それで、また会ってる

見えない距離

８

時間は二十二時を回っていた。

｢ここでもないか……｣

闇に包まれた空を見上げる二人。
俊紀は戸惑いながら、夕都が通う学校の敷地を出た。その隣で尚太が項垂れる。
｢先輩と兄貴、どこに拉致られたんだろう｣
情報は更新されたが、状況は一変していなかった。
尚太が知り合いに電話を掛けて回った所、昨日夕都と圭司が二人の少年といた所を見たという者がいたのだ。
しかしその後どこへ向かったかまでは分からない。
人探しがここまで大変とは思わなかった。疲労もあり、同時にため息が出る。
｢尚太君、もう帰りな。さすがにもう帰らないと親御さんが心配するだろ? お兄さんの事も、もしかしたら警察に届けてるかもしれないから……｣
だが、まだ言い終わらないうちに彼は叫んだ。
｢帰れません! 二人になにかあったら、俺は……｣
そこまで言いかけて、尚太はやはり疲れたのか近くのフェンスにもたれかかった。
俊紀が駆け寄ろうとした時、尚太の足元に雫が零れた。

｢どうしよう……二人に何かあったら……｣

彼はその場で力なく座り込み、……涙を流していた。
｢全部、俺のせいなんです。俊紀さんまで巻き込んじゃって、本当にごめんなさい｣
尚太は涙が止まらず、声も震えている。やっとのことで絞り出していると分かり、彼の正面に回って地面に膝をついた。
｢俺は今の状況、全然理解できてないし……君らの昔の話も知らない。それでも力になりたいんだ｣
彼の頭に手を置いてから、ゆっくり引き起こした。
｢大丈夫だよ。君がそんな泣いてくれんなら、夕都もお兄さんも、そんなに不幸じゃないんじゃない? けっこう幸せモンだと思うよ｣
｢……っ｣
尚太は乱暴に涙を袖で拭い、頷いた。
｢早く助けに行かないと……ですよね」
｢あぁ。きっと待ってるだろうから、迎えに行ってやんないと｣
それを聞いた尚太は、また泣きながら笑った。