘んじることなく、彼の気持ちを受け入れるべきだとも思っている。
でも、その一歩を踏み出すことができないでいる。
自分の中で育った感情も、ディルクが向けてくれる愛情も、間違いなく本物だと分かっているのに、冷静かつ意気地なしの部分から制止がかかる。
――自分では、永遠にディルクの傍にいられない。
魔女の寿命が長いとはいえ、確実に彼よりも早く死ぬ。
自分の死後も彼は生き続け、いずれ別の女性と所帯を持つだろう。そんな様子を想像するだけでつらくなり、嫉妬に狂いそうだ。
だから、このふわふわとしたどっちつかずのままでいるのが、一番心地いい。
逃げだと分かっていても、醜い感情を暴かれるよりよっぽどマシだった。
*****
それからひとしきりエイミーに二人の関係をいじられ、お茶もお菓子もなくなり、お茶会自体はお開きになった。
「ねぇ、帰る前にちょっと散歩に付き合って。あ、そこのドラゴンはいらないから」
とマリアンナに言われてオフィーリアは強引に外に連れ出され、強制留守番させられたディルクは、エイミーの使い魔たちと一緒に皿洗いに勤しむことになった。
しばらく無言で家の周りを歩いていたマリアンナだったが、やがてふと立ち止まり、ポケットの中から銀貨を掴んでジャラジャラと手渡した。
「代金、忘れないうちに渡しとくわ」
「あ、どうも……」
ディルクがいる手前、昔のように踏み倒されることはないと思っていたが、こんなところで渡されるとは予想もつかず財布を持っていない。
念のため数を数えたのち、仕方なくポケットに仕舞う。
「……はっきり言って、あなたに謝る気はないわ。被害者はわたくしの方だもの。でも、今日来てくれたことには……まあ、感謝してあげてもいいわ。来てくれるとは思わなかったから……」
ふてぶてしさを装っているが、気まずさや嬉しさをごまかしているのだろう。少し口元が緩んでいる。
オフィーリアとしては謝罪が欲しいわけでもないし、何かのはずみで罵倒されることも覚悟していたから、彼女がまともに接してくれるだけで十分だった。
「少し悩んだけど、そう言ってくれたら来た甲斐があったわ。初めて食べたけど、マリアンナのお菓子は噂通りとっても美味しかったし」
「ふん、褒めてもお土産は出さないわよ」
照れた顔を隠すようにそっぽを向き、また少し無言で歩く。
「あなたは……あのドラゴンと結婚するの?」
徐々に橙色に染まっていく空を見上げ、マリアンナは静かに問いかける。
まるでさっきの胸中を見透かされたような気がしてドキリとするが、なんでもない風を装って首を傾げつつ答えた。
「うーん……どうかな」
「でも、好きなのよね? 見ていれば分かるわ。バレバレよ」
曖昧に濁したのに、マリアンナは意地悪そうな笑顔で追及してくる。
「まあ、異種族婚だし? すぐに踏ん切りがつかないのは仕方ないとしても、結婚してもしなくても後悔するのは一緒なんだから、自分の気持ちに正直になる方が楽じゃない?」
「それは分かってるけど……」
「うじうじ悩むのは勝手だけど、男の口先と下半身は別物よ。こういうのってスピードが命なんだから」
実体験からくる言葉は重い。
ディルクに限ってそんなことはないはずだが、もしもそんなことになったら……平静どころか正気を保てる自信すらない。
やっぱり素直に気持ちを伝えた方がいいのだろうか。まだしぶとく踏みとどまろうとする自分がいるが、最悪の未来だけは回避しなくてはと警告を鳴らす自分もいる。
思わず立ち止まってうつむく妹を眺め、マリアンナは呆れたため息をついた。
「そんな顔するくらいなら、さっさと告白した方が身のためよ」
まったくもって正論だ。
いざ言葉にしようとすると別のためらいも生じるが、それでも気持ちの上では区切りがついた。やはり来たのは正解だった。
「ありがとう、マリアンナ」
「ふん、時すでに遅しって可能性もあるけどね」
冗談だと分かっていても嫌な想像が頭をよぎり思わず身震いしてしまうが、決意を固めた早々くじけるわけにはいかない。
