それで、また会ってる

カクシゴト

１３

｢あああぁぁっ!! ムカつく!!｣

ドスのきいた声と共に帰って来た夕都に、驚いて二度見した。
｢夕都? ちょ、どうしたんだ?｣
恐々玄関まで迎えに行くと、怒りの形相だった夕都は一気に笑顔になった。
｢あ、俊紀さん帰ってたんだ。今日何食べる? 何でも作るよ｣
｢え? あ、ありがとう……って……｣
あまりに様子が普段と変わらないので、一瞬幻聴かと思った。が、間近で彼を見て更に仰天する。
｢何でお前ずぶぬれなんだ!?｣
夕都が頭から爪先まで雫を滴らせているのでタオルを持って駆け寄った。
｢……そこの公園の池にサイフ落としちゃってさ。中に入って探してた｣
｢そこの公園の池って、足が浸かる程度のだろ? 何で頭までびしょぬれなんだよ｣
｢え? そうだっけ?｣
｢そうだよ、大丈夫か? ……頭｣
ついつい思ったことを口に出すと、夕都は瞬時に無表情になった。俊紀は口元を手で覆う。
地雷を踏んだ気がする。ここは話を変えて危険を回避しよう。
｢ええと、それで、サイフは無事か? お札は濡れちゃったんじゃないか?｣
笑顔をつくって尋ねる。夕都は数秒フリーズした後に全力で怒鳴った。
｢無事だよ!! ご心配かけてすいませんね!!｣
夕都は乱暴に靴を脱ぎ、ブレザーを脱いだ。
｢もう寝る! おやすみ!｣
｢は!?｣
自分の部屋に直行する夕都に驚き、彼の腕を掴んで止めた。
｢このまま寝たら風邪ひくだろ、風呂入れって!｣
｢嫌だ｣
｢駄々っ子かよ!いいから入れ!｣
｢大丈夫だよ! 後で入る!｣
夕都はあくまで突っぱねる。廊下でお互い一歩も引き下がらず、にらみ合った。このまましばらく睨み合いそうな空気だったが、先に折れたのは俊紀だ。夕都の腕を掴む力を緩め、小さなため息をつく。

｢俺ももうすぐ入ろうと思ってたから。一緒に入れば楽だろ?｣
｢え｣

それは悪くない、と夕都は内心思った。しかしさっきの妙な怒り、意地が邪魔をする。

｢……ふん。なら俊紀さんだけ入ればいいじゃん。俺なんかと入るよりリラックスできるだろ｣
｢はぁ? 一体全体、何をそんな怒ってんだよ。……俺が何かしたか?｣