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撮影
#4
しおりを挟む真っ直ぐ見返して答える。先生は初めこそきょとんとしていたが、すぐに意味を理解し、苦笑した。
「お前、実はどっかで酒飲んでんじゃないか?」
「飲んでないよ。本当に綺麗だから」
隣に並び、握りはしないものの彼の手に触れる。
「ぶっちゃけ初めて会った時から……先生のこと、綺麗だと思ってたんだよね。あの頃は色々あって認めたくなかっただけで、何をしても何処にいても絵になるって思ってた」
息継ぎもせず本心を告げると、彼は露骨に驚いていた。その表情はとても新鮮なので、ますますずっと見ていたい欲求に駆られた。
こんな些細な発見で心が躍る。これはやはり、隣に並ぶ者が得られる特権だ。
秋はつま先立ちになりながら目を輝かせる。
「当然、皆先生のこと狙ってただろうけど……そんな先生を今俺が独り占めできてるのは、結構気分良い」
悪戯っぽく笑うと、何故かデコピンされた。
「何だよっ。褒めてんだろ!」
「…………外で言わなくていい」
矢代は背中を向け、顔を見せてくれなくなった。
もしかして機嫌が悪くなったんだろうか。秋が不安に感じながら前に回ると、矢代はスマホをいじっていた。
「……どしたの? 仕事の連絡?」
「宿をとった。今日は泊まってくぞ」
「い!? 急過ぎない!?」
「予定変更は旅にはつきものだ」
決め顔で言うことじゃないけど、先生は澄ましながらスマホを仕舞って先へ行ってしまった。
やっぱ俺も結構振り回されてるよな……!
不満を言いつつ、慌ててその後を追う。彼の歩いた道に落ちるもみじを避けつつ、今は見慣れた背中を目指して走った。
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