散歩から戻ると、玄関先で上着や手荷物を抱えたディルクが待っていた。
告白する決心をしたせいか、彼の姿を見るだけでつい身構えてしまう。
「なんだか顔が強張ってるが、マリアンナにおかしなことを言われたのか?」
「う、ううん。そんなことないわ」
気遣うように問うディルクに笑ってごまかし、町の入り口までエイミーとマリアンナに送ってもらった。
四人そろって煌々と常夜灯が照らす道を歩きながら、ふと気になったことを口にした。
「……ところで、マリアンナはいつウォードに戻ってくるの?」
「戻るつもりはないわ。あそこは田舎臭いでしょ? わたくしには、こういう都会風の町が性に合ってるのよ。まあ、わたくしがいなくなってお母さんも寂しがってるだろうし、たまに里帰りはしてもいいけど?」
気まずいから帰りたくないという気持ちもあるのかもしれないが、きっとエイミーと離れたくないのだろう。
周りからチヤホヤされ、母から箱入り娘として育てられてきたマリアンナにとって、エイミーは気兼ねなく本音をぶつけられる相手だし、意外と心安らぐのかもしれない。
「お世話になりました」
「暗くなるし、気をつけて帰るんだよ」
「心配ない。ドラゴンは猫より夜目が効くからな」
別れの挨拶を交わし、ドラゴンに転じたディルクに乗ってトーレをあとにする。
マリアンナが手ずから用意しただろうそれらは、どれも美味しかった。甘すぎず、くどすぎず、いくらでも食べてしまえそうだった。
そのせいか、ディルクは話そっちのけで子供みたいな顔でお菓子を頬張り、マリアンナに呆れられていた。
「こ、これがドラゴンなの……?」
「あはは……」
主であるオフィーリアは笑うしかない。
「ふん、こんなドラゴンを使い魔にしなくて正解ね。意地汚い男は趣味じゃないの」
「なんだと――ぐむっ」
反論しようとした口を塞ぐつもりはなかったが、生クリームがついたままでは格好悪いので、有無を言わさず横からナプキンで拭き取った。
「あはは、あんたたち仲がいいんだね。夫婦みたいじゃないか」
カラカラと笑いながら爆弾発言を投下するエイミーに、オフィーリアは真っ赤になって縮こまる。それに追い打ちをかけるように、マリアンナが口を開いた。
「そういえば。あなた、そこのドラゴンに求婚されてたらしいじゃない?」
「おやおや! 美男美女でお似合いじゃないか!」
「そ、そう思うか?」
外堀から埋められていく感覚に、ただただ赤い顔のまま押し黙るしかなかった。
異性として意識する機会も増えたし、彼が女性の熱視線を受けていれば嫉妬もするし、今抱いている好感が恋愛感情であることも自覚している。いつまでも魔女と使い魔という関係に甘んじることなく、彼の気持ちを受け入れるべきだとも思っている。
でも、その一歩を踏み出すことができないでいる。
自分の中で育った感情も、ディルクが向けてくれる愛情も、間違いなく本物だと分かっているのに、冷静かつ意気地なしの部分から制止がかかる。
――自分では、永遠にディルクの傍にいられない。
魔女の寿命が長いとはいえ、確実に彼よりも早く死ぬ。
自分の死後も彼は生き続け、いずれ別の女性と所帯を持つだろう。そんな様子を想像するだけでつらくなり、嫉妬に狂いそうだ。
だから、このふわふわとしたどっちつかずのままでいるのが、一番心地いい。
逃げだと分かっていても、醜い感情を暴かれるよりよっぽどマシだった。
*****
それからひとしきりエイミーに二人の関係をいじられ、お茶もお菓子もなくなり、お茶会自体はお開きになった。
「ねぇ、帰る前にちょっと散歩に付き合って。あ、そこのドラゴンはいらないから」
とマリアンナに言われてオフィーリアは強引に外に連れ出され、強制留守番させられたディルクは、エイミーの使い魔たちと一緒に皿洗いに勤しむことになった。
しばらく無言で家の周りを歩いていたマリアンナだったが、やがてふと立ち止まり、ポケットの中から銀貨を掴んでジャラジャラと手渡した。
「代金、忘れないうちに渡しとくわ」
