シャッターを切るときは

七賀ごふん

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明察

3.5

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「すごい怖かったんだ」

カーテンの隙間から、窓の外を眺める。

「先生に嫌われるかもしれないって……」

いつかと同じ、真っ赤な校舎。少年の頼りない横顔に思いを馳せ、矢代は口を噤んだ。

……こんなことを言わせてしまうなんて。自分は本当に酷い大人で、酷い恋人だ。
彼は元々強かった。それをここまで弱くしたのは自分。だから守らないといけなかった。

彼が憎むべきは俺だ。
大事なところでいつも惜しい間違いをするんだから……どうあっても、この少年を愛してしまう。

もう戻れない。

この先何があろうと、俺は自分が持てる全てを彼に捧げるだろう。
彼に抱くのは、好きとか嫌いとか、そんな分かりやすい感情じゃないんだ。

「……いつかお前が俺を心底憎んで、俺を殺そうとしても。俺は死ぬ瞬間までお前を離さないんだろうな」

自分達を繋ぐ鎖は黒く、重く、硬い。
罪と罰で塗り固められた関係。だからこそ、誰よりも強い。

愛情と執着心は隣り合わせだ。いつだって、血塗れになりながら抱き締めている。

彼に心酔していたのは、最初から俺の方。
ベッドの前に屈んだまま見上げると、彼は泣きそうな顔で笑った。




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