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先輩、必死です。

#2

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「オラ、じゃあ偉大な先輩様が見てやるからさっさと吹けよ。どんだけダメダメか指摘してやるから」
「えー、お手本見せてくださいよ」

俺と未早は同じトランペットパートなため、否が応でも関わらざるを得ない関係だ。おまけに今年の一年はこいつだけ。未経験の一年を持ってこようにも、去年急激に退部して激減した木管パートの方にとられてしまった。

同パートには二年生が二人いるが、二人共かなり大人しく、新入りの未早のことが苦手らしい。歳上なんだからしっかりせい。つーかくそ、俺だって苦手だよ。ワックス掛けしたばっかの床で滑って転んで記憶喪失になればいいのに。
「Dの三小節目……お前はセカンドだから半拍してから中音のF#。何が難しいんだよ。まさか中学でもそんな泣き言言ってたのか?」
さっきの仕返しに最大限皮肉を込めて言うと、未早は楽器を構えてそこから演奏した。何も問題はない。と思うけど。
「これで合ってますか」
「あぁ……合ってるよ」
つーか教えてもらうまでもなく絶対できただろ。転がすぞ。

こいつは俺と同じく小学校から経験がある。中学も毎年コンクールで金賞をとる強豪だったし、ある程度のグレードの曲は吹けるはずだ。そう、ある程度。
あ───ストレスでハゲそう。誕生日まで後三ヵ月、まだ十七歳なのに。
一方、ひとりで自主練を始めたこのガキは早生まれなので十六歳。後ちょっと、俺達は一歳差でしかないのだ。それも何だか歯がゆい。

俺は研究会を除いて腐男子であることを学校で隠して生活してる。もし知られたら「わあ、変態副会長だ!」「腐れ副部長、ここ教えてください!」と言われる危険がある。
それだけは避けたい。教師に知られるのも絶対嫌だ。
それなのに、何故この生意気なガキに腐男子であることを知られてしまったのか?
それは完全に俺のミスで、奴の目の前で鞄に入れてたBLマンガを落としてしまったのだ。それ以降は「えっ、紅本先輩ってソッチ系なんですか? えー……ない……」とドン引きの眼差しを受け、現在に至る。

未早はBLは理解不能らしい。
いつもバカにするし、ことごとく俺をBLから切り離そうとする。
俺のことが嫌なら避けそうなもんだけど、ちょくちょくちょっかいを出してくるあたり、俺のこともバカにしてるんだろう。先輩の威厳なんて、あの日から崩れ落ちたも同然だった。





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