34 / 42
29
しおりを挟む
「おはよう、カイト兄上」
目が覚めるといつもどおり、リエルが俺の寝顔を見ていた。
ただ、俺の心はいつもどおりじゃない。
「お、おお、おはよう」
リエルに向けている感情が『恋』というのだと知って、心臓がバクバクしてる。
「ふふっ、どうしたの?何か恥ずかしい夢でも見た?顔が真っ赤だけど…」
身体が熱くなっているのは分かるが、顔が赤くなっているのか?…なんか余計に恥ずかしいな。
「そ、そうだ!恥ずかしい夢を見たのだ」
何で顔が真っ赤になっているのかバレないようにしなきゃと思ったら、声が大きくなってしまった。
「くすくすっ、そうなんだ。どんな夢だったの?」
ど、どんな夢?!おいおい、これ以上聞くなよ。なんて誤魔化そうか…
「誰かに恋する話だった…あっ」
はいアウトー!誤魔化すの下手かよ、俺は…そのワードから逃れる為に必死になって考えていたら、逆に出てきてしまった。何やってんだよ、俺。
「…ふーん。相手はどんな奴だった?」
お前そんな低い声出せたんだな…かっこいいかも?いや、いつものがいい。
…じゃなくって!相手か…さっきの失敗を活かして、心を落ち着かせる。
「確か、髪も目も真っ白だった」
よしっ、ちゃんと言えた。今度はリエルと真逆の特徴を言った。これで、勘づかれることはない!
「…へー、そうなんだ。ごめん、カイト兄上。ちょっと行かないといけないところがあるのを思い出したから、先に朝食にしてて」
そうか、少し寂しいけどしょうがない。というより、今まで一緒に食事できてたのがおかしいくらいリエルは忙しいからな…
「そうか、また後でな」
「うん、また後でね」
俺よりだいぶ起きるのが早いから、もう支度を済ませていたリエルは部屋から出て行った。
➖ー➖ー➖ー➖ー➖ー➖ー➖
〈リエル視点〉
カイト兄上と別れてから、私は自分の執務室に向かった。
コンコンコンッ
「入るぞ?」
そう言って入ると、もう既にベルンとバランが来ている。コイツら何時に来ているんだ、早過ぎだろと思うが、これが従者として普通らしい。それもいずれ変えたいところだ…ただ、今回は助かった。
「あれ、どうかされたのですか?この時間はカイト様と朝食ですよね」
そうだ、カイト兄上との食事を我慢して此方に来たのには訳があった。
「髪と目が白い者を全て殺してこい」
そう、カイト兄上が夢の中で恋をしたという者を今すぐ殺さなければならない。
なんなら、その者を連れてきてカイト兄上の前で殺すか?…いや、ダメだ。私の目標はカイト兄上と愛し合うことだ。無理やりするのは最後の手段にしたい。
「ちょっと、入ってくるなり物騒!何があったの?」
「カイト兄上が、ソイツに恋をしたらしい。許されない、そんなことは許されない」
「「…は?」」
2人してポカーンとしてる。そんな顔までそっくりだな…じゃなくて。
「アホな顔を2人して晒すな。そんな顔をしている暇があるなら、今すぐやってこい」
「いや、だって…ねえ?カイト様がソイツに恋?ほんとにカイト様本人がそんなこと言ったの?」
「正しくは少し違う。夢の中で恋をしたらしい。どちらにしろ許されない話だ」
「なるほど…そういうことでしたか。ただ、殺すにしてもリエル様。その髪と目が白い者など、この世に存在しませんよ」
…冷静になってみると、そうだ。そんな者存在していない。
「夢の中だから、そんな者がいたのか」
どうする、夢渡りするか?いや、またソイツが出るかも分からない。今度、その夢を見たと言ったら、カイト兄上の夢に渡って、ソイツを殺そう。
「うーん、多分そうかな?」
よしよし、それならまだいい。
今ならまだカイト兄上は朝食をとり終わる頃だろう。迎えに行こう。
今日のこの世界の平和は、ベルンとバランによって守られたのであった。
目が覚めるといつもどおり、リエルが俺の寝顔を見ていた。
ただ、俺の心はいつもどおりじゃない。
「お、おお、おはよう」
リエルに向けている感情が『恋』というのだと知って、心臓がバクバクしてる。
「ふふっ、どうしたの?何か恥ずかしい夢でも見た?顔が真っ赤だけど…」
身体が熱くなっているのは分かるが、顔が赤くなっているのか?…なんか余計に恥ずかしいな。
「そ、そうだ!恥ずかしい夢を見たのだ」
何で顔が真っ赤になっているのかバレないようにしなきゃと思ったら、声が大きくなってしまった。
「くすくすっ、そうなんだ。どんな夢だったの?」
ど、どんな夢?!おいおい、これ以上聞くなよ。なんて誤魔化そうか…
「誰かに恋する話だった…あっ」
はいアウトー!誤魔化すの下手かよ、俺は…そのワードから逃れる為に必死になって考えていたら、逆に出てきてしまった。何やってんだよ、俺。
「…ふーん。相手はどんな奴だった?」
お前そんな低い声出せたんだな…かっこいいかも?いや、いつものがいい。
…じゃなくって!相手か…さっきの失敗を活かして、心を落ち着かせる。
「確か、髪も目も真っ白だった」
よしっ、ちゃんと言えた。今度はリエルと真逆の特徴を言った。これで、勘づかれることはない!
「…へー、そうなんだ。ごめん、カイト兄上。ちょっと行かないといけないところがあるのを思い出したから、先に朝食にしてて」
そうか、少し寂しいけどしょうがない。というより、今まで一緒に食事できてたのがおかしいくらいリエルは忙しいからな…
「そうか、また後でな」
「うん、また後でね」
俺よりだいぶ起きるのが早いから、もう支度を済ませていたリエルは部屋から出て行った。
➖ー➖ー➖ー➖ー➖ー➖ー➖
〈リエル視点〉
カイト兄上と別れてから、私は自分の執務室に向かった。
コンコンコンッ
「入るぞ?」
そう言って入ると、もう既にベルンとバランが来ている。コイツら何時に来ているんだ、早過ぎだろと思うが、これが従者として普通らしい。それもいずれ変えたいところだ…ただ、今回は助かった。
「あれ、どうかされたのですか?この時間はカイト様と朝食ですよね」
そうだ、カイト兄上との食事を我慢して此方に来たのには訳があった。
「髪と目が白い者を全て殺してこい」
そう、カイト兄上が夢の中で恋をしたという者を今すぐ殺さなければならない。
なんなら、その者を連れてきてカイト兄上の前で殺すか?…いや、ダメだ。私の目標はカイト兄上と愛し合うことだ。無理やりするのは最後の手段にしたい。
「ちょっと、入ってくるなり物騒!何があったの?」
「カイト兄上が、ソイツに恋をしたらしい。許されない、そんなことは許されない」
「「…は?」」
2人してポカーンとしてる。そんな顔までそっくりだな…じゃなくて。
「アホな顔を2人して晒すな。そんな顔をしている暇があるなら、今すぐやってこい」
「いや、だって…ねえ?カイト様がソイツに恋?ほんとにカイト様本人がそんなこと言ったの?」
「正しくは少し違う。夢の中で恋をしたらしい。どちらにしろ許されない話だ」
「なるほど…そういうことでしたか。ただ、殺すにしてもリエル様。その髪と目が白い者など、この世に存在しませんよ」
…冷静になってみると、そうだ。そんな者存在していない。
「夢の中だから、そんな者がいたのか」
どうする、夢渡りするか?いや、またソイツが出るかも分からない。今度、その夢を見たと言ったら、カイト兄上の夢に渡って、ソイツを殺そう。
「うーん、多分そうかな?」
よしよし、それならまだいい。
今ならまだカイト兄上は朝食をとり終わる頃だろう。迎えに行こう。
今日のこの世界の平和は、ベルンとバランによって守られたのであった。
14
お気に入りに追加
544
あなたにおすすめの小説