「あ、どうも……」
ディルクがいる手前、昔のように踏み倒されることはないと思っていたが、こんなところで渡されるとは予想もつかず財布を持っていない。
念のため数を数えたのち、仕方なくポケットに仕舞う。
「……はっきり言って、あなたに謝る気はないわ。被害者はわたくしの方だもの。でも、今日来てくれたことには……まあ、感謝してあげてもいいわ。来てくれるとは思わなかったから……」
ふてぶてしさを装っているが、気まずさや嬉しさをごまかしているのだろう。少し口元が緩んでいる。
オフィーリアとしては謝罪が欲しいわけでもないし、何かのはずみで罵倒されることも覚悟していたから、彼女がまともに接してくれるだけで十分だった。
「少し悩んだけど、そう言ってくれたら来た甲斐があったわ。初めて食べたけど、マリアンナのお菓子は噂通りとっても美味しかったし」
「ふん、褒めてもお土産は出さないわよ」
照れた顔を隠すようにそっぽを向き、また少し無言で歩く。
「あなたは……あのドラゴンと結婚するの?」
徐々に橙色に染まっていく空を見上げ、マリアンナは静かに問いかける。
まるでさっきの胸中を見透かされたような気がしてドキリとするが、なんでもない風を装って首を傾げつつ答えた。
「うーん……どうかな」
「でも、好きなのよね? 見ていれば分かるわ。バレバレよ」
曖昧に濁したのに、マリアンナは意地悪そうな笑顔で追及してくる。
「まあ、異種族婚だし? すぐに踏ん切りがつかないのは仕方ないとしても、結婚してもしなくても後悔するのは一緒なんだから、自分の気持ちに正直になる方が楽じゃない?」
「それは分かってるけど……」
「うじうじ悩むのは勝手だけど、男の口先と下半身は別物よ。こういうのってスピードが命なんだから」
実体験からくる言葉は重い。
ディルクに限ってそんなことはないはずだが、もしもそんなことになったら……平静どころか正気を保てる自信すらない。
やっぱり素直に気持ちを伝えた方がいいのだろうか。まだしぶとく踏みとどまろうとする自分がいるが、最悪の未来だけは回避しなくてはと警告を鳴らす自分もいる。
思わず立ち止まってうつむく妹を眺め、マリアンナは呆れたため息をついた。
「そんな顔するくらいなら、さっさと告白した方が身のためよ」
まったくもって正論だ。
いざ言葉にしようとすると別のためらいも生じるが、それでも気持ちの上では区切りがついた。やはり来たのは正解だった。
「ありがとう、マリアンナ」
「ふん、時すでに遅しって可能性もあるけどね」
冗談だと分かっていても嫌な想像が頭をよぎり思わず身震いしてしまうが、決意を固めた早々くじけるわけにはいかない。
散歩から戻ると、玄関先で上着や手荷物を抱えたディルクが待っていた。
告白する決心をしたせいか、彼の姿を見るだけでつい身構えてしまう。
「なんだか顔が強張ってるが、マリアンナにおかしなことを言われたのか?」
「う、ううん。そんなことないわ」
気遣うように問うディルクに笑ってごまかし、町の入り口までエイミーとマリアンナに送ってもらった。
四人そろって煌々と常夜灯が照らす道を歩きながら、ふと気になったことを口にした。
「……ところで、マリアンナはいつウォードに戻ってくるの?」
「戻るつもりはないわ。あそこは田舎臭いでしょ? わたくしには、こういう都会風の町が性に合ってるのよ。まあ、わたくしがいなくなってお母さんも寂しがってるだろうし、たまに里帰りはしてもいいけど?」
気まずいから帰りたくないという気持ちもあるのかもしれないが、きっとエイミーと離れたくないのだろう。
周りからチヤホヤされ、母から箱入り娘として育てられてきたマリアンナにとって、エイミーは気兼ねなく本音をぶつけられる相手だし、意外と心安らぐのかもしれない。
「お世話になりました」
「暗くなるし、気をつけて帰るんだよ」
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