転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃

文字の大きさ
上 下
32 / 42

27

しおりを挟む
朝食も食べ終わり、よしっそれじゃ執務をしに行くかという流れになった。

「今日から頑張れよ、魔王様」

そう言って肩をトントンと叩いてやる。

リエルは魔王になって初めての執務だ。やることは特に変わらないけど、こなしていかないといけない量がとにかく増える。父上もなかなか一緒にいられる時間がとれなかったからな、こういう食事の時間も減るのかな…少し寂しいかもしれない。

「…どこに行くつもりなの?カイト兄上」

えっ、どこってそれは決まってるじゃないか。

「自分の執務室だが?」

何を当たり前なことを…

「カイト兄上は昨日ずっと私の隣にいるって言ってくれたよ?なら、行くところが違うんじゃない?」

あー、確かにそんなこと言ったな。だけど、それは心細いなら俺を頼れ的な意味で言ったつもりなんだけど…

「だけどお前は今日から魔王の執務室に行くんだ。そこは俺が入るべき所ではない」

俺は魔王の兄である。だからこそ、そこは俺が入るべき所ではない。

「それは誰が決めたの?私は私のやり方でやっていく。だから、私の隣にはカイト兄上が必要なんだ」

誰も…決めてはいないか。これも固定概念だよな。『魔王の執務室』だから、魔王とその側近が入るべきだと。確かに、俺が入ってはいけないとは誰も言っていない。

うーん、だけどな…と、うんうん唸っていた訳だが、次のリエルの言葉で自分がどうするべきかを決めた。

「もし、どうしてもカイト兄上が自分の執務室でやりたいというなら、不安で定期的に覗きに行くけど……いいの?」

よくない、よくない。そんなことをしたら、お前も俺も執務がちっとも進まないじゃないか。

「……お前の執務室でやる」

最近、本当に1人でいる時間がない。唯一の1人時間はトイレの時だけという、恐ろしさ。そんなに心配しなくても俺はどこでも行かないのにな…というか、行くところがない。



「ずっと私の隣にいてね?…カイト兄上」

やっぱり、父上がいなくなって寂しいんだろうな。俺よりお前の方がずっと長く父上と一緒にいたのだから…

「あぁ、もちろんだ…いられる限りな」

できることなら、ずっとリエルの隣で見守ってあげたい。だけど、そんなことできない…何故かって?魔族にも寿命があるからだ。


魔族の寿命は100年。この世界の人族は、医療が発達してない為、生きられたとしても50年くらいだろう。それに、魔族は特別身体が弱くない限り、滅多に病気にかからない。
だが、それよりももっと特別死なないのが魔王という存在だ。寿命というものがなくなり、勇者の剣で刺されない限り死なない。

だから、リエルが魔王としての役目を終えたときに、俺はとっくに死んでいるだろう。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

悪辣と花煙り――悪役令嬢の従者が大嫌いな騎士様に喰われる話――

BL
「ずっと前から、おまえが好きなんだ」 と、俺を容赦なく犯している男は、互いに互いを嫌い合っている(筈の)騎士様で――――。 「悪役令嬢」に仕えている性悪で悪辣な従者が、「没落エンド」とやらを回避しようと、裏で暗躍していたら、大嫌いな騎士様に見つかってしまった。双方の利益のために手を組んだものの、嫌いなことに変わりはないので、うっかり煽ってやったら、何故かがっつり喰われてしまった話。 ※ムーンライトノベルズでも公開しています(https://novel18.syosetu.com/n4448gl/)

俺は勇者のお友だち

むぎごはん
BL
俺は王都の隅にある宿屋でバイトをして暮らしている。たまに訪ねてきてくれる騎士のイゼルさんに会えることが、唯一の心の支えとなっている。 2年前、突然この世界に転移してきてしまった主人公が、頑張って生きていくお話。

【完結済み】準ヒロインに転生したビッチだけど出番終わったから好きにします。

mamaマリナ
BL
【完結済み、番外編投稿予定】  別れ話の途中で転生したこと思い出した。でも、シナリオの最後のシーンだからこれから好きにしていいよね。ビッチの本領発揮します。

兄のやり方には思うところがある!

野犬 猫兄
BL
完結しました。お読みくださりありがとうございます! 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 第10回BL小説大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、そしてお読みくださった皆様、どうもありがとうございました!m(__)m ■■■ 特訓と称して理不尽な行いをする兄に翻弄されながらも兄と向き合い仲良くなっていく話。 無関心ロボからの執着溺愛兄×無自覚人たらしな弟 コメディーです。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

イケメンの後輩にめちゃめちゃお願いされて、一回だけやってしまったら、大変なことになってしまった話

ゆなな
BL
タイトルどおり熱烈に年下に口説かれるお話。Twitterに載せていたものに加筆しました。Twitter→@yuna_org

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

処理中です...