転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃

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リエルとしばらく2人で執務をしていると疲れきった顔をしたベルンと今まで見たことないくらいのいい笑顔を浮かべたバランが帰ってきた。

「ただ今戻りました…」

「すみません、思ったよりも時間をとってしまいました」

いや、そんな笑顔で謝れてもね…まあ、別に俺はいいんだけどさ。

「別に大丈夫だ」

「なあ、バラン?私が我慢している間何をしてたんだ…そんなにツヤツヤな顔しやがって!」

あれ?リエルは何か怒ってるみたいだ。
だけど、時間が思ってたよりも遅かったことに怒ってるのではなく、顔がツヤツヤ?してることに怒ってるみたいだ。

「早くしろって言われたから最短で終わらせてきたんですが…あっ、そうですよね。手を出したくても、我慢しないといけないですもんね。……おかわいそうに」

何に手を出すのを我慢してるんだ?
てか、めっちゃ煽るね?!大丈夫なの?一応主従関係なんだよね…?

「ぐっ、クソがっ…今日は帰れないと思え」

俺の弟が『クソ』なんて言った?…まさかね?

「そんなに怒るほど我慢してるなら、手を出せばいいんじゃないか?」

一応提案というか当たり前のことを言ってみると、3人ともいい笑顔でこっちを見てきた。さっきまで死にそうな顔をしてたベルンまでもが。

「まあ、もう少しの我慢だから…」

此方を見るリエルの強い視線に思わずゾワッとした。

「そ、それならいいんだが」




コンコンコンッ

誰かのノック音がこの静かな部屋によく響いた。

「し、失礼致します」

「どうぞ」

入ってきたのはロイだった。俺の姿を捉えた途端に、パァッと笑顔になった…可愛い。

「全快されたのですね、カイト様。本当によかったです!」

俺もその笑顔を見れてよかったと、口から思わず出そうになったが…グッと堪えた。

「あぁ、本当によかった」

しばらく、ニコニコと見つめ合ってるとリエルが此方に歩み寄って来た。

「な、なんだ?」

こういう笑顔をしてるときのリエルが1番怖い。なぜなら…

俺の身体がふわっと持ち上がる。その犯人は言わずもがな、リエルだ。
だいたい、リエルが俺を構いたいと思ってるときだ。

「いいえ、別に何も?」

別に?とか言うなら、今すぐ俺から手を離せっ!と言いたいところだが、それを言うともっと大変なことになると分かっている。

この前は膝の上に乗せられるどころか、向かい合わせにさせられて、顔を固定されずーっと穴が開くほど顔を見られた。『おい、そろそろ手をどけろ』と言っても『んー』と生返事が返ってきたり『ふふっ、カイト兄上。恥ずかしいね?顔が赤くなってますよ』とか、余計に恥ずかしくなるようなことを言われた。

…俺は、2度と同じく失敗を繰り返さない。

「さあ、みんな座ってくれ。執務を始めよう!」

俺はお前の膝の上にな…しかも、強制的に。

なんだかんだで、いつもの日常に戻ったと感じ、ついつい笑みが溢れた。
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