転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃

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やっと最近執務にも慣れて来たなって頃、父上から執務室に来るように言われた。

執務の関係で、父上の執務室に行くことも多かったから前みたいに緊張することもなくなってきた。すっかり、父上の従者の方たちとも仲良くなれた。


「失礼致します、カイトです」

「入ってくれ」

俺が執務するようになって、役に立ててるのか分からない。だけど、最近父上は時間を取れるようになって家族の時間が増えた。そのときに言わなかったということは大事な用事なのだろう。

「お疲れ様です、父上。どうされたのですか?」

前は1人でも全然大丈夫だよな。って、思ってたんだ。でも、今こうやって家族の温かさを知ってしまったからもう元の生活に戻ったら絶望だ。

「カイトも、ご苦労だったな。実は、お前も執務をするようになっただろう?リエルから聞いた話だと、だいぶ慣れてきたみたいだな。
それに、お前の執務室もやっと用意出来た。自分で執務するようになったら、1人だときっと大変だろう。だから、お前の従者を用意した。お前の執務室に書類を運ばせたから、もうじき帰ってくると思う」

わぁ、従者!まさか父上が探してくれるなんて…きっとサファイア宮殿のみんなみたいに良い人なんだろうな。

「ありがとうございます、父上!凄く嬉しいです」

どんな人かなー?これから一緒にいると思うし、仲良くなれるといいな。



コンコンコンッ。

「失礼致します、ロイです。書類を運び終わりました」

「入れ」

おっ、来たみたいだ。覚えやすくていい名前だな。



「カイト。今日よりお前の従者になる、ロイ・カガルバだ」

「ロイ・カガルバです。カイト様、これからよろしくお願い致します」

そうして、俺の前に現れたのは…見てて落ち着く感じの人だった。周りがとびきりの美形だらけのこの世界で、俺の目を癒してくれるだろう。こう言っちゃなんだが『THE・平凡』って感じだ。
 是非とも仲良くしたい!末長くよろしくしたい。

「まだ、不慣れなことばかりで困らせるかも知れない。よろしく頼む、ロイ」

にっこり微笑んで、握手をした。第一印象が大事だからな。


「ふむ、仲良くなれそうで良かった。では、下がっていいぞ。…あと、リエルに執務室を移動することを伝えてくれ」

やっぱ、父上から見てもそう思う?俺も仲良くなれそうな気がするんだ。というか、父上のことだからもうリエルには伝えてあるかと思ったんだけどな。

「本当にありがとうございます!リエルに伝えておきます。では、失礼致します」


➖ー➖ー➖ー➖ー➖ー➖ー➖

ただ今、リエルの執務室に向かっております。ロイと2人だから仲良くなれるチャンス!


「ロイはもともと何をしてたんだ?」

ぐるぐると悩んだ結果、考えた質問がこれだ。危うく魔界には太陽が無くて、ずっと夜なのに『今日もいい天気だな』とか言うところだったわ。

「僕はもともと文官を目指していました」

一人称、僕なのかわいいな。
文官かぁ、かっこいいよね。だけど、その夢俺のせいで叶わなくなったとかではないよね?だとしたらめっちゃ俺恨まれてそう。

「…何を考えてるのかなんとなく分かりますが、違いますよ。僕は自分から志願して貴方の従者になりました。見た目は儚げでありながら、1人でも強く生きようとする姿に憧れを抱いていました。
だから、こうして貴方に近づくことが出来て幸せです。これから、精一杯従者として頑張っていきます」

良かったー、嫌われてはないみたいだね。こんな俺を憧れるなんて変わった奴だな。だけど、プラスからのスタートと知れて良かった。

「そうか、そんな風に思ってくれてたなんてな…心強く思うよ」

正直に言おう。めっちゃくちゃ嬉しい!
カイトというキャラがあるから言えないけど、今すぐ抱きしめたいくらいに嬉しい。

「ふふっ、カイト様って意外と思ってることが顔に出やすいタイプなんですね」

げっ、仲良くなりたい一心で気を抜きすぎた。心地よいというのもある意味危険だな。

「今、気を抜きすぎたと思いました?」

当たってる…そんなに顔に出てるのか。それとも、ロイが顔で感情を読み取るのが得意なのか。

「カイト様、いいんですよ。僕は従者です。これからは、ほぼ毎日一緒にいることになるんです。ずっと力を入れてるのは疲れるでしょう。だから、僕の前では力を抜いてください」

うーん、いい子!さっきから、ぐんっぐんって好感度が上がり続けてる。この子は俺が守るし、大切にする!
なんだろうな、なんか好きっというより推しという感じがしっくりくる。

「あぁ、そうするよ」

笑いたいときに笑えるというのは凄く嬉しい。リエルと2人の時でしか、心からの笑顔って出なかったからな。

「ぐっ、是非そうしてください」
(早くこの笑顔に慣れなきゃな)

笑うとかわいいー。

俺は最高の味方を手に入れてしまったかもしれない。
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