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398 外のこと、中のこと
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Aの代わりにガルドの肩で眠る黒い鳥は、バレーボール程の大きさからテニスボール程の大きさへと身体を縮めて目を瞑った。
「陽太郎くんどうしたの?」
「ログアウト。そもそもAも無理だった二十四時間ログインが、ただの大学生に出来る訳ない」
「……俺らは?」
「……」
会議用に使われるパステルカラーの華やかでフェミニンな部屋に、似つかわしくない中年男性たちがぎゅうぎゅうと立ったまま集められている。外部に聞かれたくない話題は必ずココで、と決めたチートマイスターの部屋だ。奥から順番に座るため、入り口付近は待ちのロンベルが肩身狭く立っている。
榎本はガルドに呆れた顔を向ける。
「自分より年下の可愛い後輩だから甘やかしてるんだろ。いけるだろ、二十四時間」
「いや」
「鈴音もヴァーツもソロの奴らもフル・フルダイブ出来てんのに。俺らより若い陽太郎が潜り続けられない根拠は?」
「それは……」
ガルドは言い淀んだ。陽太郎は長文メールのような形でログアウトに数日かかること、外でなにが起きているのか知っていること、そしてAに頼まれたとある任務について書き綴って送ってくれている。コミュニケーションはそれで十分だとガルドは思うが、榎本はAの時のようなガン詰め詰問スタイルを取りたかったらしい。リアルタイムで何故いないのかとガルドが詰められる。
「陽太郎くんが置かれた環境がどうなのか分かんないけど、つまり繊細な扱いが必要って訳ね」
一番奥でふんぞりかえるぷっとんがガルドへ助け舟を出した。ガルドは沢山頷く。
「そんな繊細なタマか?」
「陽太郎くん本人じゃなくってぇ、対応してるAくんが丁寧にすべきだと思ってるんでしょ。というかぁ、サポートする立場の人間がサポートされるなら、さらにそのサポートが、またそのサポートがぁ……ってマトリョーシカになるでしょ!? 陽太郎くんには専属のスタッフが居ないのよきっと。セルフ、セルフ」
「……俺らもサポートされてる実感は無いんだが」
「それは確かに」
「鈴音とかヴァーツとか絶対放置されてる」
「可哀想」
口々に夜叉彦やメロが小声で呟く。
「はいはい! 分かってるわよぉ! 陽太郎くんが特別配慮されてる理由は分かんないし、差別だと思うけど、彼は新しい被害者なんだから! 優しくしなさい!」
「それは勿論」
「色々情報くれたしな」
「座った!? 全員に伝わってる通り、陽太郎くんが新しく被害に遭ったわ! ガルドちゃんの味方みたいだけど経緯とかは動画で送ったの見てくれたわね?」
「布袋さん、そんなことよりAからの依頼です! 晃元総理の……」
「失脚並びに可能なら身柄の拘束、ね! とんでもないこと言い出したわよ、その黒い鳥!」
「いやこれは二代目だが」
「先代! 前のやつ!」
ぷっとんは興奮気味だ。
「で、陽太郎とその友達は意気揚々と作成進行中と。効果は?」
「ニュースには時差がある。今晃五郎周りがドタバタしてるとして、それが一般市民まで広まるのに半年は掛かるぞ」
「マグナ、それってセクシャルなスキャンダルの場合だろ?」
「そうだが、違うのか?」
「陽太郎たちの作戦はまだ何通りもある。ものによってはもっと即効性のある罠だって……」
「そうですね。ずばり、甘いです」
背広組が表情を厳しくする。
「一度週刊誌に抜かれてしまえば、晃五郎は警戒します。周囲の人間を限定しますし、情報も操作したがる。そこまで彼らは予想していて、この報告書には次の作成について、無邪気にこう書いてます……」
報告書と呼ばれた陽太郎のメール文書の、後半の一文を蛍光ペンで引くアニメーションが眼前に現れる。
『焦れば動く。動くところを晒す。ガチで脳波コンの情報操作するところを、リアルタイムで全世界に発信させる』
