51 / 89
先輩、お付き合いします。
#10
しおりを挟むよーし……!
無事未早からBL鑑賞の許可もおりたところで、周りを注意深く見回した。人の気配がないことを確認する。
「紅本先輩? 急にどうし……んっ!」
不思議そうに見上げる未早の唇を、ほぼ押し付けるようにして塞いだ。やっぱり昨日と同じで柔らかい。もっと強く吸い付いたらどうなるのか。自分でも分からず、恐ろしい。
「ん……っ」
舌が入り込みそうになる。……ところで、慌てて彼から離れた。
「ごめん、急に」
もしかしたら怒らせたか、と思ったけど、
「謝ることないでしょう。……付き合ってるんだから」
未早は自分の唇を舌なめずりして笑った。
エロい。それが素直な感想だった。
「じゃ、続きは部活終わってからにしましょう! そろそろ戻らないと怪しまれますよ」
「お、おう。練習しなきゃな」
彼の掛け声に後押しされて踵を返す。未早は俺以上に切り替えのオンオフが早い。見習うと同時に、ちょっと悔しい気になるのは……恋人というより、歳上としての意地のせいかもしれない。
そしてその放課後練習も終わり、部員がバラバラに帰って行く中……。
俺達は誰もいなくなった倉庫室で、またさっきの“続き”をした。
「は……っ」
教室の鍵を職員室に返さなきゃいけないけど……あと少しだけ。その、あと少しがどんどん伸びていく。未早を壁に押し当て、彼の唇を味わった。
付き合ってまだ数日だっていうのに、我ながらしょうもない発情っぷりだ。
健全な小説ならこんな早くにチョメチョメしないよなぁ……とか考えながら。こんな時にまで創作のことを考えてしまう自分に、ちょっと腹が立った。
「先輩、キスもいいけど、もっと舌も使いましょうよ」
「え! もしかして下手だった?」
「や、そうじゃないけど、先輩すごい吸ってくるから唇痛くて」
未早は苦笑しながら頬にキスしてくる。
「先輩、表情も仕草も固すぎですよ。そりゃ俺も緊張してますけど、いつもみたいにしてくださいよ」
「いつもみたいにって、どんな? 俺いつもどんな感じだっけ? 全然思い出せん」
「落ち着いて。先輩の好きなようにしてください。好き勝手していいんですよ」
彼はそう言って両手を上げたけど、なにか違う気がした。好き勝手という言葉のせいかもしれない。
俺だけ楽しみたいわけじゃない。
本当は二人で気持ちよくなりたいのに……経験がないせいで、どうも上手くいかない。
「……何かごめんな、未早。あんまエロい気分にさせてやれなくて」
「えぇっ? 何言ってんです。俺、かなりその気になってますけど」
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる