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「失礼致します」
「どうぞ」
…えっ、ちょっま、まって。
「おい、リエル。まさかこのまま入るつもりか?」
俺はまだリエルに抱えられたままだ。父上もこの様子にだいぶ慣れてきただろうとは思うものの、さすがにこれで入室は失礼な気がする。…って思ってたんだが、何でお前は何言ってんの?みたいな不思議そうな顔で首を傾げて此方を見てるんだ。
「降ろしたらカイト兄上歩けないでしょ?きっと父上も分かってるよ」
確かに俺はまともには歩けないし、父上は優しいから許してくれるだろうけど…問題は父上の側近達だろう。話したことはないし、どんな人かは知らない。だけど、だからこそ礼儀知らずとかいう印象はつけられたくない…なんて、うんうん唸っていたのだが、リエルが痺れを切らした……ぬーん。
「入るからね、カイト兄上」
ところが、待ちうけていたのは厳しい視線ではなく優しい視線だった。まあ、流石に俺は怪我人だしな。
((((お2人が仲良しでなによりだ。今日も平和が保たれてる…))))
リエルが思っている視線とは少し違う視線だった。
「お久しぶりです、父上。目を覚まされて本当によかったです。」
リエルが挨拶をしている間、父上をじっと見ていた訳だが、また涙がこみ上げてきた。グッと何とか堪えられたが危なかった…
「ーー父上。本当に…本当によかった」
またこうやって3人で集まれた…勇者が現れたとき、父上が倒れたとき。やっぱり不安というか父上ともう会えないかもという思いが何度もよぎった…本当によかった。
「カイト、リエル。本当に迷惑をかけた。特にカイト…お前が私を助けようとしなかったら、私は此処にいなかった。本当にありがとう」
やっぱりこうやってお礼を言われると照れ臭いな。
「父上を助けられてよかったです」
普段無表情を貫いている俺でも頬がどうしても緩んでしまった。やっぱり偉大なる魔王様の父上にお礼を言われるのは嬉しい。
「…御歓談中のところ申し訳ございません。もうそろそろ休まれませんと…」
「いや、もう少しだ「ダメです」…」
父上が拗ねている顔をしている。きっと長い付き合いなんだろうな。そんな顔見たことなかった。
…さあ、そろそろお暇するか。父上は目覚めたとは言え、魔力がだいぶ減っている状況だ。なので、ベッドから起き上がることができない。
俺は治癒魔法の副作用のせいだから、明日には身体は自由になっていると思う。だが父上は、魔力がないせいで身体が動かない…ということは、動けるようになるのには1ヶ月くらいかかるだろうとリエルが言っていた。
「では、父上また明日」
「また来ますね、父上。」
俺たちには、また明日がある。それが当たり前ではなく、幸せなことであると改めて分かった。
「あぁ、またな……ちょっと待ってくれ」
お別れだとリエルが扉に向かって歩き出そうとしていたところ、父上に止められた。
「リエル、私たちはお前を応援することにした」
何のこと?って思ってると、父上の側近たちも首を縦に振った。どうやら、父上とその側近たちはリエルの何かを応援をしているらしい。
「本当ですか!」
リエルの目が輝き出した。何かよく分からないが、よかったな。
「あぁ、頑張れよ」
何かよく分からないが、頑張れよ。
「ありがとうございます!」
そこで俺たちは父上の寝室を退出した。
「どうぞ」
…えっ、ちょっま、まって。
「おい、リエル。まさかこのまま入るつもりか?」
俺はまだリエルに抱えられたままだ。父上もこの様子にだいぶ慣れてきただろうとは思うものの、さすがにこれで入室は失礼な気がする。…って思ってたんだが、何でお前は何言ってんの?みたいな不思議そうな顔で首を傾げて此方を見てるんだ。
「降ろしたらカイト兄上歩けないでしょ?きっと父上も分かってるよ」
確かに俺はまともには歩けないし、父上は優しいから許してくれるだろうけど…問題は父上の側近達だろう。話したことはないし、どんな人かは知らない。だけど、だからこそ礼儀知らずとかいう印象はつけられたくない…なんて、うんうん唸っていたのだが、リエルが痺れを切らした……ぬーん。
「入るからね、カイト兄上」
ところが、待ちうけていたのは厳しい視線ではなく優しい視線だった。まあ、流石に俺は怪我人だしな。
((((お2人が仲良しでなによりだ。今日も平和が保たれてる…))))
リエルが思っている視線とは少し違う視線だった。
「お久しぶりです、父上。目を覚まされて本当によかったです。」
リエルが挨拶をしている間、父上をじっと見ていた訳だが、また涙がこみ上げてきた。グッと何とか堪えられたが危なかった…
「ーー父上。本当に…本当によかった」
またこうやって3人で集まれた…勇者が現れたとき、父上が倒れたとき。やっぱり不安というか父上ともう会えないかもという思いが何度もよぎった…本当によかった。
「カイト、リエル。本当に迷惑をかけた。特にカイト…お前が私を助けようとしなかったら、私は此処にいなかった。本当にありがとう」
やっぱりこうやってお礼を言われると照れ臭いな。
「父上を助けられてよかったです」
普段無表情を貫いている俺でも頬がどうしても緩んでしまった。やっぱり偉大なる魔王様の父上にお礼を言われるのは嬉しい。
「…御歓談中のところ申し訳ございません。もうそろそろ休まれませんと…」
「いや、もう少しだ「ダメです」…」
父上が拗ねている顔をしている。きっと長い付き合いなんだろうな。そんな顔見たことなかった。
…さあ、そろそろお暇するか。父上は目覚めたとは言え、魔力がだいぶ減っている状況だ。なので、ベッドから起き上がることができない。
俺は治癒魔法の副作用のせいだから、明日には身体は自由になっていると思う。だが父上は、魔力がないせいで身体が動かない…ということは、動けるようになるのには1ヶ月くらいかかるだろうとリエルが言っていた。
「では、父上また明日」
「また来ますね、父上。」
俺たちには、また明日がある。それが当たり前ではなく、幸せなことであると改めて分かった。
「あぁ、またな……ちょっと待ってくれ」
お別れだとリエルが扉に向かって歩き出そうとしていたところ、父上に止められた。
「リエル、私たちはお前を応援することにした」
何のこと?って思ってると、父上の側近たちも首を縦に振った。どうやら、父上とその側近たちはリエルの何かを応援をしているらしい。
「本当ですか!」
リエルの目が輝き出した。何かよく分からないが、よかったな。
「あぁ、頑張れよ」
何かよく分からないが、頑張れよ。
「ありがとうございます!」
そこで俺たちは父上の寝室を退出した。
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