転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃

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ジルバ

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私は元は古くから王宮の方で執事をしていた。魔王様への一生の忠誠を胸に此処で死ぬまで働こうと決めていた。

だから、この度の異動は私にとって辛いものだと思っていた。

『ジルバ・ユーテリアス。貴殿をサファイア宮殿の執事長に任命する』

この王命が私に下ったとき、目の前が真っ暗になった。視界に絶望が広がったのだ。
周りからの哀れなものを見るような視線もとても痛かった。

王妃派などカイト様を敵対視しているものは排除された今、カイト様に直接攻撃しているものはいなくなった。
だが、『第一王子は出来損ないである』という認識は皆の間で消えることはなかっただろう。
魔王様のお子であるにも関わらず金髪に碧眼。何をやらせても出来ないという才能のない者…

何故こんな者に仕えないといけないのか?そう思っていた…あのときまでは。

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ある日のこと。
カイト様とリエル様はいつも通りお2人で昼食をとっていらっしゃった。

そこでカイト様がふと疑問に思ったのか、それとも今までの経験のせいで人を信じることが出来ないのか…リエル様にある質問をされた。

「なぁ、リエル。何故お前はこんな俺に親切にしてくれるんだ?考えれば考えるほど訳が分からなくなるんだ。俺はこんなにも…」

リエル様がカイト様を大切にしているのは何故だ?これは城の者が皆思っていた疑問だろう。

リエル様はカイト様の言葉を遮って、ある言葉を続けた。その言葉を一生忘れることはないだろう。

「それ以上は言わないで。私はこの前言ったよ?『カイト兄上は出来損ないなんかじゃない』とね。この言葉に嘘も偽りもないよ。
カイト兄上は強くて、頭も良くて、優しくて、努力家で、見た目も美しい。それは1番近くで見た私が1番よく知っている。だけど、カイト兄上に出来損ないと言った奴は?見てもないくせに出来ないと決めつけている奴ばっかじゃないか」



この言葉は強く私の胸に突き刺さった。
今までの己を恥じないといけないと思った。


私はカイト様が実際にしている姿を見たことがないのに、噂に流され勝手に出来損ないだと決めつけてしまっていた。

それにリエル様がカイト様を出来損ないではないと言ったのだ。普通の人とリエル様が言ったのでは全然重みが違う。
そのリエル様が認めた実力なのだ。相当のものなのだろう。

きちんとカイト様と向き合わなければならないと思った。

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それから、私はカイト様をしっかりと見ることにした。偏見の目で見ずに…

リエル様の言った通りであった。
そして、仕えるべき素晴らしい人を見つけたと思った。


「セバスチャン、ちょっといいか?」

このあだ名は未だに嫌だと思うが…まあいいだろう。

我が主、一生を貴方に捧げましょう。この命尽きるまで、支え続け守ることを誓いましょう。
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