「……彼らは何人、何十人、何百人といる関係者を晃五郎と道連れに、それこそ根絶やしにするつもりなんですよね」
背広組の大谷が、少し悲しそうに笑った。
「陽太郎くんどうしたの?」
「ログアウト。そもそもAも無理だった二十四時間ログインが、ただの大学生に出来る訳ない」
「……俺らは?」
「……」
会議用に使われるパステルカラーの華やかでフェミニンな部屋に、似つかわしくない中年男性たちがぎゅうぎゅうと立ったまま集められている。外部に聞かれたくない話題は必ずココで、と決めたチートマイスターの部屋だ。奥から順番に座るため、入り口付近は待ちのロンベルが肩身狭く立っている。
榎本はガルドに呆れた顔を向ける。
「自分より年下の可愛い後輩だから甘やかしてるんだろ。いけるだろ、二十四時間」
「いや」
「鈴音もヴァーツもソロの奴らもフル・フルダイブ出来てんのに。俺らより若い陽太郎が潜り続けられない根拠は?」
「それは……」
ガルドは言い淀んだ。陽太郎は長文メールのような形でログアウトに数日かかること、外でなにが起きているのか知っていること、そしてAに頼まれたとある任務について書き綴って送ってくれている。コミュニケーションはそれで十分だとガルドは思うが、榎本はAの時のようなガン詰め詰問スタイルを取りたかったらしい。リアルタイムで何故いないのかとガルドが詰められる。
「陽太郎くんが置かれた環境がどうなのか分かんないけど、つまり繊細な扱いが必要って訳ね」
一番奥でふんぞりかえるぷっとんがガルドへ助け舟を出した。ガルドは沢山頷く。
「そんな繊細なタマか?」
「陽太郎くん本人じゃなくってぇ、対応してるAくんが丁寧にすべきだと思ってるんでしょ。というかぁ、サポートする立場の人間がサポートされるなら、さらにそのサポートが、またそのサポートがぁ……ってマトリョーシカになるでしょ!? 陽太郎くんには専属のスタッフが居ないのよきっと。セルフ、セルフ」
「……俺らもサポートされてる実感は無いんだが」
「それは確かに」
「鈴音とかヴァーツとか絶対放置されてる」
「可哀想」
口々に夜叉彦やメロが小声で呟く。
「はいはい! 分かってるわよぉ! 陽太郎くんが特別配慮されてる理由は分かんないし、差別だと思うけど、彼は新しい被害者なんだから! 優しくしなさい!」
「それは勿論」
「色々情報くれたしな」
「座った!? 全員に伝わってる通り、陽太郎くんが新しく被害に遭ったわ! ガルドちゃんの味方みたいだけど経緯とかは動画で送ったの見てくれたわね?」
「布袋さん、そんなことよりAからの依頼です! 晃元総理の……」
「失脚並びに可能なら身柄の拘束、ね! とんでもないこと言い出したわよ、その黒い鳥!」
「いやこれは二代目だが」
「先代! 前のやつ!」
ぷっとんは興奮気味だ。
「で、陽太郎とその友達は意気揚々と作成進行中と。効果は?」
「ニュースには時差がある。今晃五郎周りがドタバタしてるとして、それが一般市民まで広まるのに半年は掛かるぞ」
「マグナ、それってセクシャルなスキャンダルの場合だろ?」
「そうだが、違うのか?」
「陽太郎たちの作戦はまだ何通りもある。ものによってはもっと即効性のある罠だって……」
「そうですね。ずばり、甘いです」
背広組が表情を厳しくする。
「一度週刊誌に抜かれてしまえば、晃五郎は警戒します。周囲の人間を限定しますし、情報も操作したがる。そこまで彼らは予想していて、この報告書には次の作成について、無邪気にこう書いてます……」
報告書と呼ばれた陽太郎のメール文書の、後半の一文を蛍光ペンで引くアニメーションが眼前に現れる。
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「……彼らは何人、何十人、何百人といる関係者を晃五郎と道連れに、それこそ根絶やしにするつもりなんですよね」
背広組の大谷が、少し悲しそうに笑った。
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