48 / 89
先輩、お付き合いします。
#7
しおりを挟む三年の俺は、知ってる一年生は限られる。部活か生徒会……その中から腐男子かどうか絞って見極めるのは至難の技だろう。そもそも一人もいないかもしれない。
頭を悩ませながら楽器を用意していると、隣に誰かが並んだ。
「紅本先輩、お疲れさまです!」
「あ、あぁ。おつかれ……」
未早だ。すっかりニコニコしてることが増えた。素直に可愛いけど、真顔に慣れてしまった俺にとってはやや薄気味悪いというのが本音。
ん? ていうか……
そうだ、一年なら未早がいるじゃないか!
BLは興味ないって言ってたけど、実際に読んでみたら価値観が変わるかもしれない。
「未早! ちょっと話があるんだ。こっち来てくれ」
人のいない第二音楽室へ手招きして、未早を引き込みドアを閉めた。そして早速本題に入る。
「BL研究会に入らないか?」
「入りません」
即答だった。分かってたけど……未早は、なにか閃いたように手を叩いた。
「あ。俺のクラスにBLが好きだっていう奴がいますよ。紹介しましょうか」
「え、マジで?」
「はい。先輩が書いた話に出てる奴ですけど」
「……え?」
────翌日の昼休み、俺は未早に呼ばれて別棟の教室へ向かった。そこにいたのは、確かに俺が書いた話にも出ていた少年で。
「どうも、遠田リョウです! ……っていうか紹介する必要ないっスね。俺と紅本先輩、同じ生徒会だし」
「あ……うん」
これは想定外。同じく生徒会で知ってた後輩の彼を登場人物にしたんだけど、まさか未早と同じクラスだったとは。テキトーに書いたものが実現するなんて、これはまさか神の導き。モノホンのディスティニーだろうか。
「え、リョウはそういうの平気なの?」
「平気っつうか大好きですよー! 冷やかしに読んだらどハマりしちゃって! 未早からBL研究会があるって聴いて、めちゃくちゃ入りたいって思ったんです! 是非入れてください!」
ということで、無事に一年生を一名入会させることができた。
「研究室は定期的に場所変えるから、情報共有してるんだ。活動日は決まってなくて、好きな時に来て、好きなことをしてる。本とかを見てるばっかじゃつまんないから、プログラミングできる奴はゲーム作ったりしてるよ」
真面目に活動内容を説明してると、未早がすかさず食いつく。
「あ、それ俺もやりたいです。バットエンドの分岐作ったり、不倫相手が包丁持って追いかけてくるゲームとか作りたい」
「怖いからやめろ」
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?


好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」


【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる