それで、また会ってる

カクシゴト

１５

｢俊紀さん｣
髪から滴り落ちる雫が、彼の頬をぬらした。

｢いつか必ず話すから。……全部、本当のことを｣

夕都は目を伏せて呟く。
｢信じていいのか?｣
｢必ずって言ってるだろ?｣
夕都は不貞腐れて口を尖らした。
｢じゃ、一応信じとこうか｣
｢……あっ!｣
俊紀が動いたことによって、夕都は中を抉られる様な気持ちになる。
それでも悦びに震えていた。愛する人と繋がっていると思えば。



────翌日。校内に授業の終了を知らせるチャイムが流れた。

｢おい、梁瀬」

俊紀の家に帰ろうとした夕都の前にまたあの三人組が現れた。そして先日のゴミ箱事件について話した。
｢お前も今日、生徒会室に行くんだろ?｣ 
｢いや、俺は呼ばれてないけど?｣
｢な、なんでだよ!｣
｢既に説教された。挙げ句の果てに池に突き落とされたし｣
そう言うと、三人は僅かに青ざめていた。
その様子を見たら、何か猛烈に盛りたくなった。
｢後は写真撮られたり、石を投げつけてきたりして、高校生のやる事とは思えなかったよ。俺より歳上のくせに、何であんなに精神面ガキなのか……｣
｢誰がガキだって?｣
真後ろで低い声が聞こえ、反射的に振り向いた。心の中なら十センチは飛び上がった。
｢あ、生徒会長｣
教室がざわめいた。生徒会長が数人の取り巻きを連れ、一年のクラスに現れたからだ。

目立ちたがりだな、ほんと!
空気と同化してこの場から去ろうと試みるが、それを一緒に来ていた生徒会の面々に止められる。
｢梁瀬、お前は俺と一緒に来い｣
前にいた三人も他のメンバーに囲まれていた。が、そこでクラスの女子達が一斉に抗議した。
｢あの! 梁瀬くんが何したっていうんですか?｣
｢梁瀬くん、先輩になにかしたの?｣
｢何にもしてないよ! それどころか以前池に突き落とされて……それで風邪ひいて、最近ずっと学校休んでたんだ……｣
池に落とされたのは昨日の事で、これは完全に罪をなすりつけていた。
｢テメェ……!｣ 
圭司は激昂して、夕都に掴みかかろうとしたが、それはまた女子達の飛ばす野次に阻まれた。
｢えぇ、暴力!?｣ 
｢うっそ、信じられない｣
｢うっ……｣
圭司はギリギリで踏みとどまる。反対に夕都は優位な立場にいた。
女子を味方につければ怖いモンなしだと思う夕都だった。