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先輩、お久しぶりです。
#8
しおりを挟む「ごめんな未早、隠さないで全部話すよ。俺は中学のときからBLにハマってる腐男子だった。それをずっと胸の奥底に仕舞って、普通を装っていただけで、俺は本当は穢れてるんだよ」
紅本先輩が穢れてる。
何だそれ。何かちょっとゾクゾクするぞ。
厨二心をくすぐるワードに俺のセンサーは過剰反応した。しかしそんなことは露知らず、先輩は少し気まずそうに胸の内を明かしてくれた。
「でもこの学校にはBLが好きな奴らがたくさんいて、それを隠そうともしてなかった。気付いたら、そいつらとこんな愛好会を作っちまったんだ。楽器は止めた。音楽じゃないけど、腐ってるけど、間違いなく俺は奏でているんだ。BLという名の複雑なハーモニーを……」
「紅本先輩……」
最後の言い回しはさすがにちょっと引いた。気持ち悪いけれど、あんなに好きだった音楽をやめて腐海に走った先輩に何を言ったところで無駄だろう。
なら俺も、先輩と同じ道を行くしかない。
「先輩……俺は先輩についていきます! その為にこの学校に入ったんですから」
「んー……? 本音を言うと、あんまりお前にはハマってほしくないんだけど。お前はかっこいいし、普通に女の子と幸せになれると思うし」
「いいえ! BLがいいです! 先輩が好きなBL、BLを好きになりたいです!!」
「だから声でけーよ! あとBLを連呼すんな!」
再び研究室の中に引き込まれ、紅本先輩は深いため息をついた。
「ほんとに後悔しない? いや、まぁ嫌になったらすぐ退会してくれていいんだけど」
「死んでもしません。先輩がいるなら例え火の中水の中、地獄までついていきます。どこだって住めば都ですから」
「その意味合いだとここが地獄になるけどな……わかった、じゃあ入会案内を」
「ちょっと待った!」
先輩は近くの棚へ向かったけど、それを阻むように明野先輩が現れた。
「紅本。その子、本当に腐ってるの? 廊下の話、少しだけ聞こえちゃったんだけど」
明野先輩の顔はさっきとは違って険しかった。紅本先輩は対照的に落ち着いている。
「未早は腐ってないよ。でも入会してから好きになるんでもいいだろ。つーか元はと言えばお前が話も聞かずに連れてきたのが悪いんだぞ」
「確かに、それは俺も反省してるよ。でも腐男子のことを何一つ理解してないボクちゃんを軽々しく入れていいわけ? この活動が全校生徒に知られたら、俺達は明日から変態のレッテルを貼られてひなたを歩けないよ?」
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