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第一章

第一章 最終話「ノア・ヨルクの胸襟」

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 母は”耐毒性スキル”を持っていた為魔族の父に見初められ関係を持った。
 私”ノア・ヨルク”は魔族の父の血の影響で私の身体は普通の人間族に害があった。
 

 ”私は人に触れるとその人の肌が赤く爛れる”
 その為母は私を幼少期から全身をマントや手袋で覆っていた。人前で肌を晒すことは他人を傷つける事だといつも言われていた。
 母の絶対に人と話すなという言いつけで私は他者と会話してこなかった。
 この世界で識字率は低いが、私は会話できないので母といつも文字の読み書きの勉強をした。
 母は元々読み書きが出来なかったが私の為毎日頑張って先生役をしてくれていた。
 
 ”体液や唾が人の肌に付くと溶ける”
 
 ”だから他人が近寄らないようにマントに異臭を付けています”

 14歳から孤独だった。今思うと母は私を生んだせいで人生を狂わされたのかも知れない
 魔族の父は母が私を身籠ってすぐ姿を消したという。あまり身体が強くない母は独りで私を育てる為に昼夜働き続け朝は私に勉強を教えてくれた。
 そして私が14歳の時に突然倒れ死んだ。
 絶望に打ちひしがれる中私は魔力を目覚めさせる。魔族ハーフの私は14歳だが身体の成長は遅く外見は小さい子供だった。
 それから街を離れ森を転々としながら生活した。魔族の父の血は独り森で暮らすのに力を与えてくれた。
 小動物を狩り木の実を食べ森の湧き水で生活した。
 
 もう何年経ったのか分からないそんなある日私は街に戻った。幼少期に母と一緒によく読んでいた本をまた読みたいと思ったからだ。
 街に入るとボロボロの布を全身に巻き付けた小さな身体の浮浪者のような私に人は近付いてこなかった。

 そこで異様な格好の人間でも入っていく建物も見掛け立ち止まる。
 そこは冒険者ギルドだった。

 建物の中は綺麗な細工の施された武器や防具が並んでいて、壁側には羊皮紙のような紙が貼られていた。冒険者と呼ばれる者たちが仲間を求める場所だと説明を受け私は惹かれる。
 ギルドカードという物を発行する為簡単な依頼をこなしていき・・・冒険者登録をする。
 そんなある日冒険者ギルドで”奴隷”の話を耳にした。奴隷は主人の命令に逆らうと身体に激痛が走るらしい……。
 奴隷は高額だと話していたので一年冒険者をし300万ギルの貯蓄しかなかった私には関係ないとその時は思っていた。
 それから12年私は殆んど休む事無くギルドの仕事を続けた。
 依頼の達成率からギルドから個別に依頼が来ることも多くなった。

 いつもソロで仕事をしているが私の事を知る者も増えた。
 マントに仮面で異臭を放つ異様な姿で誰も近付いては来なかったが、他の冒険者に一目は置かれていた。
 
 そんな冒険者としての日常を過ごしていると、ギルドの掲示板で奴隷オークションで毒耐性ユニークスキルを持つ者が出品されるとの情報を見る。
 私は胸の鼓動が高まり平常心でいられなかった。

 そして母と同じ”耐毒性スキル”そして私はその奴隷を買う事を決意する・・・

 それから奴隷の彼と私は一緒に家に住む事にする。
 奴隷を買う時に一緒に住む抵抗感があった。しかし奴隷オークションで彼を見た時その抵抗感は薄れた。以前私が子供たちに虐げられているのを助けてくれた青年だったからだ。
 私は運命を感じていた。
 奴隷を家に招き私は彼に自身の身体の秘密を話すと彼は意を決して自分の指を私の口の中に捧げてくれた・・・

 私たちはお互い孤独な者同士惹かれあうのは必然だったのかも知れない。
 しかし私の声の魔障が彼を苦しめていることを知る。

 私たちはそれから声の魔障の耐性の為にお互い口づけをした。
 「僕はノア様に出会えて幸せです」と彼は私に微笑んでくれた。私も彼と一緒にいる時間はとても幸せだった。

 彼のギルドの初仕事で”オルトロス”に襲われ生死を彷徨い生還した時、私の心はもう彼の”奴隷”だったのかもしれない。

 そして私はついに彼に自分の体の全てを晒す。彼は私の体を見て『綺麗です』と言ってくれる。
 私が初めて他者に裸を晒し、その言葉をかけてもらえた。それだけで十分だった・・・。
 
