殺人鬼（サイコパス）との鬼ごっこ

2章

疲れ

「きゃ、きゃぁぁぁぁぁ！！」
「う、うわーーーっ！！」
「え、え、え！？」
　物陰から、三人がオオスズメバチに襲われている様子を見ていた人物がいた。
　オオスズメバチを放した、当の本人えいまだ。
　えいまは、にやりと口の端をあげるとその場を離れた。

！！！

　ガサガサ・・・。私達は、草むらの中を進んでいた。
　背丈の高い草ばかりで、私達の体は隠れている。
　これが意外とだめだったのかも知れない。えいまに見つけられにくくなったかも
　しれないが、逆に私達もえいまを見つけられなくなってしまった。
「あー、こっちのほうが早く抜け出せるかも」
「じゃあ、そっちでー」
　乃愛の返事がぎこちない。もう三人とも、へとへとだ。
　あのスズメバチから逃げ出した時、けっこうな体力を使ってしまった。
　ふわぁ・・・。眠くなってきた・・・。それに疲れちゃったなぁ。
　疲れのせいで、舞花のまぶたは重くなってきていた。風真・乃愛・舞花の列で、
　一番後ろに舞花がいるせいか、二人は、舞花の眠気に気づいていない。
　逃げること（草むらから出ること）に夢中になっているからだった。
「うぅ・・・。ちょっと、待ってー・・・」
　舞花の虫のような小さい声は、二人に届くことはなかった。