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342 チヨ子成長中
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「何不自由なく会話できるようになるまで数日かかりそう、なんだって。でも起きてる間にちょっとなら話せるよ」
<そうか……引き続き三橋をよろしく頼む。お上に嗅ぎつけられる前に退院させたいところだが、難しければ転院させよう>
<白亜教授が『名前を使ってもかまわんゾ』、ですって~>
<結構だ! と言いたいところだが……くっ、正直渡りに船だな……>
<ボスぅー、こいつに乗せられてんじゃねぇスかー。ダメダメ、信用ならねぇ!>
<ギャンちゃんったらツンケンねぇ。仲良くしましょうよぉ>
<うっぜ! ウゼェ!>
脳波コンで聞こえる不思議なやりとりに、チヨ子は思わずため息をついた。
「はぁ。ゲーマーってみんなこうなの?」
「心外ですの。少なくともガルド様とワタクシは真面目でしっかり者ですの」
「大人ってみんなもっとさぁ、こう、頭が良くて責任感があると思ってたんですけど」
「お子様にしては良い洞察ですの。世の中、スマートに回ってると思いきやこんなもんですのよ」
「これなら社会人になってもなんとかやってけそー」
「貴女は報連相もしっかりなさってますし、記憶力も良いですの。IQは低くても十分適正ありですのよ」
「IQ低くないもん」
「たまにご友人との会話に置いていかれることありません?」
「何突然。あるけど。普通にハブられてんなーってときあるけど」
「ふふっ、そんな時は脳波コンで分からないことを検索しながら会話しますの。マルチタスクを極めれば、ネットは貴女の第二の脳になりますのよ」
チヨ子は目を丸くして女を見た。高飛車でとっつきにくいと思ってはいたが、そういえば面倒見の良いオバサンだ。
「そう、なんだ。へー。試してみる」
「ま、数日付き合ってくれれば後はスタッフがなんとかしますの。貴女は東京に戻るといいですの」
「えー!?」
「学校優先ですのよ、学生でしょう?」
「それはそうなんだけどぉ、どうせ春休みだしぃ」
「長いおやすみですのね」
「うっ、まぁ、登校日はあるけど……」
「卒業出来るなら問題はありませんもの、責任は本人にありますの」
「シゲさんたちの方が休み長いなんてずるいよー」
「大学生は休み長すぎですのよ」
三橋が眠る集中治療室のあるフロアから、カフェやロビーが入っているフロアまでエレベーターで下がる。その間にも脳波コンで投げられてくる処理依頼を捌き、高校の仲間と他愛のない話をし、SNSにリアクションし、拉致被害者家族会の井戸端会議に耳を傾けている。
三橋の処遇について決まるまで関係者のふりをするのがチヨ子と久仁子の仕事にはだった。もちろんその他の仕事もあるが、リアルの体は北海道の病院から離れられない。泊まりもすぐ隣のシティホテルだ。
「みんな大丈夫かなぁ」
「陽太郎はさておき、他はうまくやれてますの」
「ヨウタロさんのこと……」
「しっ、お口にチャックですの」
「名前出してる時点で遅くない?」
「……ベルベットは謎ですの。敵ではない時もあるし、明らかに何か犯罪に加担してますの。陽太郎にはちょっと荷が重い仕事かもしれませんが、奴が何を考えているのか分かれば、きっと……ガルド様を取り返せますの」
「てつだう。アタシもあのベルベットって人、みずのこと知ってるんだと思うから」
病院内のカフェでケーキと紅茶を買い、トレイに乗せて席に着く。
「なら、陽太郎を手伝うのが良いですの」
「そうしようかなー。忙しいけど」
チヨ子は、自分が日電社員も真っ青になるほどの仕事量を抱えているとは知らないまま、マルチタスクを重ねながらケーキにフォークを入れた。
<そうか……引き続き三橋をよろしく頼む。お上に嗅ぎつけられる前に退院させたいところだが、難しければ転院させよう>
<白亜教授が『名前を使ってもかまわんゾ』、ですって~>
<結構だ! と言いたいところだが……くっ、正直渡りに船だな……>
<ボスぅー、こいつに乗せられてんじゃねぇスかー。ダメダメ、信用ならねぇ!>
<ギャンちゃんったらツンケンねぇ。仲良くしましょうよぉ>
<うっぜ! ウゼェ!>
脳波コンで聞こえる不思議なやりとりに、チヨ子は思わずため息をついた。
「はぁ。ゲーマーってみんなこうなの?」
「心外ですの。少なくともガルド様とワタクシは真面目でしっかり者ですの」
「大人ってみんなもっとさぁ、こう、頭が良くて責任感があると思ってたんですけど」
「お子様にしては良い洞察ですの。世の中、スマートに回ってると思いきやこんなもんですのよ」
「これなら社会人になってもなんとかやってけそー」
「貴女は報連相もしっかりなさってますし、記憶力も良いですの。IQは低くても十分適正ありですのよ」
「IQ低くないもん」
「たまにご友人との会話に置いていかれることありません?」
「何突然。あるけど。普通にハブられてんなーってときあるけど」
「ふふっ、そんな時は脳波コンで分からないことを検索しながら会話しますの。マルチタスクを極めれば、ネットは貴女の第二の脳になりますのよ」
チヨ子は目を丸くして女を見た。高飛車でとっつきにくいと思ってはいたが、そういえば面倒見の良いオバサンだ。
「そう、なんだ。へー。試してみる」
「ま、数日付き合ってくれれば後はスタッフがなんとかしますの。貴女は東京に戻るといいですの」
「えー!?」
「学校優先ですのよ、学生でしょう?」
「それはそうなんだけどぉ、どうせ春休みだしぃ」
「長いおやすみですのね」
「うっ、まぁ、登校日はあるけど……」
「卒業出来るなら問題はありませんもの、責任は本人にありますの」
「シゲさんたちの方が休み長いなんてずるいよー」
「大学生は休み長すぎですのよ」
三橋が眠る集中治療室のあるフロアから、カフェやロビーが入っているフロアまでエレベーターで下がる。その間にも脳波コンで投げられてくる処理依頼を捌き、高校の仲間と他愛のない話をし、SNSにリアクションし、拉致被害者家族会の井戸端会議に耳を傾けている。
三橋の処遇について決まるまで関係者のふりをするのがチヨ子と久仁子の仕事にはだった。もちろんその他の仕事もあるが、リアルの体は北海道の病院から離れられない。泊まりもすぐ隣のシティホテルだ。
「みんな大丈夫かなぁ」
「陽太郎はさておき、他はうまくやれてますの」
「ヨウタロさんのこと……」
「しっ、お口にチャックですの」
「名前出してる時点で遅くない?」
「……ベルベットは謎ですの。敵ではない時もあるし、明らかに何か犯罪に加担してますの。陽太郎にはちょっと荷が重い仕事かもしれませんが、奴が何を考えているのか分かれば、きっと……ガルド様を取り返せますの」
「てつだう。アタシもあのベルベットって人、みずのこと知ってるんだと思うから」
病院内のカフェでケーキと紅茶を買い、トレイに乗せて席に着く。
「なら、陽太郎を手伝うのが良いですの」
「そうしようかなー。忙しいけど」
チヨ子は、自分が日電社員も真っ青になるほどの仕事量を抱えているとは知らないまま、マルチタスクを重ねながらケーキにフォークを入れた。
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