外れスキルの僕は「無口な仮面の少女」の奴隷となるが孤独な彼女と同棲してイチャイチャしたスローな冒険者ライフを送りたい

プロローグ

プロローグ 第1話 「そのモノはやがて己が隷属する人と会遇する」

　”異臭を放つ仮面のモノ”との出会いを最初に記しておこう。
　群れた数人の悪ガキに丘の上で石をぶつけられている”異臭を放つ仮面のモノ”を見掛けたのはもう1ヶ月前か…

一目見て何年も着続けているであろう薄汚れたボロ布で全身を覆い隠す異様な恰好から捨てられた人間、もしくは飢えた放浪者に見えた。鼻につくツンとした臭い、その悪臭から悪ガキに目を付けられ一時の玩具にされているのだろう。背丈は150ｃｍくらいだろうか顔は黒づんだ薄汚れた仮面を付け、ずっと石をぶつけられようとも耐え忍んでた。

とはいえ、この僕もよれよれのＴシャツに下はスウェット、そしてサンダルでよろよろと歩いている飢えた放浪者である。

「声を上げるべきか？」

僕はもう何年も言ったことがない独り言を呟いた。この異世界に来てもう2週間が経つだろうか、ようやく人という存在を見掛けた安堵と共に混乱が頭を渦巻いていた。そして、僕は混乱して心が右往左往して結果、見て見ぬふりをした感じになっていた。
”異臭を放つ仮面のモノ”も僕の存在を気にしている様子は見られない、ただじっと耐え忍ぶのみだ。

「おい！ 何してんだよ！ そんなところでぼさっと突っ立って！」

僕は突然悪ガキに怒鳴られて咄嗟に言葉が出た…
「あ、え？」
僕は無意識に草陰から大きな道の端まで出てきていたみたいだ

「あぁ？」
悪ガキの1人が僕に突っかかってきた。

「あ、いや、別に何もして、ない…よ」
僕はそう答えたが悪ガキ達は納得しない。

「嘘つくんじゃねぇ！ そいつをかばうってんならお前も石をぶつけるぞ！」

「いや、その…。ええと・・・」
僕は10～12歳の大して背も高くない数人の子供にビクついて口ごもってしまう。しかし、僕のその煮え切らない態度が悪ガキ達の逆鱗に触れたようだった。

「あぁ？ だったらそんな所で突っ立ってんじゃねーよ！」

僕に暴言を浴びせる悪ガキ達、その内の1人が”異臭を放つ仮面のモノ”に更に石を投げ付ける。
この時僕は心のずっと奥に仕舞い忘れていた異様な感情が少し出てきた
悪ガキに少し怒鳴って退散させるべきか？
この2週間会話は異世界リスに頼りない小声で「ありがとう」くらい
いや、前世でニートだった僕はそんな大きな声を出せるだろうか？
何年も他人と会話せずベットの上で生活しゲームばかりの毎日
大きな声の出し方すら分からない
そしてようやくその集団を認識出来るまで追い付いた

多分その心の葛藤の直後にもう僕は叫んでいた

「あ、ヴぁ、やめ、だぁろ」

正直自分でも何言ってるか分からない、ドモりながらふらつく脚で前へ行き叫んだ
見た目が浮浪者の大人の男がでかい奇声で訳わからない感じで向かって来たので悪ガキも怖がったのだろうか走って逃げて行ってしまった。

少し沈黙が続いた

僕はというと”仮面のモノ”の近くに恐る恐る歩み寄る。”仮面のモノ”は頭を押さえ下を向いたままだ。
「あ、あ、あの……」
僕は悪意がないとアピールするように手を上げてもう少し近付いた
「だ、大丈夫？ 怪我は……」
僕は他に上手く言葉が見つからないながらも声をかけるが”仮面のモノ”は俯いたまま何も喋らない。この異世界に来て2週間、ようやく他の人と接触したもののコミュ障丸出しの自分に苛立つばかりである。しかし、そんな僕にも”仮面のモノ”が何か言ったように聞こえた。

「え？」

僕はそう聞き返すと、”仮面のモノ”は石をぶつけられた頭を押さえながらゆっくりと立ち上がった。
”仮面のモノ”は何かを喋ろうとしたが声が掠れてうまく喋れないようだ。僕はそんな様子に少し安堵し近付いた。
”仮面のモノ”は僕の目を避けるように後ろを向きながら更に何かつぶやいた。
小声で何言ってるか分からなかったが可愛らしい声だった
声変わり前の少年か？いや女か？
後ろを向いていた”仮面の少女”を少し覗き込んだら、手で仮面を少し上げて喋っていた
その仮面との隙間から石をぶつけられてた額から流れてきたのだろうか頬に血が一滴垂れてきた

そしてそのわきに見えた”仮面の少女”の唇はピンク色で美しかった…