Ball

七賀ごふん

文字の大きさ
上 下
4 / 12
【17】

#4

しおりを挟む



同情も不思議だ。悔しいのにどこか心地いいと感じる、俺は腐ってる。

男の一人暮らしにしては観葉植物がたくさん置いてあって、温かみがある部屋だった。
きっと会社でも人望あるんだろう。たかが隣の部屋の高校生を気にかけて、家にまで上げてくれるんだから。

蓮見さんは本当に優しい。
さっき、もし……本当に親父に叩き出されていたとしたら、彼の優しさで頭がおかしくなってしまうところだった。

「蓮実さんって付き合ってるひといないの?」
「え? い、いないよ」
「どうして? そんなにかっこいいのに」

お世辞ではなく、蓮実は背も高く顔立ちも整っている。三十代半ばなのだろうが、実年齢よりずっと若く見える。
「かっこいいなんて言ってくれるのは咲人君だけだよ」
彼は恥ずかしそうに微笑み、お茶の準備を始めた。
これまで生きていた世界にはいないタイプだ。咲人は自分勝手に振る舞い、威張り散らす大人しか知らなかった。軽く困惑してるし、警戒もしている。彼のことなんて何も知らないけど、これが彼の本当の姿なら嫉妬すら覚えてしまう。

脅すネタに使えると思っていたけど、脅したい理由が変わってきた。
彼を手に入れたい。優しい世界しか知らなそうな彼に、汚い自分を見てほしい。
「咲人君……わっ!」
彼がお湯を沸かして背を向けてるところに、後ろから抱き着いた。

「危ないよ。ポットが倒れたら大変……」
「ねぇ蓮実さん、彼女がいないなら俺と付き合ってよ。俺、もっと蓮実さんのことが知りたい」

胸に回していた手を下へ移動する。見た目は華奢だけど、触ってみると男の身体だ、と息を飲んだ。
このスーツを脱がせたら……どれだけ満足できるだろう。
ベルトに手をかける。この流れだけは得意で、戸惑う彼を制しあっという間にチャックを下ろした。もたもたしていたら怒鳴る奴もいるから必然的に身についたことだ。
「じっとしてて」
ズボンの中に手を入れ、下着をまさぐる。柔らかい膨らみは、刺激するとどんどん固くなった。

「咲人く……やめなさい……!」

彼がようやく本気で抵抗し始めたので、すかさずスマホの画面を翳した。

そこには彼と、もう一人の男がキスをしてる姿が映し出されている。

「なん……で、それ……っ」
「あはっ。結婚しない理由はこれかな。蓮実さん、男が好きなんでしょ?」

振り返った彼の、絶望に満ちた顔。可哀想だけど、可愛い。加虐心をくすぐられる。自分の中にこんな酷い一面があるなんて知らなかった。
「蓮実さん、これバラされたくなかったら俺の言うこと聞いてよ。安心して、別にお金なんていらないから」
だから、えっと……何が欲しいんだっけ。
蓮実さん、もそうだけど。それよりもっと深い“なにか”が欲しい。

頭が回らないし言葉が出てこない。めんどくさくなって彼の口を塞いだ。シャツを捲り上げると、白い肌と突起が顔を覗かせた。意外と筋肉質だ。顔と身体のギャップに惹かれて、また胸が熱くなる。
ズボンと下着を引き下ろし、彼の高ぶった性器を口に含む。まるでおっぱいに食いつく赤ん坊のようだ。
買ってきてもらったジュースがぬるくなるまで、それは長く長く続いた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

Label-less

秋野小窓
BL
『お兄ちゃん』でも『リーダー』でもない。ただ、まっさらな自分を見て、会いたいと言ってくれる人がいる。 事情があって実家に帰った主人公のたまき。ある日、散歩した先で森の中の洋館を見つける。そこで出会った男・鹿賀(かが)と、お茶を通じて交流するようになる。温かいお茶とお菓子に彩られた優しい時間は、たまきの心を癒していく。 ※本編全年齢向けで執筆中です。→完結しました。 ※関係の進展が非常にゆっくりです。大人なイチャイチャが読みたい方は、続編『Label-less 2』をお楽しみください。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

【完結】はじめてできた友だちは、好きな人でした

月音真琴
BL
完結しました。ピュアな高校の同級生同士。友達以上恋人未満な関係。 人付き合いが苦手な仲谷皇祐(なかたにこうすけ)は、誰かといるよりも一人でいる方が楽だった。 高校に入学後もそれは同じだったが、購買部の限定パンを巡ってクラスメートの一人小此木敦貴(おこのぎあつき)に懐かれてしまう。 一人でいたいのに、強引に誘われて敦貴と共に過ごすようになっていく。 はじめての友だちと過ごす日々は楽しいもので、だけどつまらない自分が敦貴を独占していることに申し訳なくて。それでも敦貴は友だちとして一緒にいてくれることを選んでくれた。 次第に皇祐は嬉しい気持ちとは別に違う感情が生まれていき…。 ――僕は、敦貴が好きなんだ。 自分の気持ちに気づいた皇祐が選んだ道とは。 エブリスタ様にも掲載しています(完結済) エブリスタ様にてトレンドランキング BLジャンル・日間90位 ◆「第12回BL小説大賞」に参加しています。 応援していただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。 ピュアな二人が大人になってからのお話も連載はじめました。よかったらこちらもどうぞ。 『迷いと絆~友情か恋愛か、親友との揺れる恋物語~』 https://www.alphapolis.co.jp/novel/416124410/923802748

目標、それは

mahiro
BL
画面には、大好きな彼が今日も輝いている。それだけで幸せな気分になれるものだ。 今日も今日とて彼が歌っている曲を聴きながら大学に向かえば、友人から彼のライブがあるから一緒に行かないかと誘われ……?

しのぶ想いは夏夜にさざめく

叶けい
BL
看護師の片倉瑠維は、心臓外科医の世良貴之に片想い中。 玉砕覚悟で告白し、見事に振られてから一ヶ月。約束したつもりだった花火大会をすっぽかされ内心へこんでいた瑠維の元に、驚きの噂が聞こえてきた。 世良先生が、アメリカ研修に行ってしまう? その後、ショックを受ける瑠維にまで異動の辞令が。 『……一回しか言わないから、よく聞けよ』 世良先生の哀しい過去と、瑠維への本当の想い。

僕は君になりたかった

15
BL
僕はあの人が好きな君に、なりたかった。 一応完結済み。 根暗な子がもだもだしてるだけです。

幸せな復讐

志生帆 海
BL
お前の結婚式前夜……僕たちは最後の儀式のように身体を重ねた。 明日から別々の人生を歩むことを受け入れたのは、僕の方だった。 だから最後に一生忘れない程、激しく深く抱き合ったことを後悔していない。 でも僕はこれからどうやって生きて行けばいい。 君に捨てられた僕の恋の行方は…… それぞれの新生活を意識して書きました。 よろしくお願いします。 fujossyさんの新生活コンテスト応募作品の転載です。

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

処理中です...