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七賀ごふん

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【17】

#2

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日付けが変わった深夜一時。財布に入った二万円を確かめて家路へ向かった。幸い本番には至らなかったけど、今日の相手は特に気持ち悪かったからもう一回風呂に入りたい。どうせ親父は寝たら起きないし、そこまで気にしなくても大丈夫だろう。
 
やっぱり俺はゲイなのかな。
女性の裸も見たら興奮するんだけど。男相手も意外と抵抗がないから要求を聞き、その代価をもらっている。愚痴を聞いてお茶するだけの内容から、生々しい内容まで様々だ。

“いけない”ことをして手に入れた金は、将来家を出る為の軍資金だ。邪魔者扱いされる場所ではなく、誰も自分に関わらない場所へ行く為の。

でも補導されて家や学校に知られたら、家を出る前に親父に殺されそう。高校生というステータスが随分役に立ってる気がするけど、これからは私服で行った方が良いかもしれない。

「ん」

いつも通り見慣れた公園を突っ切ると、自分が住んでるマンションが見えてきた。マンションの裏手には小さな駐輪場があるが、こんな時間に人影がある。背が高い……恐らく、男が二人。
何となく歩くスピードを落とし、足音を殺した。
一歩、二歩、三歩。高い柵を隔てただけで、横を通り過ぎる自分に彼らは気付かない。
話し込んでいる。そう思って顔を背けようとした寸前、二人の距離が急速に縮まった。

キスだ。

わ~……。

見てしまったら、今度は中々動けない。地面に縫い付けられたようにその場に佇み、彼らを眺めた。
自分だって何度もあるけど、他人のディープキスを目の当たりにするのは初めてだ。好奇心はもちろん、何故か胸の辺りが熱くなった。

けど、あくまで知らない人間。気付かれる前に立ち去ろうとしたが、ひとりの男に見覚えがあることが分かった。
これは良いかもしれない。ポケットからスマホを取り出し、無音カメラを起動した。彼らに気付かれないよう慎重に。顔が映るように焦点を合わせてシャッターを切った。




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