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七賀ごふん

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【17】

#1

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ただ家にいるだけで殴られたから、外で過ごすようになるのは当然。外で過ごすとなると、金が必要になるのは当然。

何故か世の中には必ず愛される奴と嫌われる奴が存在して、やたらとその違いを説明したがる奴がいる。
そいつは人の根っこを掘り起こして、ぐちゃぐちゃに踏み荒らして去っていく。「育った環境」とやらを根掘り葉掘り聞いて、何もかも分かったような顔をする。メモを挟んだファイルは、棚に仕舞ったら一生取り出さないくせに。

大人はクズだ。アル中の父親も、気弱そうな教師も、優しい言葉でご機嫌とりする相談所の連中も。
大きくなったら自分の力で生きていく。その考えの通り、高校生にもなると全く家に帰らず、外で遊び歩くようになった。

咲人さきと、奢ったげるよ。この前通りすがりのおじさんとご飯食べるの付き合ったらそんだけで一万円もらっちゃった」

放課後、同じクラスの女子が一万円をひらひら翳しながらやってきた。しかしさすがに呆れ、高校二年生の咲人はため息を零した。
「よく無事だったな。お前ってほんと危機感なさすぎ」
「何よぅ。咲人だってよく知らない人と遊んでるじゃん」
「女と男はちげーの。あんま夜遊びすんなよ」
と、とりあえず異性に対しては注意しておく。

この学校は真面目な人種が多いが、奔放な自分と彼女は例外と言える。教師は皆さっさと卒業してほしいと思ってるに違いない。
俺もだ。学校なんか今すぐでも辞めて、どこか遠いところに行きたい。
それができないのは弱いからだ。幼い時から酔った父に暴力を振るわれてきたけど、いつもじゃないから我慢している。酒さえ飲んでなければ、俺にも弟にも普通に接してくるから。

母さんが生きていたら違ったのかな、と思ったりけど、今となってはどうでもいい。
夜を避けて生きてる。夜に豹変する父から逃げるように、学校が終わったら目的もなく街をさまよった。幸い父は弟には暴力を振るわない。おかげで何の心配もなく、最近は小遣い稼ぎができる。 

二十一時を回ったところで彼女と別れた。
凍えそうなほど風が冷たいのに、駅の周りは賑やかなままだ。大嫌いな大人が笑顔で行き交う。
俺はあえて制服のままうろついて、声を掛けられるのを待つ。
声を掛けてくる男は大体息が荒くて気持ち悪いけど、何度もやってると慣れるものだ。金の為ならまぁいいか、という気になってしまう。

殴られるよりは撫でられる方がいい。だから耐えられるんだ。




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