28回の後悔

おまめ

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12/16 Ⅰ

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お腹を満たした後、風呂に入るよう言われた。
一通り洗い終えて風呂を出たが、ドライヤーがどこか分からない。竜斗を呼ぶ。
「はいはい、俺髪の毛乾かすから、言われた通りにこれ顔に塗っていって。最初の仕事」
「はい…あ、なんか急ぎですか…?」
「まぁねー出かけたいからさ。じゃあ説明するよ」
それから、私は言われた通りに化粧水やらクリームやらを顔に塗った。終わった頃には髪は乾いていた。
「え…こんなツヤあった…?」
「俺美容師目指せちゃうかもーー!で、塗れた?」
竜斗は私の顔を後ろから覗き込んでペタペタと触った。ち、近い…
「いい感じ。意外ときれいな肌してるね。」
「あ…ありがとございます…」
すぐ側で満足そうに笑う竜斗は流石に直視できない。目を逸らしながら感謝した。
「じゃ、行こっか。コスメ探しに行くの」
「はい」

そこから、コスメショップを何件も周り、あーでもないこーでもないと竜斗は私とコスメを見比べた。

「どっちかなー。碧衣はどっちが良い?」
「どっちでも…」

「わ、色んな色ある。好きな色は?」 
「うーーん…こんなにあったら分からないです」

モタモタする私と違って、竜斗はテキパキとかごに入れる商品を選んだ。
そろそろ足も目も疲れてきた…
「疲れたねー。ちょっと休憩しよっか」
「はい」
有名なドーナツ店を見つけた。そこにしようと竜斗が言う。
「俺買うから席取っといて。何が食べたい?」
「えっと…どれでも…」
「わかった。よろしく」
2人座れる席を取ってから、ふぅと息をついた。

疲れた…
思えば私はさっきから、どれでも良いとか、分からないとか曖昧な返事しかしてない。だけど竜斗はそれに文句も言わないで早々と行動する。一応私に聞いた後、自分で決めるのだ。申し訳なくなってきた。
でも…もう何が好きなのか分からなかった。何にも心が動かない。
「お待たせ。定番のやつと、チョコ。あ、ごめん、食べれる?」
「はい。多分大丈夫です。ありがとうございます」
「無理だったら遠慮なく言ってね」
どうやら竜斗も同じ物を選んだようだ。もぐもぐと食べる。
「美味しい?」
「はい」
ふふっと笑う竜斗は、やっぱりこう、魅力的だ。少しツヤのある黒髪が揺れる。
あれ、?ちょっと待て。私はモデルなだけで、別にここまで優しくする必要はない。さっさと自分の試したい物を買って、私に施せばいい。
これだと勘違いしてしまう。
「あの…」
「ん?」
「なんで、その…私に優しくするんですか?」
「え?」
「いや…別に私は居候で…」
「優しくされたくない?」
「そんなわけでは…」
「いいじゃん、ちょっとくらい甘やかされてなよ」
言葉に詰まる。何を言っても勝てない気がした。
「俺も楽しいし、気にしないでいいよ。むしろ甘えてほしい。今までそんなことしてこなかったでしょ」

楽しい…、??甘えてほしい…、???
やはり勘違いしそうになる。甘えられる気がしない。簡単に心を開いてはいけないのだ。私の、経験上。

言い返せない私を見ながら、竜斗は楽しそうにドーナツを頬張った。
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