悪辣と花煙り――悪役令嬢の従者が大嫌いな騎士様に喰われる話――
ロ
BL
「ずっと前から、おまえが好きなんだ」
と、俺を容赦なく犯している男は、互いに互いを嫌い合っている(筈の)騎士様で――――。
「悪役令嬢」に仕えている性悪で悪辣な従者が、「没落エンド」とやらを回避しようと、裏で暗躍していたら、大嫌いな騎士様に見つかってしまった。双方の利益のために手を組んだものの、嫌いなことに変わりはないので、うっかり煽ってやったら、何故かがっつり喰われてしまった話。
※ムーンライトノベルズでも公開しています(https://novel18.syosetu.com/n4448gl/)

俺は勇者のお友だち
むぎごはん
BL
俺は王都の隅にある宿屋でバイトをして暮らしている。たまに訪ねてきてくれる騎士のイゼルさんに会えることが、唯一の心の支えとなっている。
2年前、突然この世界に転移してきてしまった主人公が、頑張って生きていくお話。

【完結済み】準ヒロインに転生したビッチだけど出番終わったから好きにします。
mamaマリナ
BL
【完結済み、番外編投稿予定】
別れ話の途中で転生したこと思い出した。でも、シナリオの最後のシーンだからこれから好きにしていいよね。ビッチの本領発揮します。

兄のやり方には思うところがある!
野犬 猫兄
BL
完結しました。お読みくださりありがとうございます!
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!
第10回BL小説大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、そしてお読みくださった皆様、どうもありがとうございました!m(__)m
■■■
特訓と称して理不尽な行いをする兄に翻弄されながらも兄と向き合い仲良くなっていく話。
無関心ロボからの執着溺愛兄×無自覚人たらしな弟
コメディーです。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

姉が結婚式から逃げ出したので、身代わりにヤクザの嫁になりました
拓海のり
BL
芳原暖斗(はると)は学校の文化祭の都合で姉の結婚式に遅れた。会場に行ってみると姉も両親もいなくて相手の男が身代わりになれと言う。とても断れる雰囲気ではなくて結婚式を挙げた暖斗だったがそのまま男の家に引き摺られて──。
昔書いたお話です。殆んど直していません。やくざ、カップル続々がダメな方はブラウザバックお願いします。やおいファンタジーなので細かい事はお許しください。よろしくお願いします。
タイトルを変えてみました。

究極の雨男で疎まれていた俺ですが異世界では熱烈歓迎を受けています
まつぼっくり
BL
ずっとこの可笑しな体質が嫌だった。でも、いつかこの体質で救える命もあるんじゃないかと思っていた。
シリアスそうでシリアスではない
攻 異世界の虎さん✕ 受 究極の雨男
ムーンさんからの転載です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる