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先輩、お付き合いします。
#7
しおりを挟む三年の俺は、知ってる一年生は限られる。部活か生徒会……その中から腐男子かどうか絞って見極めるのは至難の技だろう。そもそも一人もいないかもしれない。
頭を悩ませながら楽器を用意していると、隣に誰かが並んだ。
「紅本先輩、お疲れさまです!」
「あ、あぁ。おつかれ……」
未早だ。すっかりニコニコしてることが増えた。素直に可愛いけど、真顔に慣れてしまった俺にとってはやや薄気味悪いというのが本音。
ん? ていうか……
そうだ、一年なら未早がいるじゃないか!
BLは興味ないって言ってたけど、実際に読んでみたら価値観が変わるかもしれない。
「未早! ちょっと話があるんだ。こっち来てくれ」
人のいない第二音楽室へ手招きして、未早を引き込みドアを閉めた。そして早速本題に入る。
「BL研究会に入らないか?」
「入りません」
即答だった。分かってたけど……未早は、なにか閃いたように手を叩いた。
「あ。俺のクラスにBLが好きだっていう奴がいますよ。紹介しましょうか」
「え、マジで?」
「はい。先輩が書いた話に出てる奴ですけど」
「……え?」
────翌日の昼休み、俺は未早に呼ばれて別棟の教室へ向かった。そこにいたのは、確かに俺が書いた話にも出ていた少年で。
「どうも、遠田リョウです! ……っていうか紹介する必要ないっスね。俺と紅本先輩、同じ生徒会だし」
「あ……うん」
これは想定外。同じく生徒会で知ってた後輩の彼を登場人物にしたんだけど、まさか未早と同じクラスだったとは。テキトーに書いたものが実現するなんて、これはまさか神の導き。モノホンのディスティニーだろうか。
「え、リョウはそういうの平気なの?」
「平気っつうか大好きですよー! 冷やかしに読んだらどハマりしちゃって! 未早からBL研究会があるって聴いて、めちゃくちゃ入りたいって思ったんです! 是非入れてください!」
ということで、無事に一年生を一名入会させることができた。
「研究室は定期的に場所変えるから、情報共有してるんだ。活動日は決まってなくて、好きな時に来て、好きなことをしてる。本とかを見てるばっかじゃつまんないから、プログラミングできる奴はゲーム作ったりしてるよ」
真面目に活動内容を説明してると、未早がすかさず食いつく。
「あ、それ俺もやりたいです。バットエンドの分岐作ったり、不倫相手が包丁持って追いかけてくるゲームとか作りたい」
「怖いからやめろ」
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