 私は彼の言う事を全て聞き入れていた。彼に身体を求められる事は嫌ではなかった。
 それに彼に嫌われたくないという気持ちが日に日に強くなる。 

 彼と冒険者ギルドで依頼をこなす事で私の夢である『家族』を得た気がした。私は彼と過ごす時間が増えるにつれて彼の事をどんどん愛していく気持ちが大きくなるのが分かる・・・。 

 だが私たちの主従関係では「好き」や「愛してる」と言う言葉をお互い発する事はなかった。

 だが彼の情欲はエスカレートしギルドに仕事に行かずにベッドで一日肌を重ねる堕落した日を送る。
 
 彼の膨張した陰茎が私の秘部を貫く・・・とても気持ちいい・・・
 私は背徳感で満ち溢れ、羞恥心は彼の腰の動きと共に薄れていった。
 そして彼は私の中に体液を放出する……。
 「あっ、ああん」私は恥ずかしい嬌声を上げ何度も痙攣していた。今まで経験した事ない快楽に溺れていくのが悔しかった。

 冒険者になって12年殆んど休みを取らず仕事をこなしてきた。
 それが彼と会って情欲に堕ちる日々に恐怖を感じた。

 『もしこのままずっとこの生活が続けたら彼はダメになってしまう』だが私は彼から身体を求められるのを断る勇気はなかった・・・。

 しかしその日の夜私は彼の情欲を遮る。彼はそれでも私の肩を抱いてきた時、それは起こった。
 私の奴隷魔法が付与された小指の指輪が光ったのだ。
 そして彼の足の奴隷紋が発動してしまう。私は奴隷魔法印への効力を発揮させる気持ちは無かった。
 しかしその瞬間彼はベッドから崩れ落ちる。

 彼は胃のものを全て吐きだし苦痛で床をのたうち回り、痙攣してうめき声を上げる。
 「レン君しっかりして!」私は全ての魔力を注ぎ込みヒールする。

 「レン君!ごめんなさい。私そんなつもりじゃなかったの……」私は苦しむ彼の手を握る。
 しかし彼は胃液を吐くと気を失う……。私はその場にへたり込み泣いた……。
 奴隷紋の光は消えたがレン君の意識はまだ戻らない。

 私は気が動転して冷静さを欠いていた。
 「ごめんなさい。私のせいでこんな事に……」と私は涙を流しながら何度も意識を失ったままの彼に謝り続けた。
 温かい布巾で彼の顔や体を拭くが反応はない。

 そして私は彼の手を握ったまま少し眠ってしまったようだ、翌朝目が覚めると私は彼の顔を見る。
 呼吸はあるがずっと目を覚まさない。私は愛おしい眠る彼の唇にキスをする。
 すると彼の目元が動く。
 「ノ、ノア様…」彼は消え入りそうな声で私の名前を呼んでくれた。
 
 その日は一日彼の看病をした、夕方にはスープを飲んでくれるくらいに彼は回復する

 日も暮れて辺りが暗くなった頃彼は頭を床にこすり付けて謝る……
 「ノア様。、ぼ、僕はノア様の事を無理やり抱こうとしたのでこんな事に……。」

 「違うの私が悪いの、奴隷契約の魔法を発動させるつもりなんてなかった。」私は泣きながら彼の胸に顔を埋めた……。
 お互い震えながら泣いていたが彼は私を抱きしめようとはしなかった。
 「ノア様…。」彼はそう一言だけ私に声を掛けると何かを考え込んでいるようだった……

 その日私たちはお互い同じベッドで寝ようとはしなかった。彼は私のベッドから離れた位置に床に布団を敷き自分の寝床を作る・・・
 そして彼を先に寝かせたあと、私も自分のベッドに横になって眠りに付く・・・。

 翌朝目覚めると私は彼に抱きつき、日課にもなっていたキスをしたが彼からのキスは返ってこない……。
 「レン君……」と私が呟くが彼は少し震えている……
 
 「レン君、キスして……。」私は彼にそうお願いをする。
 彼は私の唇にキスをしてくれるが、それはいつもの情熱的なものではなくただ唇同士が触れ合うだけのキスだった……。 
 
 私の声の魔障の耐性の為と彼の魔力が増幅する為という二つの理由で”肉体的な契り”は行うべきと私は考えていた
 そして2日に一度”肉体的な契り”を私から誘うが時折彼の陰茎が立たない事もあった。
 
 奴隷紋の発動はそれほど彼のトラウマになっていた。


 私たちはそうして関係が壊れ、『レン・ヨルク』はただの私の奴隷になった……

 ・・・・第一章 完・・・・

 
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