40代(男)アバターで無双する少女

かのよ

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340 信頼しているから

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 朝比奈美空は、どうやらベルベットにとって「海外に展開している日本人ボランティアの子」という印象だったらしい。ガルドがいくら探しても、これ以上詳しい美空の動向は出て来なかった。そもそも閲覧できる区域がベルベットの個人用端末だけという狭さだ。ミッドウェー島の研究者たちが持っているデータも、閲覧しようとすると生体認証を要求されてしまう。頑張れば突破できるかもしれないが、ログを綺麗に消せる自信のないガルドには少々リスキーすぎた。
「美空……」
 夜叉彦の心配そうな声がふと聞こえ、ガルドは浮上しかけた頭をもう一度下へ向けた。
「……」
 もう少し他のデータがないかと潜ってみる。夜叉彦のためにも、得られたキーワードをもっと広げていく。キーワードに全く引っかからない部分もくまなく読む。難しい話から雑談まで、数ヶ月分の膨大なデータがキャッシュされているらしい。
<ボーイズの育成完了。『実戦』に耐えられたメンバーのみ引率、残りは日本へ帰国させる>
<出費 二億ちょい>
「……」
<ハワイ島の研究施設『襲撃』完了。人員の配置完了>
<出費 四捨五入して五億>
「……」
<ドイツ施設の襲撃はディンクロンが勝手にやってくれたから費用抑えめ。ラッキー>
<グリーンランド施設の襲撃もディンクロンが頑張ってくれちゃったので費用ゼロ。超ラッキー!>
<ロシア施設襲撃 国交問題に注意 成功率を上げるため『不安要素を回収・隔離』>
<『転用』方法については別紙>
 これだ、とガルドは目を凝らした。何一つ美空という単語は出てきていないが、美空が辿ってきた経路、つまり「ロシアから三橋とともに北海道へと移動し、ベルベットの手から離れて日電と合流した」という点に合う。
 転用方法についての書類を開く。
<ジョンに委託 アラスカへ輸送 日本への帰国未定(戻したら厄介そうだから後回し!)>
<朝比奈美空の輸送は「断念」>
「あった!」
「え」
「なになに」
<脳波コン未所持者に対するの難易度高すぎぃ>
 見なかったことにしたい。ガルドは心底思った。
「……おい」
「ガルド!?」
「怒ってる……のか?」
<ロシアの同盟者に保護を依頼>
<三橋奪取と共に護送の予定>
<手伝うとの打診あり 働かせ方検討しといて>
 最後の一文は現地スタッフへ送信したメッセージと二重になっている。メッセージの往復をあとで追跡できるようフラグを突き刺し、ガルドは一旦陸に上がった。
「……なるほど、顛末はわかった」
「おおガルド、どうした!? すごいな、なにが分かったのか分からんぞ!」
「が、ガルド~! どうだった!?」
「朝比奈美空はロシアに入っていたところを、ベルベットに保護されたらしい。ただ、帰国させる時にちょっと……」
「ちょっと、どうしたの」
「脳波コンをいれていないから『やりにくい』と、ベルベットが……」
「アイツ……!」
 ガルドはピンク色の愛らしいソファに座ったまま、取り囲む仲間達の目線から顔を逸らした。正面でメロが盛大に怒っている。
「あーもーアイツばかじゃないの!? 親切に話して帰国促せばいいだけじゃん! 働けよ! ごめんね夜叉彦、ほんともぅ」
「いや、しょうがないよメロ。忙しいんだと思う。美空も、そもそもロシアなんかに行ってる時点で危険は承知だっただろうに」
「そもそもなんでロシアに?」
「うーん、なんでだろ。パスポートとか取ったって話は聞かなかったけど」
 ガルドは記憶改竄の四文字について口をつぐんだまま、とにかく頷く。リアルの女子高生界隈に馴染むため身につけた「会話に参加しているふり」を遺憾なく発揮し、ベルベットの悪事を庇った。
「あと、ベルベットの頑張り以上に金がかかってる」
「金? 金欠だってのか」
「億単位の金がどんどん飛んでた」
「うっわ」
「それは同情しかない」
「ビジネスしてるって言ってもその金額はポイと出せるもんじゃないよ」
「うんうん」
「でも美空ちゃん一人の帰国代くらい出してくれてもいいじゃないのよ。ケチかよアイツ」
 メロはまだ怒っている。先ほどまで心配そうだった夜叉彦が逆に宥めるほどだ。美空を心配する気持ちもあるのだろうが、メロが遠慮なく怒りを表出する様子に笑顔すら見せている。
「まぁまぁ。実際北海道までベルベットの部下と一緒に帰ってきたんだろ? しかも三橋と一緒に。大手柄だよ」
「そうだな! おかげでディンクロンが三橋のログアウトまで出来たわけだ。そして奥方は無事帰国したのであれば、結果は重畳と言えるぞ」
「ジャスの言う通りだ。夜叉彦、よかったな」
 仲間達が思い思いの言葉をかけている。ガルドはそっと見ないふりをした記憶操作について考えることをやめ、ベルベットの努力を正当に評価した。
「ベルベットはよくやってる。メロ」
「分かってるよぉ。でも爪が甘い! いつも言ってるけどさ」
「ああ」
 ガルドの隣にメロがぷんぷん怒りつつ座る。態度も口もベルベットに対しては苛烈になるが、信頼と期待が感じられ、ガルドは思わず心の中でベルベットに向けて「もうちょっと、メロに胸張れるくらいには清く正しく頼む」と合掌した。 
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