転生徒

第7話 半グレ３人衆の視点

「──ったく、転生徒のやつらのせいで、新学期早々ヒデーめにあいかけたぜ。なあ？」
「ああ、まったくだ。あの白はっ骨こつ頭あたまのガキひとり相手なら、余裕でヤっちまえたってのによ」
「まさか、あの維い瀬せ飼かいユーシヤがいきなり乱入してきやがるなんてな。並なみの転生徒ならまだしも、聖剣使いの勇者属性ってんだから、タチが悪ぃ。あんなのとまともに斬りあったって、こっちがバカ見るだけだぜ」

　夜ふけの校庭を、半グレ風のやさぐれた男子生徒が３人、クダをまきながら突っ切っていく。
　放課後遅くまで部活動に励はげむ一般生徒ですら、この時間にはとうに学園から姿を消している。
　カラむ相手もいなくなってか、さすがの半グレたちも伝統的なヤンキー座りから重い腰を上げ、維い瀬せ飼かい学園の敷地外へと足を向けはじめたところだ。

「それにしても目ザワリだぜ、いまいましい転生徒どもが。異世界キャラ属性だか何だか知らねえが、俺たちより目立つんじゃねえってんだ。なあ？」
「ああ、まったくだ。このままじゃ終わらせねえ。あの白はっ骨こつ頭あたまのガキともども、いつか維い瀬せ飼かいユーシヤに痛い目見せて、エンエン泣いてわびさせてやる」　
「そりゃケッサクだ。『聖なる剣つるぎは勇気の光』？　とか何とか、わけのわからねえこと二度とホザけねえようにしちまおうぜ、ヘヘヘ──っ！？　痛いてぇ、どこ見て歩いてんだコラァ！」

　ちょうど敷地外の公道へ差しかかったとき、街灯脇わきの暗がりにたたずむ人影が半グレ３人衆のひとりとぶつかった。

「気ぃつけろやコラァ！　ヤっちまったっていいんだぞテメー、ああん？」
　怒気たかく詰めよる半グレ。
　しかしその勢いに対して、暗い人影は微動だにせず口のみを開いた。

『おい、その勇者属性の転生徒──聖剣使いの維い瀬せ飼かいユーシヤってのについて、詳しく聞かせろ』

「ああん？　誰にタメグチきいてんだコラ──ブフェッ！？」

　暗い人影が、半グレのひとりを何か長い武器で打ちすえる。

「てめえ！　ダチに何してくれてん──グベェッ！？」
「こいつ、いい加減にしやが──ゴゲブベェッ！？」

　さらにひとり、そして残りのひとり、と、半グレたちがあっけなく打ちのめされる。
　暗い人影はその長い武器を闇にかざし、いまにも振り下ろさんとしながら真っ赤な口を開いて言った。

『おい、聞こえなかったのか？　維い瀬せ飼かいユーシヤについて、教えろ。──お前らが話したくなるまで、何度でもこいつを喰らわせてやる』

「「「ひぃぃぃっっっ──」」」

　腰砕けになった半グレ３人衆の悲鳴が、夜空にむなしくあがった。