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撮影
#10
しおりを挟む「うーん……」
翌日。安心できる我が家に安着した後も、秋は洗面台の鏡の前で悩んでいた。
「先生、早く下着脱いでよ。あ、もちろん洗濯してから返してね」
「あぁ。お前はまだ俺の下着を履いてるのか?」
「いやもう脱ぐけどさ。微妙に大きいから落ちそうで心配だった……ってちょっと!」
「どれどれ。あぁ、ほんとだな」
ベルトを外し、矢代は手早く秋のズボンを下ろした。
「もう、何すんだよ!」
「何怒ってんだ。どうせ今脱ぐんだろ?」
「いやそうだけど……心の準備ってもんが」
下着を履き替えるのに心の準備など必要ない。内心セルフツッコミをしたけど、先生の視線に晒されていることが問題なのだ。
実のところ、帰路についてる時は気が気じゃなかった。
「……俺の下着を履いてること自体は、何とも思わなかった?」
耳元で囁かれ、肩がビクっと揺れる。
先生はわざとらしく下着に人差し指を掛け、引っ張った。
「……別に」
「そうか。俺はお前の下着を履いてるあいだ興奮したけどな。なんせある意味間接……」
「あーっ! もういいから! さっさと着替えて!」
彼が何を言おうとしてるか分かってしまった為、慌てて下着を履き替え、洗面所から出た。
もちろん自分だって意識していた。先生が着用していた下着を身に付けてる、なんて。……でも生々しいから極力考えないようにしていたのに。
大人だけど、頼り甲斐があるけど。救いようがないレベルのど変態だ。
こんな恋人と暮らして未だに理性を保ってる自分は偉いというか、凄いと思う。
「先生、早く」
「はいはい。何でそんな急いでんだ?」
「だって、早くお土産広げたいから」
仕切りを挟んで答えると、子どもっぽい笑い声が聞こえた。
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